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レンズ概要2/3 日本のレンズ編

一回目の投稿が長くなったので、分割して、今回は日本のレンズについてまとめてみます!いや〜、レンズそれぞれに個性があって、最高ですね笑
2021/5/3追記 ミノルタ等の日本レンズ4本のレビューを別記事で追加しました。フレアがとても綺麗なレンズもありますので、是非ご覧ください!


2 Nikon (7本)

 言わずと知れた世界で最も有名なカメラ・メーカーの一つ、ニコン。
 正直特徴らしい特徴は思い浮かばず、よく言われるのは、オールドレンズであっても、生真面目で間違いのない描写をするということでしょうか。
 ただ、一眼レフカメラ初期のレンズ(1960代の"Auto"が名前に付くレンズ)は、フレア・ゴーストが結構出て、ボケも特徴的だと言われています(設計的に結構無理をしている部分があるらしいです)。

(1)NIKKOR-S Auto 5.8cm F1.4(オールドレンズ)

 1960年に販売された、ニコンの一眼レフの最初の大口径レンズ。
 コーティングの影響か、かなり青く発色されます。ゴースト・フレアもそれに影響され、青〜紫系の円形の光が上方から降り注ぎます。ゴースト・フレアは暖色系が多いので、色だけでも希少価値が高く、結構持ち出しがち。
 写りは、時代相応で、かなりレトロで滲みが多く、ボケも個性的です。
 良いレンズですが、個体数も少ないそうなので、いつかはスペアとして状態の良いものをもう一個確保したいくらい好きです笑 
 でも、ニッコール千夜一夜物語だと、専門家的には発展途上のレンズということで、あんまり評価高くなさそうですね汗

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(2)NIKKOR-S Auto 50mm F1.4(オールドレンズ)

 ニコンの技術者さんが上記2(1)に満足できず、わずか2年のうちに改良して、1962年に発売開始したモデル。マイナーチェンジを繰り返し、かなりのロングセラーになったそうです。
 ニッコール千夜一夜物語を読んで、上記の2(1)からこのレンズや2(3)に至る過程を是非とも体験したくて、購入してしまいました笑

 フレア・ゴーストは、角度を合わせれば、盛大に出てくれます。形は、下方から立ち上がってくる虹と上方からシャワーのように降り注ぐ光の混合型ですね。なお、冒頭の写真は冬の朝に撮影しましたが、真夏の昼間などの時間帯や季節によってはそれほど出ないこともあります。
 また、描写の傾向は、順光でもフレアがかった描写かつにじみを伴い、少しドリーミーな感じでしょうか。色のりも少し薄く、レトロな描写をしたい方にはぴったりです。
 ちなみに、後年度発売したマルチコートモデルの改良版Nikkor-S・C Autoでは、あまり盛大なフレアは出ず、描写も少しかっちり目なので、ご注意ください。
 詳細はあおいとりさんのサイトもご覧ください〜。


2022/1/3追記 めっちゃすごいゴーストはでませんが、開放f1.4の描写はフレアがかっていつつ、また、ピントピークも鋭くないので、夢見心地な感じがしますね。

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(3)NIKKOR-S Auto 55mm F1.2(オールドレンズ)

 写りについては、f1.2だとかなり滲んで、レトロな感じになります。発色も穏やかなので、着物等の和のアイテムを使ったポトレにぴったりです。
 ただ、フレア・ゴーストについては、めっちゃ凄いのは出ませんが、それなりには出ます。例えば、以下のような感じで、夕方に太陽に向けたらやっとわかりやすい光が出るくらいで、ニコンのコーティングの優秀さに舌を巻きますが、ちょっと残念な気もします汗
 また、もちろんf1.2なのでしっかりとボケてくれますフリンジは修正不可能なものが出る印象はありません
 ニコンの技術者の皆さんの頑張りについては、ニッコール千夜一夜物語が熱いので、是非ご一読を!

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(4)NIKKOR-H Auto 50mm F2(オールドレンズ)

 フレア・ゴーストは、同時期に作られた2(1)と同系統の寒色系ですが、こちらは放射性に降り注ぐような虹色の光が加わるのが特徴です。
色のりは良好で、ピントも鋭さはありますが、あくまで時代なりなので、オールドレンズ的な面白さは残っていると思います。
 値段も手頃で、ゴーストも面白く、fマウントで汎用性もあるので、持っておいて損は無いレンズですね。
 ちなみに、この一つ前のモデルであるNIKKOR-S Auto 50mm f2が、ニコンの最初の一眼レフのレンズとのことですが、補正レンズが1枚入った5群7枚で本レンズと構成が異なっているそうです。
 あと、レンズ構成が4群6枚の伝統的なダブルガウス型なので、他の時代や他のメーカーとの比較も面白いかもしれません(Ai Nikkor 50mm/f2やキヤノンFD 50mm/f1.8、Contarex Planar 50mm/f2、Loxia 50mm/f2、Biotar 58mm/f2、Summar 50mm/f2等)。レンズ屈折率、ガラス材、コーティング、内面反射の処理等の違いを堪能できるかも。完全に沼ってますが汗

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(5)AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G(現代レンズ)

 安価ですが、良い写りをします。ピントが合ったところはシャープで、背景もよくボケます。ただ、少しぐるぐるボケの傾向もあります。
 ゴースト・フレアはあまり出ませんが、現代レンズであるこのレンズに期待するのはかわいそうでしょう。コーティングと内面反射対策がしっかりしている証拠です。
 軽くてオートフォーカスなので、マニュアルフォーカスできない雨の日に活躍しています。

(6)AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED(現代レンズ)

 自分は風景撮影に使っていて、とても良いレンズなのですが、今後、ポトレで使うことはあるのだろうか…

(7)NIKKOR Z 85mm f/1.8 S(現代レンズ)

 完璧なレンズ。優等生すぎて、味がないとも言われる。あるいは無色透明とも。
 合焦したところは限りなく解像度が高い一方で、後ボケは柔らかですので、写真にかなりの立体感がでます。なお、前ボケはまあまあですね
 初めてお会いするモデルさんや透明感を出したいモデルさんの時に使うような気がします。そういう意味で、自分にとって指標となる、ベンチマーク的なレンズですね。これでダメなら、自分の腕が悪いと。
 ゴースト・フレアはほぼ出ませんこの作例では、安物のフィルターのせいで変なゴーストが出てしまっていますが汗 もちろん、こちらの作例ほどの逆光だと少しゴースト等が出ますが、全体が破綻するほどではありません。


3 Minolta(5本)

 もともとは兵庫県発のカメラ・メーカーですが、カメラ・レンズ部門は既にSonyに吸収されてしまったそうで、その際にMinoltaの設計者もSonyに移籍したということです。そういう意味では、Minoltaのカメラ関係の技術や思想・文化は、Sonyを通じて、現代にも脈々と受け継がれていると言ってもいいかもしれません。
 Minoltaの(オールド)レンズの特徴は、描写の柔らかさと日本人の肌に合った色味と言われており、すなわち、日本人好みに優しく写る、といった感じでしょうか。それは自分自身の実感としても納得できるところがあり、実際、今なお、Minolta時代のレンズを使ってポートレートを撮影する人も多いようです。フレアもしっかりと出ますが、その色味は同じ日本レンズの旭光学(Pentax)のTakumarと比べて落ち着いてます。そういう意味で、コーティングの色合いが日本人に合っているのでしょうね。

(1)MC ROKKOR-PG 58mm/f1.2(オールドレンズ)

 鮮やかな虹色のフレア・ゴーストが上方から降り注ぎつつも、被写体に嫌な色被りがしない稀有なレンズ。人肌も綺麗。とても好き。
 鷹の目ロッコールと色々な本やブログで言われていますが、開放ではむしろ優しい描写という印象。以下の3(2)ほどは滲みませんが、柔らかで暖色系の描写がしたい時に持ち出しています。58mmという焦点距離も、人物撮影ではパースが抑えられるため、f1.2のボケと相まって、人物撮影には好適
 ただ、フリンジは結構出ます汗

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(2)MC ROKKOR-PF 58mm f1.4(オールドレンズ)

 落ち着いた発色の虹が撮れるレンズで、逆光気味にすると、下方から簡単に出てきます。
 写りも良い感じで滲んでポートレートにも良いです。Auto Rokkor 55mm/ 1.8との比較では、Auto Rokkorは滲みが抑えられつつも派手にゴーストが出るのに対して、本レンズはゴーストは柔らかに出て、また描写も優しい感じです。
 かなりお気に入り!お気に入りすぎて、この前のモデルのAuto Rokkor-PFも欲しくなってしまいました。

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(3)MC ROKKOR-PG 50mm/f1.4(オールドレンズ)

 ゴースト・フレアというよりも、人肌が美しく撮れるので購入。個人的には室内曇り空・雨専用レンズ。フレアやゴーストは、夕方に太陽に向けたら上方から円形の紫から黄色系のゴーストがやっと出るぐらいで、綺麗なのですが、時間帯や構図が限定されるので、使いどころが難しそう
 詳細は、あおいとりさんのサイトで。
 いつか晴れの日で使ってみたいけど、晴れたら晴れたで、別のレンズを持ち出しそう汗

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(4)MC TELE ROKKOR-PF 100m f2.5(オールドレンズ)

 少し硬調ですが、フレア等が美しいポートレート向きのレンズ
 ゴーストやフレアは、秋冬の日が低い季節やある程度日が傾いてからでないと出ませんが、下方からクリーム色のゴーストが画面を彩るとともに、大きな虹も出現します。
 中望遠の入口ですし、十分にボケます。ただ、開放だと玉ボケに口径食が出ますので、気になるなら少し絞る必要があるかもしれません。
 同じ時期のミノルタのレンズと比べて、写りは想像以上に硬質・シャープでしたが、嫌な感じの硬さはありません。ただし、同時期のレンズと比べるとその点で少し異質なので、他の焦点距離と描写を合わせられないのが難点か。100mmに拘るならば、Tele Rokkor-PF 100mm/f2がありますが、無駄にレアで高額なので、85mm/1.7でもいいかもしれませんね。


(5)Sony (Minolta) 135mm F2.8 [T4.5] STF(現代レンズ)

 ボケで有名ですが、実は結構フレア・ゴーストも出ます。分かりやすい光線や虹ではなく、赤色の光が画面を覆う感じです。
 写りについては、柔らかなボケに反して、ピントがあった場所はとてもシャープ
 輝度差の多いところではフリンジも少し出ますが、後処理でなんとかなる範囲でしょう
 ただ、実効f値が暗い(実質f4.5)ので持ち出す頻度はあまり高くないです。もっと使ってあげたいのですが。


4 旭光学(Pentax)(3本)

 旭光学は、オールドレンズで一番有名なSuper-Takumarのメーカーで、今はPentaxとして、もちろん現在も活発にカメラ・レンズを販売している企業です。
 Takumarシリーズの特徴は、多くのマイナーチェンジ・更新による豊富なバリエージョン、オールドレンズらしからぬしっかりとした描写それに反したド派手なフレア・ゴーストでしょう。特に、ざっくりと言うと、Auto Takumar → Super-Takumar → SMC Takumarという発展を遂げてきたのですが、Super-Takumar時代は、アトムレンズと言われる人体に害のない程度(と言われている)微量の放射線を発するレンズを使って、高精細な描写を成し遂げていますが、他方で、経年劣化による黄変で、写真が暖色系に写ることが特徴と言われています。
 なお、その後のSMC(Super Multi-Coated)時代は、高性能なコーティングゆえにあまりフレア・ゴーストが出ず、また、アトムレンズ不使用のため黄変もせず、がっかりする方も多いかもしれません(自分も何も知らずに購入し、がっかりしました)。ただ、とても良く写ります。がしかし、よく写るレンズが欲しいならば、現代レンズを買えばいいだけという意見も(マニュアル・フォーカスのトルク感は最高なんですけどね)。

(1)Auto-Takumar 55mm f1.8(オールドレンズ)

 Super-Takumarが有名ですが、その前のモデルであるこのレンズもとても良いです。少し滲むような描写で色味も暖色系なので女性ポートレート向きで、ゴーストも下からとても鮮やか虹が出ます!
アトムレンズも不使用とのこと。
 ただ、フレア・ゴーストの傾向は、Super-Takumarと異なるようです(Super-Takumarは上から円形のゴーストが降り注ぐ感じ?)。また、半逆光で下から虹が出るという点では、Minoltaの2(2)のレンズと同じですが、こちらは若干暖色系で、華やかな感じになります。
 ボケはオールドレンズらしい独特なものですが、むしろ油絵っぽくて、自分は好きですね。

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(2)Super-Takumar 50mm F1.4 (8枚玉)(オールドレンズ)

 アトムレンズを使う7枚玉モデルの前のもので、鮮やかなゴースト・フレア女性ポートレート向きのとてもよい色味を出すことで評判のレンズです。あおいとりさんに影響されて、購入してしまいました笑
繊細な描写で写真に特別な空気感さえ与えてくれそうな気もします。背景に気を付けないとボケは若干騒がしくなりますが、むしろ油絵っぽくて、自分は好み。
 上記の3(3)のMC ROKKOR-PG 50mm/f1.4と合わせて、50mmのオールドレンズでの人肌綺麗のツートップすね笑


(3)Super Multi Coated TAKUMAR 28mm f3.5(オールドレンズ)

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 あんまりフレア出ないので、使っていないです汗
 f値は暗いですが、とっても緻密かつ濃厚な描写をしてくれる凄いレンズです。
 でも、ポトレには持ち出していないですね…


 次回はレンズ概要編の最終回として、旧ソビエトレンズやライカ等のレンズをとりあげたいと思います〜

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