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感謝で奪うな

 人への感謝を忘れるな。
 そういう言葉を人生で何度も聞いた。

 今までの経験上、概ねその通りだと思う。
 ただし、感謝を人を動かす手段とするのは反対だ。

 ある人が自分のためにやっていることに対して、第三者が感謝することがある。
 たとえば、学ぶという行為は自分にとって必要だからやるのだが、それに対して「学んでくれてありがとう」という人がいるのだ。それは理屈としておかしいのだが、要するに「学ばせたい」という意図があって、そこに駆り立てるために感謝するのだ。

 強制されるのも嫌な話だが、感謝されるのはある意味で余計に厄介だ。別に悪いことではないので、簡単に突っぱねることもできない。そして、初めは純粋な興味や好奇心で学んでいたのに、他者が望んでいるからという動機で濁っていく。

 歯磨きしてくれてありがとうとか、お風呂入ってくれてありがとうなんて、普段生活していて他者に対して言わないだろう。健康や清潔に保つのは、なによりも自分のためであるはずだ。

 感謝とは、ありがたいと思うからこそするのであって、他者をコントロールするためのものではない。それを忘れないでいたい。

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