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白銀世界での運命の出会い

どれだけ歩いただろう。
視界に映るのは、真っ白に染まった地面と木。
本格的な冬は来ていないのか、ところどころに黒っぽい岩場が見える。
ザクッ、ザクッ。
歩くたびに慎一の足に潰された雪の鳴る音だけが響く。
針を刺すような空気に顔を刺激されながらも、ずっと歩いているからか身体が暖かい。
少し息が上がってきたな。
目的地はまだ先のようだ。
体力の心配をしながらも、ペースは崩さず進み続ける。

目を開けると白い雪が風に吹かれて横に流れていた。
日は沈み、辺りは暗くなり何も見えない。
左頬についた地面の雪に、じわじわと身体の熱を奪われていく。
動いて体温を上げなければ。
立ち上がるために上でを動かそうにもピクリとも動かない。
早く動け。早く。
気持ちだけが急いて、口から出た白い息が視界をおおった。
「おーい」
雪が舞う暗闇の中で、人の声が聞こえた。
助けが来たのか。俺はここだ。全身の感覚がなくなっている。早く助けてくれ。
声はしばらく聞こえたが、人が近づく音は全く聞こえない。
風の音は弱まることなく吹き続ける。
ああ、風の音だったのか。
目が閉じていく。
霞んでいく視界の中、ふと小さくて白い塊が見えた。
それはピーピーと鳥の鳴くような声を出しながら近づいているようだ。
死者の国からの迎えか。
完全に目が閉じる寸前、キラリと光る二つの目が見え、顔の辺りにふわりと温かい熱を感じた。
これが俺とユキヒョウとの、初めての出会いだった。




みなさんは「ユキヒョウ」という動物を知っていますか?
一言で表すならば、白いヒョウです。
特徴的な長い尻尾は、先までフワフワの毛に覆われています。
私はユキヒョウが大好きなんです。
東京や名古屋、兵庫のユキヒョウがいる動物園に一人で通うほど。
初めて見たときは、この世の生き物だと思いませんでした。
白い体毛の大型動物ってあまり見ないからかもしれません。

今回のお話は、遭難した男とユキヒョウの親子が遭遇したお話です。
野生のユキヒョウは警戒心が強いので、たとえ動かなかったとしても人間に近づくことはないかもしれません。
大人のユキヒョウは「おーい」という人間の声がこもったような鳴き声で、子供のユキヒョウは「ピィピィ」という小鳥がなくような鳴き声(私の耳にはそう聞こえました)。
動けない主人公の慎一の近くに親子のユキヒョウが通りかかり、好奇心旺盛な子供のユキヒョウが慎一に近づいてきたお話です。
しかも子供のユキヒョウの体温が分かるくらいまで近づいてきてくれている…。

なんて羨ましい!!!


ユキヒョウは人を襲った事例はない(Wikipediaより)みたいですが、家畜などを襲う肉食獣です。
警戒心が強くて会うことが難しいと言っても、襲われる可能性がないわけではない。
そこがまた、ユキヒョウの魅力だと思います。
可愛くて触りたいような見た目だけど、肉食獣。
そのギャップが堪らなく愛おしく感じます。

みなさんはどんな動物が好きですか?
推しがいない人はぜひ、ユキヒョウがいる動物園に行ってみてください。


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