パラダイムの逆転する瞬間

 昔の野球の投手は身体を冷やしてはいけないとされていた。けれど、現代の投手は必ずアイシングをする。

 それまでの文脈が逆転するのはしばしば起こる。それが一般に普及して認知されるまでには時間がかかるが、じわじわと着実に変わっていくのだ。今日はその兆候を見かけた。

「喫煙可能店舗」ののぼりを見つけた。

 昭和の時代は、喫煙は珍しいことではなく、ほとんどどこでもタバコを吸えたらしい。僕が育ったのは、禁煙席が市民権を得た時代だった。それでも、「禁煙席が有る」事実をわざわざアピールするのは、それが当たり前ではなかったからだ。

 最近は完全禁煙の店がだいぶ増えたので、禁煙席よりも喫煙席の記載が増えてきた。だが、店の前に「喫煙可能店舗」とのぼりを立てるのは、少し意味が異なると思っている。
 たとえば「SALE」とのぼりを立てるのは、その言葉によってお客さんが来るからだ。お店にはそこまで興味なくても、「SALEならばちょっと覗いてみるか」となるわけだ。
 つまり「喫煙可能店舗」と掲げるのは、それによって来客が見込めることを指している。それだけ喫煙者は肩身が狭くなっているのだろう。

 時代は変わった。でも、どの瞬間が境目だったのかはわからない。だれもがふと気づいた時には、いつの間にかそうなっているのだ。

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