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【スクールデイズ27選】恋をキリトル140字の物語 2

スクールデイズ 27選


◇1

「たった1人に卑怯ですよ」
オタク風眼鏡がスケバン達を一喝。
「なんだてめえ」
ふいに手首を掴まれた。
「逃げましょう」
促されて輪を飛び出す。
「バカ!あれは通過儀礼なんだよ。組抜ける為の」
「バカは貴方です。目的のために暴力を受け入れるんですか?そんなの僕が許しません!」
震える声の救世主。

◇2

「隣だ。ラッキー」
席替えの後聞こえた言葉。
学園の王子がこっちを見てる。
「教科書見せて」
今度は机を引っつけた。
バッグから現国の本が顔を出してる。
あれ?持ってる。どういう事?
緊張しすぎて授業が頭に入らない。
鼓動よ止まれ。平常心よ戻れ。
3年越しの片思い。
横にいる人に気づかれちゃアウト。

◇3

文化祭コーラスでソロパート。
鳴り止まない拍手に息が止まる。
私に大役を押し付けた音楽教師がピアノの横でドヤ顔してる。
1日3語も喋らない私が
どれだけの勇気でここに立ってるか分かってる?
貴方は次々試練をくれて別な世界へ私を誘う。
次の壁は恋の壁。
今度は自分の意思で高い壁を乗り越えてみせる。

◇4

‪音大受験前に指を怪我した。
夢を失った私はこの先どうやって生きてけばいい?
「選択肢なんて無限だろ。お前自身が決めることだ」
君の言葉は厳しくて、頬を撫でる手は温かい。
「ちゃんと決めたら伴走するから」
ありがとう。
復活するまで一緒にいてね。
心の鍵盤で奏でるソナタ。君に捧げる心からの感謝。

◇5

文化祭
5時間こもってた彼の許可がおり
皆で教室に入っていく。
雪山に鴉。月明かり。
芸術を超えた黒板アートに息を飲む。
「お前ただの天才かよ」
誰かの声を皮切りに皆が彼に抱きついた。
出遅れた私はチョークのついた指に目を向ける。
繊細な指。興奮を呼ぶ指。
あの指先にキスしたい。
文化祭前夜。獣がむくり。

◇6

‪音楽教室でドビュッシー。
最後の一音を弾き終えたら「すげえ」と溜息まじりの声がした。
振り向くと坊主頭の男の子。
野球部の確かキャプテンだっけ。
「すいません。勝手に聞いてて。明日もまた来ていいですか」
見つめるとこげ茶色の目がかすかに揺らぐ。
あ、彼はきっと恋に落ちた。
私の指が奏でる音に。

◇7

最後のお点前を終えた後先輩は俺に微笑んだ。
「泣かないでよ。木村君」
「無理っす」
「卒業しても遊びに来るから」
「一期一会。教えてくれたの、あんたやないですか」
荒れてた俺はあんたと茶道に救われた。
でも明日から会えない。
好きな人の点てたお茶を味わう。
初恋のほろ苦さ。
涙と共に喉へと落ちる。

◇8

早朝誰もいない体育館。
ダムダムドリブル音が鼓膜に響く。
「ヘタクソ」
「そっちこそ!」
「ほら抜いた」
「あーっ」
ジュポッと吸い込まれるバスケットボール。
奴のシュートは悔しいほど綺麗。
汗拭いて水飲んでつつきあって笑いあって。
タイムリミットきてるのを
気づかない振りしてた。
20年前の青い青春。

◇9

マドンナの寄せ書きが回ってきた。
「好きでした」「結婚して!」
ヤロー共のコメントはそんなんばっか。
同類になるのはプライドが許さん。
とはいえ爪痕くらいは残したいところ。
ペンを持って目を瞑る。
一気に押し寄せる想い出たち。
あーあこんなんやめて直接言うわ。
マジで好きです。
付き合って、って。

◇10

文化祭
写真部の展示に私のアップ。
タイトルは「憧れ」。
運動会のワンショット。
いつの間に撮られたの?全然気づかなかった。
何故私なの?メガネの君に問い詰めた。
「被写体として興味があった。君はその面白いよ」
「面白いって、好きってことだよ」
そう言いくるめて君を口説き落とした
高校生活最後の文化祭。

◇11

文化祭で対バンライブ。
完敗だ。彼の声が鼓膜にこびりつく。
私の歌は薄っぺらいな。
嫉妬心にさいなまれ校舎の裏で心情を打ち明けた。
「なるほど。俺に頭をジャックされてんのか。恋だな」
イケボであっさり決めつけられその日から交際が始まった。
彼の鼻歌にさえ胸がときめく。
2人の未来に乾杯しよう。

◇12

ヘビメタパンクのつんつん君が学級委員と気づいた衝撃。
体育館に響く君のシャウト。
ライブの後はもうメロメロ。
着替え中の彼に告白し校舎の裏でキスをした。
濃いルージュの香る唇。
アイメイクの奥の目が揺れていた。
舞台を下りるといつもの彼に胸が高鳴る。
今もずっと忘れられない。
文化祭で拾った恋。

◇13

‪ピアノソロで失敗した。
屋上で膝を抱えてたら野球部の彼が缶ジュース片手にやってきた。
「落ち込むなって方が無理だろうからどーんと落ち込め。俺が受け止めてやるからさ」
彼も去年エラーで失点、
暗い顔してた数日がある。
「今日が早く過去になればいいのに」
「わかるよ」
私は君の存在に助けられてる。

◇14

修学旅行。
円状に並べた布団の中でヤローたちと告白タイム。
「あんな地味な女が好きなの?」
「お前ならもっといい女と付き合えるだろ」
「わかってねーな。ああいう女が実は凄いんだよ」
「なんで知って…はっ!もしかして、もう…」
「ふっふっ」
「くそぉ」
「許せん!」
牽制完了。
ったく単純な奴らだぜ。

◇15

‪友との会話が上の空。
君に心を持ってかれてる。
授業が頭に入らない。君のことばかり考えて。
初恋はレモンの味って誰が言った?
噛みしめる余裕は全然なくてただ君だけを見つめる日々。
「下手なポエム作ってないで宿題しなさい」
と母登場。
やだな。台無し。
ふてくされつつ開くノートに君の名前を書く私。

◇16

1月後半。
卒業間近。私たちのクラスはほんと仲良し。
チームワーク最強。皆が私を磨いてくれた。
皆のおかげで私は入学前よりいい子になれた。
最後の仕上げ。大声大会で君にさけぶよ。
「ずっと好きだったの!彼女にして!」
多分ふられる。わかってる。
でも一生の思い出にするの。
胸に抱えて生きてくの。

◇17

推薦入試結果発表。
「第1志望に合格したぞ。おめでとう。皆にお祝いしてもらえ」
電話越しの声に力が抜けた。
「じゃ」
「待って」
大きく息を吸い込んだ。
「先生が好き。卒業したらデートしてよ」
「悪い。教え子とは付き合わないって決めてんだわ」
この素っ気なさ先生っぽい。
やっぱり好き。諦めないよ

◇18

文化祭
「どいて。邪魔」
第一印象は最悪だった。
文化祭で同じ係に選ばれた時は「最悪」って心で呟いた。
だけど毎日近くで過ごして本当は優しい人って気づいたの。
ブリキの木こりはハートを持ってる。
知ってるのは私だけ。
今は一緒に手を動かすだけだけど、
世界で一番孤独な彼の凍えたハートを温めてあげたい。

◇19

「カンニングばれて補習ってほんと?」
「半分正解半分ハズレ。カンニングなんてしてないもの」
「なんで言わないんだよ」
「疑われた時点でそんな気力なくなっちゃった」
「行くぞ。職員室」
「内申書に響くよ。貞じぃの性格知ってるでしょ」
「内申書が怖くて彼女を守れるか。グダグダ言わずにさ、来いよ」

◇20

恋バナ報告が止まらない。
皆の目がキラキラしててなんだか凄く羨ましかった。
カップル増殖中の教室で
アドバイザーな立ち位置つまらない。
女の子はいつでも愛の嵐を待っている。
スタンバイOKいつでも飛べる。
スタートの声いつかかるの。
よく晴れた日曜日の朝
孤独の毒が体に回り
涙がポロリ床へと落ちた。

◇21

彼と「パラダイス」って映画を観た。
際どいシーンの連続で心臓が爆発しそうになる。
「ごめん。こんなのと知らなくて」
ちらりと見た君の額に汗の玉が浮かんでる。
ねえいつかこんなにウブな私達も
こんな事をするのかな。
淫らな妄想かき消そうと、思わずゴクリと唾を飲む。
遠い夏の日。
甘く熱い昼下がり。

◇22

「好きです。僕と付き合って」
文化祭告白イベに出場した彼。
ロックオンに気がつかずヘラヘラ笑って見ていた私。
スポットライトに包まれて押し出されるように壇上へ。
片手を差し出す君の指先が震えていた。
精一杯の勇気。
私のために差し出された勇気。
握り返し引き寄せてキス。
君の勇気、全部いただく。

◇23

一つ年下の幼馴染が私と同じ高校を受けた。
神童と呼ばれる彼だから合格するに決まってる。
子犬みたいに懐いてる彼。
私と一緒にいたがってる、なんて。自惚れすぎかな。
勘違いだと恥ずかしいから本当の気持ち、私からは聞けない。
4月になったら桜の舞い散る通学路を自転車で駆け抜ける。
すぐそこの夢。

◇24

「わおーん。うおーん」と声がした。
ベランダに出ると一個下の幼なじみが
満月に向かい吼えている。
「何事?!」
「明日の試験が気になって」
「君なら大丈夫でしょ」
「わからんぞ。見ろ。この手汗」
「なんでそんなに」
「一緒の高校行きたいからに決まってるだろ。後輩になったら付き合う約束忘れんなよ」

◇25

ぽんと私にもたれかかり「受かった」彼が頭をすりつけた。
「嘘っ。えっ。ああ、おめでとう!」
祝福の言葉は彼の唇に吸い込まれる。
長く熱い数秒の後
互いの背中に両手を回して思いっきり泣き笑った。
一緒に過ごせる。
2年間のハイスクールライフ。
そして今日から恋人同士。
みかんジュースで乾杯しよっ。

◇26

「友達申請させてください!メッセ送ったりしないんで。ただ繋がりが欲しいだけなんで。お願いします!」
「ええけど理由は?なんかあるやろ」
「ずっと好きでした…でも彼女にして欲しいとか思ってませんから」
「逆に思えよ。俺フリーやで」
「え?」
「真っ赤な顔に一目惚れやわ。勇気のある子俺は好き」

◇27

ビルの庇で雨宿りしてたらびしょ濡れの彼が飛び込んできた。
確か1年下の野球部の子。
「わ。お互いついてないね」
「いや、逆っす。雨が上がるまで一緒にいられると思ったらラッキーっす」
「君、私の事知ってるの?」
「ダンス部の前田さんですよね。文化祭で一目惚れしました」
濡れた体が不思議に熱い。





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