見出し画像

まなびやさんという塾を作った理由 その2

(この記事は約7分で読めます)


2、大手塾に勤めていた時の経験

▼生徒一人ひとりと深く接する楽しさ

私は、大学生の頃から独立開業まで、通算して10年ほど大手・中堅フランチャイズの学習塾で働いていました。
中でも特に長い期間勤めたのが、個別指導形式のA塾と、グループ指導形式のB塾でした。

特にB塾での配属先は教室の雰囲気がとても良く、いい意味で先生と生徒との距離が近かったです。
講師の控室は教室から離れているのですが、休み時間になると生徒たちは必ず講師室まで来ていろいろな話をしてくれました。
休み時間に暇を持て余している生徒は一人もいない、先生と話すのが楽しい!という雰囲気。

かと言って決して友達感覚ではなく、「先生に褒めてもらいたいから勉強も頑張る!」という空気があって、厳しく言わずとも生徒たちが自主的に学習に取り組む、とても素敵な教室でした。

当然ですが学校と比べて生徒一人あたりの先生の数が圧倒的に多く、学習指導だけに専念できる環境のため、生徒一人ひとりと深く接することの楽しさを日々感じていました。
(当時は講師という身分で、教室運営の責任を負っていなかった、というのも大きいと思います)

こんなに素敵な塾はなかなかないんじゃないか?と感じ、正社員になるべく入社試験を受けようと考えていました。

そんな折、自分の勤めていた教室が閉校することになりました。
そのため同じ塾の他教室に転属となったのですが…ここでの経験が大きな転機となりました。

▼大手塾の教室の色は、校舎責任者で決まる

「転属とは言っても同じ塾内だし、きっと素敵な教室なんだろうな。」
当時の私は軽く考えていました。
しかし、その考えは見事に打ち砕かれることになります。

新しい教室の責任者(教室長)は、えこひいきの激しいかたでした。
特に記憶に残っているのが、以下の2つの出来事です。

その1 -中2クラスの田町君(仮名)-

田町君は勉強がとても苦手で、塾の漢字テストは毎回不合格でした。
B塾のキャッチフレーズは、「その日の確認テストに合格するまで帰さない。定着するまでやるから確実に成績が伸びる!」というものです。
そのため、私は毎回田町君の再テストに付き合って遅くまで残っていました。

そんなある日、教室長が私に言いました。
「いつまでかかるの?コイツはいくらやっても無駄ですよ。」
「適当でいいです、適当で。答え見せちゃっていいですよ。」

それも田町君の目の前で、です。

その2 -中3クラスの新橋君(仮名)-

新橋君はちょっとおっとりしていて、計画や予定通りに行動するのが苦手でした。
そのため間違えて休みの日に塾に来てしまい、そのことを他のクラスメイトにからかわれていました。

そこで教室に入ってきた教室長が新橋君に言いました。
「日付を間違えるなんて頭大丈夫?塾じゃなくて頭の病院行った方がいいんじゃないの?」
教室が笑いに包まれました。

そして授業後、教室長は私にこう言いました。
「古澤先生、授業というのはメリハリが大事なんです。こうやって生徒をいじったり、工夫してやる気を盛り上げてくださいね。」

私はどうしても納得がいかず、教室長の目を盗んで田町君、新橋君とそれぞれ面談をしました。
「教室長にあんな言い方されて悔しいと思わないか?確かに今は勉強が苦手かもしれないけど、君はやればもっとできるはずだ。見返してやろうぜ!」

しかし田町君からも新橋君からも、同じ言葉が返ってきました。
「確かにちょっと悔しいけど…でも『しょうがない』んです。僕なんてこんなもんですよ。」

まるで「自分はできない奴だ」と刷り込まれてしまっているように感じました。

この体験はかなり極端かもしれませんが、大手塾の教室の色はその塾のブランドによってよりも、校舎責任者によって大きく左右されます。
そして社員として働くからには、たとえどんな上司の下で働くことになっても、折り合いをつけて教室を運営していかなければなりません。

私は次このような環境で働かなくてはならなくなった時、自分をごまかしながらやっていく自信はありませんでした。

「自分のやりたい教育をやるためには、自分が全責任をもって、自分がトップになるしかない。」
そう強く感じ、この体験は自分の塾を開業する大きなきっかけとなりました。

長くなってしまいましたが以上の2つが、私がまなびやさんという塾を作った理由です。

※誤解のないように追記しておきますが、私は大手塾を批判しているわけではありません。
B塾の初任の教室はとても素敵なところでしたし、大学生講師時代、生意気にも意見した私の話を真剣に聞いてくださったA塾の室長やグループ長、独立について一緒になって真剣に考えてくださった社員の方たちには本当に感謝しています。

大手フランチャイズの塾を検討される際はブランド名で決めず、必ず校舎責任者である先生に会い、しっかり人となりを見極めることが重要だと考えています。
(これは個人塾を検討する場合でも同じですね)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?