ノベライズ「イキなりご主人様宣言一話」完結

叩かれる……!

そう思ったのに、部長は私の顎をつまむと、そっと唇を重ねてきました。
私は驚きに両眼を見開きました。

「んんっ」

熱い舌が口の中に入ってきます。

「……っ」

自分でも頬が真っ赤になっているのがわかります。
部長の手がメイド服のスカートの裾から太ももに伸びて……。

(なぜなの……力が入らない)

そして数分間立ちました。

「……ごめんなさい……もうやめて……部長」

泣きべそ顔の私に、主任はふっと笑いました。

「お前、メイドが天職なんだろう? 俺をご主人様って呼んでみろよ」

「ご主人様……やめて下さい……」
「ノリがいいな」

部長が私を抱きしめて背中をポンポンと叩きます。
「よし、いい子だ」

私の目尻から長い指先が涙をすくいとりました。

「改めて見ると確かにその格好似合ってるな。お前、忘年会の余興もメイド服だったもんな」

部長はそう言うと私の全身を舐めるように見ました。

「ちょっと……何考えてるんですか」

「よし。決めた。お前を俺のメイドにしてやる」
「え?」

部長は私の顎をくい、と持ち上げ顔を近づけてささやきかけます。

「アパートを引き払えば家賃代が浮くだろ? 俺の家に来いよ」
「あの、部長」
「そうと決まったら、今からメイド服買いに行くぞ!」

手を握られて、私は引きずられるようにして立ち上がりました。

「無理無理無理! 意地悪上司のメイドなんて絶対無理!」

心の中でそう叫びながら。

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