見出し画像

「とらぬたぬきうどんでおなかをふくらます唯一の方法 vol.27」に寄せて

 こんばんは、こんにちは、おねぼうさん、深水きいろです、おねぼうさんはわたしです。書きながら寝てしまって目覚めたらそこは銀世界、なんて夢は叶わなくてガンダッシュです、夏なのに。暑いから走っちゃダメだね、夏だから。そして今はすっかり寒いね、夜だし。

 さて、この2ヶ月ほどネプリを出力しては積みあげるお仕事に精を出していたのですが、ようやく感想を出す場の準備(ここのことです回りくどいな)が整いましたので、大変いまさらですがこちらから、三首選を。

とらぬたぬきうどんでおなかをふくらます唯一の方法 vol.27「おみやげ」

 しま・しましまさん、雀來豆さんのおふたりで制作されている短歌ネプリ。コンスタントな配信でかろやかなデザイン(毎回違うデザイン!おどろき!)いつも、勉強させてもらっています。

 早速以下より、猛烈に好きな歌、三首です。

窓といふ痛みのごとき存在にとほく紅潮してゆく空は/千葉優作

 空は自ら動くことは叶わず、窓の中にも、むしろ窓すら触れられません。どうしてもどうしてもどうしても触れ合いたいひとの窓の中にいるとき、きっと、空の心はぎゅうっと痛くなる。ちらりと目が合ったらそれだけ顔が赤くなるやもしれぬ。窓そのものに対しては怒りさえあるやもしれぬ。中、窓、をへだてて遠くに空。奥行きのある景色が鮮やかな朱色と少しの影で浮かぶ、素敵な歌でした。

ひとりでもとんがりコーンをゆびさきにはめて笑つてゐてくださいね/桔梗

 呼び掛けの相手は、どんな関係の人かなあ。なんとなく、とてもぼんやりとなんとなく、はめているのはこれを言う当人じゃないかな、という気がするの。もう会わない人かなあ。一緒に笑いあったひとかなあ。もしかしたら、未来の自分かなあ。ちいさくちいさく、零れちゃうくらいのほのかな楽しい夜を、こうして日記に付けてくれてる人がいたら惚れちゃうな。

いつかきつと忘れてしまふ明るい声もそれに似合はぬ冷たい肌も/しま・しましま

 タイトル「さて、あなたが知つているのはどちらかが死んでしまつて終わる話か」も相まってぞくりとする歌の並ぶ連作。ぞくり、というのは少し強くて、そわり、くらいなのだけれど。タイトルにもうひとつの選択肢がないのもまた、そわり。そして、並んだ歌たちもおなじほどの寂しい怖さを残す。
 引いた歌の「明るい声」と「冷たい肌」の間には時の流れを感じずにはいられない。そしてさらに「いつかきっと」と将来のことを言うものだから、読んでいると未来、とても過去、少し過去、というように(想像だけれど)ときが前後する。これを嫌う人もいるのだろう。わたしは、すごく好き。ここまでわかりやすく(読み違えていたら恥ずかしいけれど)前後しているのなら、主体の心の揺らぎのようで寄り添いたくなるから。そばにいることしかできないだろうけれど。

 三首、と決めたらあっという間でした。引けずに終わってしまった好きな歌も自分の力にしてゆくために沢山書き込みをしておりまする。千里の道も真似っ子から。え?ちがう?

 素敵な配置、懐かしくなる写真たち。カラーで出してよかったなあ。綺麗だなあ。ありがとうございました。

-----------------------------------------------------

 さてさて、日付変更線に追いかけられているのでわたしもここらでお暇です。ネット歌会「うたの日」の、今日は24時に開票される部屋に出しているのでチェックして寝ます。出せたのはえらい。とてもはなまる。明日も生きていていいよ、わたし。みんなも楽しく過ごしてね。

 では、また。足元に気をつけて。

2019.06.14
深水きいろ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?