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日本人の心 8 医療崩壊 喉元過ぎれば

緊急事態宣言が発せられている中でオリンピックが開催されています。テレビもオリンピック中継が増えていることもあって、今までの緊急事態宣言とは明らかに違う雰囲気があります。オリンピック報道以外にも重症者の数がそれほどでもないとかまだ病室が逼迫していないと言うこともあるのかと思います。でも私が不思議に思うのは、なんで病室の逼迫度合いという病室を作れば解決する人為的なものが未だに感染状況と共に重要な指標になり続けているのでしょうか? コロナが流行り始めたころなら、よく理解出来ます。でも1年以上だった今でも、これが重要な指標になっていることを誰も不思議に思わないし、メディアも指摘することはありません。逆に何を言っているの?医療崩壊しかねないのだから当然でしょうと言われてしまいそうです。

もちろん、コロナ以前には当然病室はそれなりに妥当な数で抑えられていたはずで、急にコロナ患者が増えれば病室が逼迫するのは当然です。でも1年以上経ってもコロナ専用病院が新しく作られたとは聞いたことがありません。そんなことは中国ではあるまいし、すぐ出来るわけないでしょうとまたまた言われそうです。

では、この国は将来のパンデミックに際してどのような対応を考えているのでしょうか? 私は医療には全くの素人ですが、大きな建物と電源があれば、大部屋にベッドとカーテン、人工呼吸器があればかなりの患者を効率的に看ることが出来ると思うのです。後はそれを診る医者次第です。日本は丁寧なので個室とか減圧室とかも配慮してコロナ専用病室を作りますが、感染者だけの病院であれば、そんなことは不要ですよね。でも現実には医者も揃えなければいけないし、急に特設病院と言っても簡単に出来るものではないのかも知れません。ではどうしたら、既存の病院に過大な負担をかけないでパンデミックに対応すればいいのでしょうか。建物はなんとかなると思うので、問題はやっぱり医者の数です。

私はかねがね医学部に入ったら医者になるという世間の常識に疑問を持っていました。当たり前のことなのでここでも、疑問に思う意味がわからないと言われそうです。大学の医学部を卒業したらよほど出来が悪い人以外は国家試験を通り医者になれます。特に私学の場合はお金次第で医学部に入いれたり、最近発覚したように女子の合格比率を調節したりしていました。つまり入学という入口で不正があってもなくても、医者という出口では全く一緒で、同じお医者様になれるのです。(昔のことなので今はそんなことはないことを祈ります。)

そう言えば医大や医学部が増えたという話を余り聞いたことがなかったので、調べてみると昭和54年以来新設の認可は一度もなかったのですが、東日本大震災を理由に1回限りの特例として東北での許可が出たらしいです。何故大震災があると特例で大学が認可されるのか意味がわかりませんが、とても言い訳じみています。誰に気を使っているのでしょうか? 確かに地方での医師不足や診療科の種類による偏在で医師不足の問題は指摘されていて、既存医学部での増員は少しずつ進んではいるようです。それなら医学部や新設医科大学を増やすことを認めてこなかったのは何故なのでしょうか?これは全くの邪推ですが、こういう場合たいていは秩序を乱す新参者が増えては困るからです。医大に入れば、ほぼ医者になれて、将来は開業医を継ぐことが出来る。この既得権を壊されたくないからだと思います。競争原理が働いて試験に合格する人のレベルが上がると困るのです。そうすると開業医の息子が医者になれなくなる可能性が出て来るからです。こうやって開業医の利権は守られて、日本全体での効率的な医療体制を作れないでいるのではないでしょうか。

医師会の会長さんが、テレビに出て大変です、これでは医療崩壊しますと外出自粛を要請する姿を見ていると、とても違和感を感じます。ほとんどの開業医が発熱外来を嫌がって何もしてくれないのに何で医療崩壊なのと思ってしまうのです。確かに大学病院や大きな病院は危機的な状況になる可能性は十分あると思いますが、それを開業医の代表が言うのかと思ってしまうのです。このまま行けばオリンピックムードの中、時間がたてばワクチンの接種も進み、今回が最後のピークとなり、コロナは終結して行くと思いますが、これで良かった良かった、で本当にいいのでしょうか。今回は日本の医療体制の問題点がいろいろな形で浮き彫りになりました。日本人は喉元過ぎれば熱さを忘れるのが得意ですが、パンデミックの際に都道府県を超えた対応が出来るようにするとか、開業医の動員が可能となるような開業医体制そのものの見直しをするとか、厚生労働省はせめて将来のパンデミックに対応する為の新たな医療体制のグランドデザインくらいは示して欲しいものだと思います。

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