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ビッグモーター社問題の着地

 概要については、私の有料メルマガ『人間迷路』のほうにも書きましたが、今日になって、かなりハイアングルな事件ネタに進展しそうだということで、どう処理すんのという話を簡単にしたいと思います。

 まず、今回国土交通省がようやく聞き取りに新社長が応じるビッグモーター社の返答次第で、いろいろ取り消しになります。で、まだ方針が決まっていないのは「ビッグモーター社がアカンので会社をアカンとする」のか、「これに不正な整備等に関わった資格を持つ個人個人が違反を行ったのだから、過去にさかのぼって、これらの人たちを個別に特定して資格停止などの処分をする」のかで、でかい分かれ道があります。

 ここで参考になるのは俺たちの和泉洋人大先生が活躍された、2005年に発覚した耐震偽装事件です。一級建築士の構造計算書偽装の問題で、業界横断で起きていた慣行にメスが入った問題でしたが、この際の処理ではあくまで耐震偽装に直接かかわった姉歯建築事務所とヒューザー社が可愛がりの対象として限定され、耐震偽装に関わった多くの一級建築士と耐震計算プログラムの改竄・捏造で建築されたと見られる4万棟以上の建築物については不問とされる一方、中期対応として即座に国会で議論となり最終的に建築確認申請の厳格化を行う目的で改正建築基準法等(2006年、翌07年施行)へと流れていきます。

 問題は、この国土交通省伝統のスキームで本件が処理できるのかということです。興味のある人は、当時の国会審議でも見ていただければと思うのですが、実際には、耐震偽装問題は世情的に蓋はされたものの、不動産業界においてはひそかに耐震偽装を担当した設計事務所や一級建築士の疑いリストが広まるなどして業界全体に対する不信が払拭されず、問題があると見込まれた物件についてはその後竣工した物件も中古物件もしばらくモノが動かなくなるか、安値でしか取引できなくなるという典型的なレモン市場状態へと発展してしまいました。これの影響を拭い去るまでに10年近くかかっただけでなく、それは単に業界も含めて人間が忘れているだけですので、耐震偽装されていた事実は消えません。感染症対策でコロナが5類に分類されたのでコロナに罹って平気かと言えば、人間の決め事とは無関係にコロナはあるのとほぼ同義です。

 耐震偽装については、もともとのプログラムが地震の多い日本ではそれなりに余裕を持って計算していたものなのですが、その後、東日本大震災などを経て損保業界では案の定偽装された物件ではいろいろあるぞという話も出てきていたようで、それ以上のことはきっと誰かが書くでしょう。

 で、自動車整備や中古車市場での業界大手の不正が横行していた話は、類例としてガリバー社やネクステージ社など、耐震偽装ヒューザー社とは比べ物にならない規模の会社が年間万単位で不正をしていて、単年度ですら、どのくらいの詐欺被害があったのか分からんというレベルの問題になっています。のんびり記者会見やっていましたが、本来ならば「詐欺をしていました」とビッグモーター社社長以下幹部が警察庁に自首する勢いで大変な問題になります。

 さらに、今回震源地になっている損保ジャパンとのかかわりについては、もともと産経新聞が2016年に報じた不正と自腹の慣行のころから、担当省庁には少なくない数の公益通報があったのではないかと見られています。国土交通省が本来所轄の行政において一丁目一番地である車検も含めた自動車関連行政、ひいてはモビリティ全般・スマートシティ構想などなど行政の出発点において、車検制度への信頼性そのものを揺るがす問題を過去に見逃し続けてきた怠慢を指摘される案件となりますので、耐震偽装と同じようなシャンシャンで済ませるべきものなのかは議論が分かれます。本来ならば、極めて厳しい処分を下したうえで、他省庁とも連携を取ってまずは短期的対処を、さらには将来を見越したモビリティ関連行政全般に対するブループリントを示せという話になるはずです。

 そうなると、耐震偽装問題での蓋のレベルを超えるとなると、これはもう消費者金融業界全体が既存金融行政に組み込まれるきっかけとなった武富士事件(1999年)や、事業者相手の貸金ビジネスで問題となった商工ファンド事件(2009年)あたりが下敷きになる可能性はあるのではないかと思います。そもそも、ビッグモーター社の件は、損保ジャパンと組んで新規の自賠責保険のセールスや、事故対応で保険等級が上がり多くの保険収入が得られる契約者の確保と、不正な車両整備などでの共犯関係を構築したという、事実上の完全なる利益相反をグルになって行っていた悪質事案であることを考えれば、損保業界自体は金融庁(監督局保険課)のマターであって、こっちはこっちで損保ジャパンが片棒を担いでいた話も含めてヒヤリングの対象にちゃんとしていたのかという行政面での不備は強く指摘される部分とも言えます。

 しかも、保険金水増し請求に関しては、損保ジャパンがぬけぬけと「経営陣は知りませんでした(部下が勝手にやりました)」と発表した後で、そんなわけねえだろという話が続々と出てきている状況ですので、第三者委員会以前にこちらも業務停止と一斉摘発で然るべきという状態です。

 なもんで、ここに警察庁(詐欺事案)も加わるという意味で国土交通省、金融庁と一体となって着地点を探す事件へと発展しておりますが、これは過去に遡って水増しの実態も含めて責任が追及され、武富士や商工ファンドのように創業者一家が個人的に資産を秘匿しどこかに飛ばしてしまう前に訴追も含めた証拠固めや賠償可能な資産保全を早急に進めなければならない事案ともなっています。

 これらの短期的な出口の模索を政策的に国土交通省と金融庁が主導してしかるべき着地点に進める一方、現行で、中国製EVも含めて車検制度や中古市場対応が実質的に寄生されている状況がある以上は、謎に承認されたLUUPなど実質ノーヘル無免許ミニバイク承認問題なども含めて、将来のスマートシティ構想へ向かうモビリティ政策全体がどうあるべきかというビッグピクチャーを描いて落とし込んでいく作業が必要となります。すでに関係筋は「そのような能力が国土交通省にあるのならば、ビッグモーターも含めた車検制度崩壊の問題は起きてない」とまで言っておるようです。また、これらの対応の責任者は俺たちの栗生俊一副であって、それはどう考えても相談に行ったら怒鳴られて責任を取れと言われて帰ってくるだけの案件になるわけですが、電力費の値上がりやガソリン代金補助打ち切りで国民負担が上がっているところに実は車検制度が崩壊し国内中古車販売トップ3社が全部アカンことになってましたとかいう話になれば政権が倒れることになりかねませんので、むしろこれは岸田文雄乾坤一擲起死回生の策として総理官邸主導で方針を固めて大ナタを振ってもらいたいというのが正直な気持ちです。

 正直、今回のビッグモーター社の問題は単なる独裁企業がやらかした事件ではなく、国民生活の根幹を支える「信」に関する問題なんだよ、これが失われると政権がどうとか以前に国難になりかねないよということも踏まえて関係各所が司ごとに上手く対処していっていただければと願うところです。

 そういう話を帰国直後にyoutube撮ったんですがまだアップされてないようなので建設予定地だけ掲げておきます。

 画像は『担当課が早期に問題をうっかり認めてしまうと過去にお前らずっと見逃していたのかと怒られが発生するので人事ごとに申し送りで先送りにしていたらついに爆発してしまったのを見て、その場から資産を持ってそっと立ち去ろうとしている黒幕』です。


神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント