陽気な占い師と旅の途中の少女
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「小さい子供はよく手頃な棒を拾うって言うだろう? 実はあれは前世が勇者だった名残りなんだよ。勇者に剣はつきものだろ?」
「ふーん。 じゃあ小石とかどんぐりを集めてポケットに貯める子は?前世がリスとか?」
「いやいや。そういう子の前世は冒険者さ。冒険のついでに収集クエストをこなしてた事を魂が覚えてるのさ。ちなみにそうやって集めた草とか木の実をすりつぶしたりする子の前世は薬師だよ。」
「出鱈目をさも夢のある事かのように言うあなたの前世は、さしずめ詐欺師ってとこね?」
「馬鹿を言っちゃあいけないよ、子猫ちゃん。俺の前世は吟遊詩人さ。昔の事を語り継ぐ、さすらいの天才歌人だった。」
「どうだか。さっきカラスに水晶玉とられて木の下でぴょんぴょんしてたくせに。前世はウサギなんじゃない? あと子猫って呼ばないで!もうれっきとした大人なんだから!」
「こいつは失敬。お詫びに占ってあげよう。50Gでね。」
「この流れでお金とるの?!水晶玉取ってあげたんだからタダにしてよ…。まぁそれぐらいなら払うけどさ。」
「それはそれ、これはこれ。…さて、何を占う?」
「そんじゃ、旅の行き先を占ってよ。この先の二手のどちらに行くか迷ってるんだ。」
「了解。ちょっと視てみるぞ。 ……そうだな、右手に行くと白雪姫、左手に行くと赤ずきん。戻れば長靴を履いた猫、と出た。つまり毒殺か、オオカミに食べられるか、はたまたおうちでのんびり暮らすか、ってとこだな。」
「毒殺って何?!蛇人の国、そんな治安悪いの?! ……それでも私はお家には帰れないわ。決めた。左に行くわ。私は強いもの、オオカミなんて楽勝で倒してやるわ!」
「なるほどね。それも君の選択だ。犬人の国から無事に帰ってこれたらまたおいで。将来を占ってあげよう。旅の幸運を祈るよ。」
「ありがとう!おじさんも水晶玉をカラスに取られないように気をつけて!」
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「…行ったか。………まだ俺は20代だってのにおじさんとはな。ドワーフは老け顔なんだよな…。さて、猫の嬢ちゃんが婿を連れて帰ってくるのを楽しみに待つかね。」
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国を飛び出して旅に出た猫獣人の女の子とドワーフの占い師の会話。子猫ちゃんはこの後オオカミさんに出会って熱烈に愛されるけど、それはまた別のお話。
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