アイシャドウは“景色“

アイシャドウって、メイクものの中では一番売れているような気がします。
(実際の売上の数字はわかりませんが)少なくとも毎シーズン、いちばんの「花形」という印象。コスメマニアの人たちは、すでにたくさん持っている人も、今季のitなアイシャドウを買い集めているようです。

ここで問いたいのが「アイシャドウはなんのために塗るのか」ということ。
ある著名なメイクさんは、「目元にもともとくすみ感があるんだったら、それが“アイシャドウ“だよ」と言っていました。
「目の影」と読んで字のごとく、目元に陰影をつけるために塗るのが成り立ちなんですね。

それに対して、近年はインスタグラム等SNSの影響もあってか、「寄り」の世界で語られがち。
輝きがこう、光がこう、色がこんなトーンで・・・・という非常に微差を追求する人が増えている印象があります。
製品もそれに合わせて大進化。
普通のユーザーさん発信でプロ顔負けのメイクMAPを提案していたりして、すごいなぁ〜と思いながら見ています。

ただ、私が気になっているのは「目元に陰影を出す」「顔に立体感をもたらす(=結果美人に見える)」というのが本来の目的であるはずが、もはや塗ること、粉の色を出すことが目的になってしまっているのではないか?ということです。
塗り絵のように発色させて、グラデーションをつけて、色を見せて……となってしまうと、本来の目的から外れているように思ってしまいます。
実際、几帳面にたっぷり塗ると、日中崩れるし、他人から見ると、美人というよりは「アイシャドウをすごく塗っている人」という印象に見えるかもしれない。
どんなメイクをしても自由なのですが、読者さん(のニーズを聞くと、多くは美人と言われたそう)を見ている限り、アイシャドウを「美人に使いこなせていない」感じがして、ちょっともったいないかもと思い続けてきました。

友達でも、家族でも、身近な人できれいな人、すてきな人を思い返してみると、メイクが印象的というよりは、その人自身の佇まいや造形、雰囲気が印象的だったりしないでしょうか。
(スクリーン越し、もしくは作られた美しさはまた別の話として)普段の生活におけるリアルな美しさとは、“景色“のように、全体の調和やバランスによって「美しい」と感じるということだと思っています
そのために、自分の顔をよく分析して、骨格やパーツを見極めて、本当に必要なところに必要な色、光だけをのせるのが本当のアイシャドウ。
私は仕事で、新しい製品やメイク方法を提案する立場なので、「よく色が見えるように」「質感が伝わるように」心がけますが、実際にリアルで映えるメイクとはやっぱり違います。
いろんな色や質感の製品を試して、「自分は目がフラットだから膨張色よりは締まる色の方が良さそう」とか、「この位置に光を入れると骨格が際立っていい感じ」とか、日々が研究。
顔全体を“景色“として見た時に、アクセントとして少々効かせるくらいの向き合い方の方が、きれいな仕上がりになると思います。
首やデコルテ、からだの肌の質感とのギャップなども念頭に置いて、「姿見でメイクする」くらいで。

あと盲点としては、アイシャドウを塗る時に“アイブロウの存在を忘れている“ということはないでしょうか。
アイシャドウはまぶた!アイブロウは眉!と思っているかもしれませんが、両者は他人が見た時、アイゾーンとして一緒に眺めます。
なので、アイシャドウは眉毛の中までぼかしこんでもいいです。
逆に、アイブロウはシェーディングが付いているタイプなら、少々まぶたに侵食してきてもいい(=自然なグラデーション)ということです。
白い肌に突然強いラインの眉が生えてくる、通称「いきなり眉」の人を結構街中で見かけるのですが、実際の人間の眉毛は何もないところから突然生えてきているわけではなく、ごく細〜いうぶ毛やまばらな毛が周りにあるはず。
メイクの方向性にもよりますが、自然に仕上げたい場合はその細い毛をアイブロウのシェーディングカラーで再現すると、アイシャドウとの一体感が高まって、綺麗に仕上がったりします。
以上のような注意を払った上で、重ねて楽しむのが「今季のキャッチーなトレンドカラー」というわけです。

最後に、アイシャドウを楽しむのにおすすめしたいのが専用のツール。
私は付属のチップやブラシはほぼ使ったことがなく、メイクアップブランドが出しているアイシャドウブラシ、ブレンディングブラシ、あとは細かいところに使える細いブラシ等を長年愛用しています。
塗る時に、パレットの上をさらっと往復してそのまままぶたにのせていませんか?
最初に触れたところに大量についてしまうので、失敗の元に。
正しくは、ブラシ全体に粉をたっぷり含ませて、ティッシュペーパーや手の甲で不要なパウダーをしっかりオフしてからのせると均一に美しくつきます。
・・・といっても、メイクさんのプロの技は次元が違っていて、同じような塗り方をしているはずなのに、彼らはワンストロークで驚くほど長く、均一に塗れることに本当に驚きます。
そこまでのレベルは難しいかもしれませんが、そのエッセンスは真似して損なしです。

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