追加のレンズたち
昨年12月以来の投稿となりますが、この4ヶ月で、ニョキニョキと12本も生えてきましたので、追加レビューいたします!ただ、まだ作例が十分ではないものもあるので、今後も適宜追記していけたらと思います。作例は冒頭のtwitterの埋め込みだけでなく、関連の記述に画像のリンクを貼っていますので、そちらも適宜ご覧ください!
なお、これまで購入してきた、その他のCarl Zeissのレンズはこちら、ミノルタ等の日本レンズはこちら、になります。
1 Carl Zeiss(8本)
(1)Sonnar 1.5/ 50mm
旧コンタックスのレンジファインダー用のレンズで、1932年に発売された同じモデルのアップデート版(戦後すぐのOpton銘の次のCarl Zeiss銘のもの)となります。戦前のモデルにはなかったコーティングの付与とガラスの種類の変更がなされているようですが、個人的には見分けがつかず、むしろ当方が入手したのはあまり状態の良くない個体だったので、戦前のノンコートモデルの方が個人的にはよく写るような(汗)
まだポートレートには使えていませんが、作例が出来次第、アップしたいと思います!
(2)Loxia 2/ 50mm
Sony Eマウント向けにCarl Zeiss自らが提供しているモデル(コシナのレンジファインダー用のPlanar 2/50mm zmをそのままSony用に改造したものとも言われています)。1897年にCarl Zeissのパウル・ルドルフ博士が発明した元祖プラナーの構成を忠実に踏襲しているとされています。
購入理由としては、(1)古典的なレンズを現代のガラスやコーティング等の技術で作り直すとどうなるか大変興味があったこと及び(2)現代的な写りの50mmで、球面レンズのみを使ったレンズが欲しかったためです。
写りとしては、現代のツアイスレンズらしく非常にクリアかつ高コントラスト。ボケもそれほど煩くない。フレア・ゴーストについては、開放で、西日にあえて向ければ、青色の半球状の光がなんとか出ますが、あえてフレア等を出すために使うレンズではないですね。
ウィークポイントとしては、フリンジはまあまあ抑えられていますが、それでも出ますし、少し樽型に歪曲します。ただし、フリンジは現像でちゃんと消せる範囲のものですし、樽型歪曲も同様です。
個人的には、古典的なレンズ構成でも、ガラス材とコーティング等を変えるだけで、ここまで現代的に写るのかと感動しており、大変気に入っているレンズです。これからもガンガン使っていきたいです!
(3)HFT Planar 1.4/ 50mm (1972)
悩ましいレンズその1。
Carl Zeissが二眼レフ等で有名なRollei社にレンズを提供し、Rollei社が独自のHFT(High Fidelity Transfer)コーティングを施して販売したもの。Zeissマニアで有名なコンまにさんによると、描写としては若干寒色寄りではあるが、ヤシカコンタックス(ヤシコン)のPlanarと描写はほぼ同じとのこと。自分も使ってみて、ヤシコンPlanarと比べて、本レンズの方がコントラストが弱く、ややあっさりとした描写に感じます。
ポートレート用としては、f1.4という薄い被写界深度やオールドレンズならではの滲みや繊細な感じもあり、とても適していると思います。フリンジも、他のオールドレンズと比べたら、取り立ててひどいことはなく、フレア・ゴーストもまあまあ出ます。めっちゃ綺麗なものではないですが(汗)
悩ましいのは、他のオールドレンズや現代レンズと比較した時の立ち位置でしょうか。これがダントツに凄い、という一芸がないので、どうしても持ち出す際の優先順位が低くなってしまいます… 例えば、綺麗なゴーストが欲しいならばTakumarやMinoltaを、滲みが欲しいならばSummaritやニコンのオールドレンズを、美しいハイライトの描写が欲しいならば現行のPlanarを、といった具合になってしまいます。西ドイツ製のPlanarを使っているんだ、という満足感ぐらいでしょうか(汗)
いずれにしましても、描写はいいですよ。でも、だからこそ悩ましい。
寒色系の色味といい、それと微妙な滲みによって醸し出される透明感といい、最高のレンズでした。自分の見る目がなかったです…
(4)Planar 1.4/ 85mm zf.2 (コシナ)
1970年代のヤシコンPlanar 85mmを日本のコシナ社が復刻させたもので、オリジナルの弱点をかなり克服しています。
具体的には、開放でもある程度ピントが分かるほどに解像度・コントラストがアップし、また、パープルフリンジもそこそこ抑えられています。それでいて、ヤシコンPlanarの良さの人肌の描写や光の捉え方を残しています。特にハイライト部の描写が非常に美しい!これを購入した後は、ヤシコンPlanarの出番が激減して、困っているほどです(笑)有名写真家のあおいとりさんの一押しレンズでもあります!
玉ボケもいい感じです。
ただ、現代的に改良された分だけ、フレアやゴーストは非常に出にくくなっていますので、それが欲しければ、ヤシコンPlanarでしょうか。ヤシコンPlanarはかなりじゃじゃ馬ですが汗
いずれにしても、これは良いレンズですよ。ハイライトの描写やコントラストを望まれるならば、ヤシコンPlanarよりこちらをオススメします!とはいえ、人肌のトーンや美しいフレアはヤシコンPlanarも素晴らしいですが。
後継のMilvusが発売され、販売終了かと思いましたが、本レンズと50mm Planarはclassicラインとして継続販売しています。Carl Zeissも50mm/85mmに限っては、これまでのレンズなりの長所があるので、販売を継続しているとのこと。が、いつ販売終了となるかは分かりませんので、新品が欲しいならばお早めに確保ください笑
(5)Milvus 1.4/ 85mm zf.2
Planarを更に現代的に改良した、(個人的には)最強のレンズ。基本的なレンズ構成は、これまでのPlanar(5群6枚)を踏襲しつつも、9群11枚までレンズを増やし、更にその半分以上を異常部分分散ガラスで固める徹底ぶり。ただし、1kg以上あり、めっちゃ重い…
ポートレートでの使い心地は、こちら(日本語)とこちら(英語)で詳細にレビューされている通りですが、現代的なコントラスト・色乗りでありながらも、Planar 85mmに求められる繊細さが失われておりません。ピントが合った箇所はシャープだけど繊細で、なおかつ前ボケも後ボケも柔らか。定性的な表現ですが、寒色系をとても綺麗に表現し、非常に透明感の溢れる画像を量産してくれます。また、人肌も質感良く、しっとりと描いてくれます。
もちろん、ウィークポイントはあります。これだけ異常部分分散ガラスを使っててもフリンジは少し出ます。特に、フォーカスから少し外れたところに、除去が少し難しい青色の滲みがでます。また、最初に触れましたが、重い、めっちゃ重い… 更に、回転角が大きく、非常に細かいピント合わせが可能ですが、それゆえにピント合わせるのが時間がかかります(回せど回せどピントが合わない笑)。
なお、フレア・ゴーストは普通に使っていれば、気になるものは出ず、むしろ柔らかに覆ってくれる感じです。
まとめると、現代的な描写がありつつも、Planarとしての繊細さが失われておらず、個人的には今一番好きなレンズです。実際、これを購入して以降、オールドレンズの出番がぐっと減ってしまいました汗
ちなみに、クラシックモデルのPlanarとの違いは、Planarはハイライト部の光の諧調を豊かに描いてくれますが、Milvusにはそのような味わいは無さそうです。他方で、Milvusは繊細かつ透明感のある画像を高精細に描いてくれます。Planarではそこまで追い込めません。あと、Milvusの方がフリンジも少ないです。ピント合わせは、回転角やピントリングの形状等から、Planarの方が機能的にはやりやすいですが、Milvusの方がコントラストがありますので、ピントの山はMilvusの方が掴みやすいです。
結論としては、MilvusはモデルとしてはPlanarの発展系と位置付けられますが、それぞれ別の良さがあるので、どちらか一方を選ぶことは困難でしょう汗
(6)Olympia Sonnar 2.8/135mm (1964)
1959年に発売されたコンタレックスというカメラ用のレンズで、このレンズ自体は1964年発売のようです。
Carl Zeissの135mm/f2.8という性能のレンズは、この後、以下の(7)や(8)に継承されるのですが、このレンズはその最初となるものです。
まだ使いこなせていないので、今後使いこなしていく中で詳細をアップデートできたらと存じます(以下に追記あり)。
なお、現時点の感想としては、色乗り・コントラストは時代性を考慮すると良好で、フレア・ゴーストやフリンジの発生は比較的抑えられていますが、後年のものと比べると少しパンチが弱いかな、といった印象です。ゴーストの形としては、3枚目の通り、画面下方から青白い光が立ち上がってくる感じで、太陽に向けると青い球状の光が入ってきますが、めっちゃ綺麗というわけではないです汗
(2022/1/2追記)上記感想から変わりありません。以下の(7)・(8)が素晴らしすぎるレンズのため、どうしてもこのレンズの出番が限られてきます。もちろん、このレンズなりに素晴らしい描写をしますが、どうしてもこれでなくてはというパンチが弱いです。
(7)HFT Sonnar 2.8/ 135mm (West Germany) (1973)
1(3)と同様に、Carl Zeiss社からレンズの供給を受け、Rollei社が独自のコーティングを施したもの。大変作りの良いレンズで、フォーカスリングのタッチも良く、又、フードも内蔵されています。
シャープさやコントラストについては、現代のレンズと比べても遜色がないほどです。色味は少し寒色系寄りで、比較的ニュートラルで透明感のある描写をしてくれます。ボケも特筆すべき癖はなく、フレア・ゴーストも頑張らなければ、あまり出ないです(青白い光が画面下方から立ち上がってくる感じで、取り立てて綺麗でもないです)。フリンジは時代なりで、輝度差の高いところでは少し出ますが、レタッチで十分に対応できる範囲です。
大きさは、望遠なので少し細長いですが、手軽に持ち出せる重さです。
個人的には、購入してよかったレンズの一つで、描写・大きさ・使い心地ともに自分に合っており、ついついこればかり使ってしまうほど好きです!心からオススメできます。
(8)Sonnar 2.8/ 135mm (MMJ) (1975→1985?)
1(7)の2年後にヤシコンマウントでCarl Zeissが発売したもので、本レンズはその後期バージョンとなります。コントラストや色乗りが非常に良く、一部中古販売店では、ポートレートではなく風景に最適としているほど。また、『ポートレートのためのオールドレンズ入門〜オススメの50本〜』(玄光社刊、鈴木啓太著)でも、「圧倒的な高解像度&高コントラスト」としているほどです。入手もしやすいですし、現行レンズは高描写過ぎて苦手で、一方で緩すぎる描写のレンズも嫌だという人には、まさにぴったりでしょう。
1(7)との比較では、1(7)から更に解像度・コントラストを高めつつ、色味は暖色寄りにした感じです。また、フレア・ゴーストもかなり抑えられています。開放ではフリンジも出ますが、レタッチでなんとかできる範囲です。
本レンズについて、ポートレートに不向きかというとそうでもないという印象です。なんだかんだ言っても、数十年前のレンズですし、現代レンズ(例えば、Milvus 135mm)と比べれば、開放では少し甘さもないわけではないです。むしろ、レタッチすることを前提に撮影するならば、しっかりとした画像を撮影して、あとは適宜調整すればいいだけのことで、むしろ素性の良い画像を作ってくれます。
また、ピントリングは軽く、フォーカスを合わせやすく、大きさも少し長いですが、手軽に持ち出せる軽さになっています。
そういうわけで、自分の中では1(7)のHFT Sonnarと双璧をなすレンズとして、いつもどちらを持ち出すか悩むほど好きなレンズでもあります!寒色系で繊細なのは1(7)で、コッテリ系は本レンズといった感じです。なお、Carl Zeissの135mmで、柔らかな描写や華やかなフレア等を楽しみたければ、Planar 2/135mm (AEG)一択ですね汗
ちなみに、当方が所有するレンズは、1975年の発売ものが、絞り機構の変更やその他マイナーチェンジにより、1985年に再発売されたものとされています(いわゆるMMもの)。噂によると、手裏剣型になってしまう絞りバネの修正だけでなく、内面反射対策も強化されたようです。
2 ミノルタ(3本)
(1)MC W.Rokkor-HH 35mm/ 1.8
解像力は高いけどコントラストは低い、いわゆる線の細い、繊細な描写をするレンズで、1960年代後半に発売された他のminoltaレンズと共通した特徴となっています。そのためポートレートには最適なレンズになっています!
フレアやゴーストについては、昼間の時間はそれほど出ませんが、日が傾き始めると盛大に出始めます(※)。冒頭の作例の通り、上から下から幾重にも虹の輪が出つつ、太陽からは虹色のシャワーが降り注ぎます。暖色系の色味と合わせて、とてもゴージャスな写真になりますので、フレア好きには堪らないレンズでしょう!加えて、そのような盛大なフレア等が出るにも関わらず、フリンジは不思議なくらい抑制されており、この点からも非常に使いやすいです。これはMC Tele-Rokkor 85mm/1.7とも共通する特徴で、少し不思議ですね。
※実際、5月上旬の午前9時台では出ず、午後4時台では盛大に出ました。5月上旬の日の出は午前4時半頃、日没は午後6時半頃なので、日の出・日没から3時間以内ぐらいがベストな時間でしょうか。
結論としては、35mmのオールドレンズはこれ一本あれば十分なくらい素晴らしいレンズで、もう手放せません!
(2)MC Tele Rokkor-PF 85mm/ 1.7
ミノルタのオールドレンズらしい柔らかな描写と美しいボケ、そして虹色のフレア・ゴーストを繰り出すレンズです。しかも、後年のMDレンズの85mmはf2ですが、これはf1.7と少し明るいのも良いです。
当方が所有している同時代のMinoltaの100mm/f2.5と比較すると、100mm版はかなりシャープで高コントラストである一方で、85mm版はとにかく柔らかく繊細な写りをします。レンズ構成の違いでしょうかね。
具体的に、フレア・ゴーストについては、上記の100mmと同様に暖色系の半円状のフレアや虹が下方から立ち上ってくる傾向にあります。ただ、100mmはある程度日が傾いていないとフレア等は出ませんが、この85mmは春の午前11時頃でもしっかりと出ましたので、フレア好きには使いやすいレンズでしょう。虹の色自体は、ニュートラルな発色の100mmも大変綺麗ですが。
難点は、微量の放射能を排出する素材を使ったレンズであり、時間が経つと黄色く変色してしまうという噂があることです(ブラウニング現象)。ただ、人体には影響ないレベルという噂ですし、また、黄変も紫外線を当てれば治るそうです。自分が手に入れた個体はそれほど黄変が酷くなかったので、別の素材が使われているか、すでに紫外線を当てた後かもしれません。
まだまだ使いこなせていないので、これからもどんどん使っていきたいと思います!
(2022/1/2追記)何度も使ってみましたが、やはり素晴らしいレンズでした。美しいフレアだけでなく、繊細な描写が大変美しい!
(3)MC Tele Rokkor-PF 135mm/ 2.8
悩ましいレンズその2。(以下に追記あり、悩ましいどころか、素晴らしいレンズ!)
それなりにシャープで、高コントラスト。また、フレアやゴーストもほぼ出ない。オールドミノルタらしい少しレトロな色味。優等生。
ただ、自分が所有する他の135mmと比較すると、これといった特徴がなく、あまり持ち出せていません(汗)しかも、自分が手に入れた個体はピントリングがめっちゃ硬い… 現時点では、単なるコレクションになってしまってます…
(2022/1/2追記)その後何度か使ってみましたが、秋冬こそのレンズと実感。その繊細な描写はMCシリーズの85mmf1.7や100mmf2と共通であり、なおかつ精細かつ暖色系に描いてくれます!秋冬のポートレートには欠かせなくなりました!!!
3 その他(1本)
(1)Kistar 85mm/ 1.4
悩ましいレンズその3。(2022/1/2今後追記予定:あんまり悩ましくない、素晴らしいレンズかも!?)
名門富岡光学の流れを汲む木下光学研究所が作り出した、オールドレンズをオマージュしたレンズ。
写りは、オールドレンズで有名な澤村氏の記事の通り、少しの滲みを伴う繊細なものとなっています。また、フレア・ゴーストもそれなりに出しやすいレンズとなっています。赤紫の淡い光の帯が画面下方から立ち上がってくる感じですね。フリンジも出ますが、レタッチで対応可能な範囲となっています。
ただ、なんというか、位置付けが難しいレンズではあります。Carl ZeissのPlanarと同じ5群6枚のレンズ構成で、明らかにPlanarを意識したものであり、描写としてはヤシコンと現行のコシナPlanarの中間ぐらいでしょうか。ただ、柔らかさやフレア等が欲しければヤシコンを持っていくし、Planarならでは光の美しい描写や人肌の色味等が欲しければコシナPlanarを持っていくしで、中途半端な位置付けになってしまっています。
良いレンズですけど、これも他の悩ましいレンズたちと同様に、これといった一芸やパンチ力がないために、どうしても利用の優先順位が下がってしまっています。
柔らかで、繊細な描写で、本当に良いレンズなのですが。ピントリングも滑らか!それだけに更に悩ましい。
(2022/1/2追記 今後作例追加予定)レンズの特性は上記から変わりありませんが、人肌をとても生き生きと美しく描いてくれるような気もします!
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