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飲酒

幼い頃から腹痛持ちなのだが、ここのところそれが加速している。
無論、酒のためである。
飲んだ次の朝(つまりは毎朝)、通勤電車で耐え難い便意と格闘することになる。
幸いなことに惨事に至ったことはないが、いつかはこの便意に黒星を喫し車内を阿鼻叫喚の地獄に叩き落すことになる気がしてならない。
電車で腹をさすりながら顔を歪める男を見かけたら、車内の秩序と安寧を守るためにも、席を譲っていただきたい。

酒を飲むと物忘れも酷い。
とある日、家のポストに謎の小包が投函されていた。
届け先を間違われたかと思ったが、宛て名は私。
何物かと思い包みを開くと、本田翼さんと目が合った。写真集である。
なるほど。私は本田さんの十年来のファンであり、彼女がいかに魅力的かを周囲の人間に説き続けてきた。遂にその宣教活動がご本人の耳に入り、直々に写真集を贈ってくださったのだ。
勿論そんなはずはない。
Amazonの注文履歴には、私がその本を購入した証がはっきりと刻まれている。
はて、こんな物いつ注文したのだろう。身に覚え、なし。
またとある日、家の前にそこそこサイズの段ボールが置かれていた。
これもまた届け先を間違われたかと思ったが、例によって宛て名は私。
「此度は何奴か。」
コートだった。
以前から目を付けてはいたが、値段を理由に買い渋っていたのだ。
3万円のコートである。
これには私も驚いた。
酔った勢いとはいえ3万円もする物を買ってしまうとは何事か。
取返しのつかない買い物をしてしまう前に、もっと自制の心を持たなければ。

このように酒を飲むと大抵ロクなことがない。
多分だけど、酒って本当は毒なのだ。
子供の頃は体に悪いとして禁止されていた酒が、二十歳を超えた途端に好き放題飲んでもいいだなんて不自然ではないか。
こんなものが街中どこでもワンコインで買える日本は狂気の国である。
かと言って酒の販売を規制してほしいだなんて微塵も思わない。
むしろ逆。もっと安くしてほしい。
酒を飲む以外にやることがないから。
酒を飲むと頭がフワーっとして、幸せな感じになって、とにもかくにも気分がいい。
そしていい気持ちのままにネットショッピングのアプリを開き、爆買いの限りを尽くし、一通り楽しんだ翌朝には腹を壊すのだ。
大馬鹿者である。
今朝も腹痛だったのに一体なぜ学ばないのか。
死ぬまで学ばないのだとしたら、酒の勢いで海にでも飛び込む他にない。こんな時まで酒頼りである。
仏様が見ておられるとしたらこんな男を極楽に送ってくださる筈もない。酒瓶の馬車に詰め込んで地獄へ一直線だ。あぁ仏様。他人様に迷惑だけは掛けぬよう慎ましく飲みますのでお慈悲を。そしてどうか死後は美酒飲み放題の極楽へ。

最近深酒することが多いのでこんな記事になってしまった。
いつ急性アルコール中毒で死んでもいいように、今度は酒の勢いで墓石でも買っておこうか。

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