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東洋経済が江戸川大学の荒谷大輔せんせの与太話を掲載している件で

 最初に結論を三文で述べておきます。

・荒谷せんせのハートランドを作ろうというのは面白い考え方だと思う
・その主張でブロックチェーンはまったく関係ない
・こんな与太話を無検証で掲載する東洋経済はいかれている

荒谷大輔せんせのハートランドの意味

 最近割と行政学や実践的な政策立案において、荒谷せんせの言うハートランド的な議論になることは多くあります。

 例えば、EBPM(エビデンスベースド・ポリシーメイキング)は大事だと言われるようになり、プロフィット/コスト・リスク計算で上回りそうなら政策としてGOだ、みたいなことは叫ばれます。

 しかしながら、そもそもお前の言っているそのエビデンスって本当に再現性のあるものかという問いは常にあって、結局は都合の良い情報や調査、論文を切り貼りして当面やりたい政策をやるための根拠にすることが横行しているため、データについて詳しければ詳しいほど、調査実務をやればやるほど「これはインチキなのではないか」と思うことが多くなります。

 同様に、荒谷せんせが指摘する「どうすれば人々が、SDGsなどという免罪符を使わずに自らの仕事の社会的意義を直接感じられるようになるのか、どうすれば実質的な仕事を担う人々が構造的な搾取から逃れることができるのか」という命題は非常に大事で、そこから敷衍してハートランド的な国民同士の支え合いの仕組みを構築したいという話はよく出ます。

 ただ、医療政策では特に問題になるように、もうこれ以上社会保障にカネが使えず、医療も製薬も介護も品質を担保できなくなりそうで、さらに高齢者は増えるため「かかりつけ医」を設定し「地域社会」で医療や介護を回すぞといっても、その「地域」って誰の事よって話になります。ささやかながら、実家の町内会や集合住宅の管理組合に奉仕している私でさえ、地域の初めて会ったような独居の爺さんがコロナに感染したとかで訪問したり、身寄りのない方が亡くなったときの対処などをやるにつけ、地域社会での支え合いなんて奇麗ごとだなと思う面もあります。

 そういったものをハートランド構築というテーマのもとにいま一度地域のコミュニティを考え直し、働き甲斐から地域貢献まで設計していこうという荒谷せんせの考え方の基本は反対しません。

でもブロックチェーンでそれは実現せんだろ

 荒川せんせのやりたさそうなテーマは反対しないとして、問題なのはその手段、処方箋が間違っていることです。

 ブロックチェーンをたぶんちゃんと理解してないんじゃないかと思うんですよ。あれ、単なるデータ構造ですよ。政策提言とかで「ブロックチェーン✖️社会課題解決」とか言ってくる馬鹿が後を絶ちませんが、インチキですからね。

 さらには、かなり真顔で「ブロックチェーンで地域おこしをするために地域通貨を発行します」とかいう自治体からのお知らせが届くことがありますが、誰に騙されたのか分かりませんけれどもそんなことをしているからお前らの地域は過疎で経済低迷して崩壊しそうで消滅自治体として合併待ったなしになるのだと心の中で思いながらも、微笑んで「かなり考えてきましたね。素晴らしいですね」と京都人メソッドを繰り出すことになります。

 荒谷せんせもこの論を俟たず「ハートランドはブロックチェーン上のトークンを使う」と書いていて、いかれています。それはブロックチェーンが本来もつ機能、権能ではありませんし、地域経済の衰亡は価値のやり取りの手段で救えるのではなく単純に人口不足が起因ですのでここで話をしているのはタイタニック号が沈みそうなのに甲板で椅子を並べ直す作業でしかありません。

東洋経済は何を考えているの?

 テーマとして面白いよねというレベルで終わる話を、まったく意味のないソリューションとして「ブロックチェーン使います」と言っている時点で、これはヤバイと媒体として思わなかったんでしょうか。

 今回は東洋経済ですが、Web3.0といいCFTといいブロックチェーンといいメタバースといい、「こういう問題がある」「こういう希望を持ち、こんな社会にしたい」というテーマまでは良いとしても「ブロックチェーンで解決だ」で全員椅子から落ちるような記事を結構みんな平気で書いて、素人に「おお、ブロックチェーンがあればいままでの強欲資本主義と決別して新たな貨幣経済が優れた価値交換のできる社会にできるのだ」とかいうファンタジーを持たせることになるのでやめろと思います。

 しかも、これらは荒谷せんせの主張は別として、ブロックチェーンに多少でも詳しい人や、政策の現場で地方経済を見ている人を呼んできて検証すれば「これはアカンやつや」と秒速5万kmで正解に辿り着くものです。平気で与太話の言い分垂れ流すのはまずいって。

 とかなんとか書いてるのも、参院選の公示日を6月22日に控える岸田政権が、自民党の要請で「web3.0を成長戦略に」とか派手な与太話を飛ばして、さすがにこれはとみんな半笑いになってる状況があるからなんですよね。


 ちょうど平将明せんせがホワイトペーパー出してまして、概要版を見ていただければわかりますが、確かにドーンとウェブスリーや! イノベーションドリブンの経済成長や! Vやねん! とそそり立つ一方で、pdfの後ろ半分はほとんど法律的にできないことの羅列です。政策的に無理なの分かっててぶち上げてますよね。

https://www.taira-m.jp/NFT%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E6%A1%8820220330_%E6%A6%82%E8%A6%81%E7%89%88.pdf

 もうちょっと考えてほしいと思わずにはいられない昼下がりでした。

(お詫び 16:18)

 文中、荒谷大輔先生を間違えて「荒川」と表記してしまいました。江戸川大学とごっちゃになってしまった模様です、お詫びして訂正いたします。


神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント