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セミが鳴いた

数日前セミが鳴いていた。

夏が始まった。

上京してからというもの夏らしいことは何もしていない。

夏らしいこととは、夏祭り、海、プール、花火大会、野外イベント、とか。

自宅でいつも通り、クーラーで涼んでいるだけ。

浴衣デートを妄想してみたりも。

10年前に浴衣を買って以来、その浴衣の出番はないまま。

なぜかまだクローゼットに眠っている。

そして、10年前、その浴衣で地元の花火大会に行った相手は同じ職場の後輩の女の子。

それはそれで楽しかったが、素敵な男性と浴衣を着て花火大会だの夏祭りだのに行ってみたい。

竹野内豊さんみたいな人と花火大会に行きたい。

なぜいつも素敵な男性の例えが竹野内豊さんなのかは不明。

あくまでも妄想だけ。

現実は、慣れない下駄のせいで親指と人差し指の付け根が擦れて痛くなり、夏祭りどころではないのだろう。

慣れない浴衣で身体が締め付けられて身動きがとりづらく、イライラするのだろう。

本当は焼き鳥とかお好み焼きをもりもり食べたいけど、綿菓子とかかき氷を買ってかわいらしさを演じるのだろう。

そして、この夏もその浴衣の出番はこないのだろう。


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