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風に舞いあがるビニールのごとく

 ビニールが空を舞っていた。

 昼頃、事務作業をしていた時だった。ふと窓の外に目を向けたら、青空の中に透明な物体が飛んでいた。一瞬なにかと思ったけれど、スーパーでもらうようなビニール袋だった。

 なんでもない光景だけど、僕はそれに目を奪われてしまった。

 あちこちと風向きが変わって上下左右へと波打つように動くそのさまは、吹き荒ぶ風に翻弄されるというよりも、軽やかに身を委ねているように見えて、美しかった。

 あの動きだ。僕がしたいのは。

 二転三転しながら、次どうなるかわからない社会にあって、多くの人は翻弄されているだろう。しまいに弾き出され、苦しい思いをしている人も少なくない。
 一方で、大いなる流れに惑わされず、持ち前のパワーで我が道を突き進む人もいる。けれど、その方法は僕にはしっくりこない。

 どうしたものかと漠然と思っていた矢先、ビニールの動きに出会った。風に乗ってはいるが、流されてはいない。意志を持つ僕達は、ついつい自分の望む方へともがく。けれど、それがかえって硬さを生み、余計に翻弄されてしまう。

 自分が望んでいたものが手に入ったら、意外と大したものじゃないという経験はあるだろう。であるならば、予想だにしない結果が、案外悪くないと思えることだってあるかもしれない。

 どこに辿り着くかわからない不安を手放し、脱力して、思い切って身を委ねてみる。そういうものにいまの僕は焦がれているのかもしれない。

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