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終わらない「漫画村」問題やポノレノハブBAN関連と、広瀬隆雄の与太話について

 いずれも当事者なので問題のない範囲で簡潔に書きますけれども、先日、海賊版サイト「漫画村」事件で、日本政府がサイトブロッキングを採用しようとして紛糾した件と絡み、ブロッキング推進派のドワンゴの川上量生さんと法的紛争にまで発展しました。

 ここで重要なのは違法コンテンツの展開にあたって「法的制限が緩く国内法で追及しづらい海外で事業化し、サーバーを設置していること」と「広告やユーザーからのクレジット課金で事業を成立させていること」、そして「ユーザーの自主的なアップロードが行われているという前提で事業者に責任はないと標榜すること」あたりが懸案となります。

 その点では、「漫画村」をはじめとする海賊版問題については、実はまだまったくと言っていいほど終わっていません。漫画だけでなく、実況を含むゲーム動画、アニメなど映画など、著作権者がコントロールできない著作物をサービスが閲覧させることで、集まってきた人向けにそこに広告を貼り、ユーザーに「プレミアムサービス」と称して小口または月額課金をし、さらにユーザー登録の情報を使って情報提供サービス業者に個人情報を売るなどの事業化がむしろ強烈に進んで、実質的に違法コンテンツを核としたコングロマリット化している現実はあると思います。

 他方、海賊版全体の推移で申し上げれば、「漫画村」こそ主宰者であった星野ロミさんの逮捕はあったものの、海賊版サイト自体は「漫画村」を凌ぐアクセス数を稼ぐサイトがいくつか出てきています。これらも広告配信を行っていることから、海賊版サイト問題に取り組む有志で刑事告訴や広告配信している広告代理店に対して警告を行うなどの活動を続けています。

 進行中のことも多々ありますので、ここでは仔細は述べません。

 海賊版サイトの問題については、いわゆる漫画や小説、映画などの一般的な著作物と並んで、成人向けコンテンツなどもその標的となってきました。漫画村問題とほぼ並行して日本のアダルトビデオや同人誌、商業誌、写真集なども海賊版からの保護の対象となるべきであるとして、横並びで実態調査を行ってきました。

 その過程で、上記で述べた「ユーザーの自主的なアップロードが行われているという前提で事業者に責任はないと標榜すること」を理由として児童ポルノを含めた人権侵害が著しいコンテンツもまた大量にこれらの海賊版サイトにアップロードされ、継続的に問題のあるコンテンツが自由に閲覧できる状況が続いていました。

 2017年以降、これらのコンテンツの流通の実態調査を進め、被害児童の保護や、性的略取を含む犯罪行為および人権侵害に対して刑事告発を行い、救済を行ってきました。

 特に、ポノレノハブについては、特徴的な事件として「誘拐された15歳の少女が男性に暴行される50本以上の児童ポルノ動画がアップロードされていた」件なども含めて、追及している団体の説明では2千本以上の違法動画が掲載されているとされます。海賊版サイトのような財産権の問題と同列に並べて論ずるべきではありませんが、我が国でも人権上の緊急避難措置として英語圏同様に問題サイトとして捉えられる必要があります。

 また、今回はポノレノハブ単体の問題とされてきましたが、実際にはYoutube、ニコニコ動画、OpenRec、Twitchなど、簡単な会員登録で動画をアップロードできるサービスや、TikTok、Instagram、17Live、ふわっち、Pocochaなどの投げ銭が可能なライブ動画サービスでも業者による児童ポルノが配信され、疑似的に少女などによる自発的な動画を標榜しているケースも報告されています。

 もちろん、事業者も配信者や閲覧者などのユーザーベース拡大のために、なるだけ簡便な登録で配信でき、気軽に閲覧できる方向に事業展開しようとするのは理解できますし、善意でビジネスをしているのに犯罪まがいの配信者が入り込んでしまうことのすべてを防ぐのはむつかしいのは当然です。

 したがって、事業的な意味や価値と、問題のあるコンテンツが広く流通させられている現実とのバランスを取る必要があります。すべては被害者を救済し再発を防ぐことと同時に、それらの犯罪行為が事業者を通じて資金源となり、収益が上がってしまうことに対して歯止めをかけることが重要なのです。

 それゆえに、ポノレノハブを含む200近い世界の動画配信サービスについては英語圏、日本語圏横断で、広告配信の停止や課金ルートになるクレジットカード決済やPayPalも含む入金ルートの遮断を行う活動が進んでいます。

 海賊版サイトに対する対策も地続きであり、通信の秘密は別として自由なインターネットに対するフリーライダーへの制裁をきちんと加え、なかなか違法なことを継続的で収益性の高い商売にするのはむつかしいという方法を取っていければ良い意味でのイタチごっこにはなるのだろうと思います。

 さて、本件ポノレノハブに関して、広瀬隆雄さんがTwitter上で与太話を書いているというので見物に行きました。

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 もちろん、一連のポルノ海賊版の問題については「世の中は課金コンテンツへ」とかいう表層的な話ではなく、違法アップロードを容認する問題サイトに対する制裁が進んだ結果です。これから続々と問題サイトに対しては対策を打っていくことになると思いますが、一方で、違法で過激で貴重な動画ほどカネになるという構造があることは事実です。

 さらに、今後はディープフェイクを駆使して、女優や著名人の顔だけでなく表情まで人工知能で構築した実在しない性的動画を生成したり、過去の児童ポルノ資産を大量に教師データとして喰わせて望みの動画を作るというような「(広瀬隆雄の言う)ビジネスモデル」が出てくる可能性も否定できません。

 問題は、実在しない動画、存在していない女性や児童が性的に略取されるコンテンツは、誰の権利も害していないとも言えるのですが、これらは取り締まられるべきなのか、という点です。

 アダルトビデオだけでなく、青年誌や電子コミックなどでも演出や表現として、女性が性的に略取され、凌辱されるコンテンツが人気を集めますが、これらは概ね演技・演出であるか、絵やCGなどの架空の存在であるから被害者がおらず性的表現として表現の自由の範囲内だから良しという話になります。

 一方で、ディープフェイクが全盛を迎えるようになると、身体に関するモデルだけ配布すれば、顔の造詣や表情は予めユーザーがダウンロードして持っているデータに嵌め換えて自分の好みの女性が出演するビデオを作成することも可能になってきます。

 さらに、一部削除された動画の中には、30代の著名な女性が人工知能によっておそらく10代中盤の顔の造詣に「若返り」させたCGを作り上げ、それらが性的略取の対象となるビデオが制作されていて、愛好家の間で回覧されてきたという経緯もあります。

 しかしながら、これらは述べた通り被害者が人権侵害からの救済を申し立てることそのものが困難であるだけでなく、今後は身体や動画のモデルデータだけが配布され、顔などの人物のモデルはユーザーが別の目的でダウンロードすることで犯罪行為であるかすら判然としない時代がやってきます。

 これらは、単純に「ビジネスモデル」の議論だけでなく、どういう線引きを国際的に行っていくべきかという、割と目の前に迫った問題でもあります。そして、回答の出しようもありません。社会的に「それは別に問題ない」「いや、規制するべきだ」という議論は出てくるんじゃないかと思いますが、漫画やアニメの延長線上で、リアルデータを使いポルノビデオを作れてしまう未来が「非実在のビデオを個人が楽しむ目的で作成したものであるから許される」となるかどうかが試金石ではないかと思っています。

 そして、どれもこれもこんな話が出るのは技術革新があったことで、問題となる動画が「できてしまう」うえに「ビジネスになる」から「やる奴が出る」のであります。なかなか深淵な問題ですが、そういう問題があるのだということだけでも覚えて帰ってってください。


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神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント