山本一郎(やまもといちろう)
宗教と政治の持ちつ持たれつ
「ロシア」「ウクライナ」に関係する内容の可能性がある記事です。
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宗教と政治の持ちつ持たれつ

山本一郎(やまもといちろう)

 いわゆる「身体検査」の項目の一つに宗教関係があります。

 なぜこれを重視するのかというといくつか経緯がありまして、良くあるのは (1) 秘書に宗教関係者を送り込まれる(安くまじめに働く人を派遣してもらえるので戦力になり、カネをごまかす心配が少ない)、(2) 確実な票田になり、選挙時にボランティア名目の運動員を融通してくれる、 (3) (政治家によっては)銀座など歓楽街で遊ぶよりも口の堅いしっかりとした女性をあてがってもらえる、という「持ちつ持たれつ」の関係が政治家と宗教団体の間で築かれやすいというのがあります。

 私は宗教方面の調査実務に詳しいわけではありませんが(矢鱈詳しい職員の皆さんが調査専従で長年宗教関係はウォッチしており、情報収集のスキルが違う)、伝え聞いたうえで確認をしていくと「関係は明示できないが有り難いと思っている」と打ち明けてくださる政治家の方も少なくなくいらっしゃいます。

 実務能力と票田と女は宗教が政治家に刺さり込むツールであると同時に、今回のように家庭連合(旧統一教会)が北朝鮮ルートも開拓してくれていたところで小泉純一郎さんの電撃的な北朝鮮訪問の問題で田中均さんや、小泉事務所と最終的に袂を別った飯島勲さんは朝鮮総連ルートではなく統一教会・文鮮明さんルートでの二元外交を進める原動力になりましたし、公安と外務を担っている人たちからすれば公然の秘密であって、事態解明が進むほどに、多くの事例が明らかになっていくことでしょう。

 いわゆる自民党裏面史が、今回はその資金源であり足腰でもあった寄付・献金を強要しどんどん韓国に送金する仕組みの「養分」であった信者の、それも宗教二世から、よりによって岸信介さんの孫にあたる安倍晋三さんを横死させてしまうという歴史的大事件の引き金になったわけですから、界隈からしてもちょっと洒落にならんぞという面はあろうかと思います。

 しかも、家庭連合の日本代表が出てきて記者会見をやり、堂々と嘘を言ってしまい、この問題に詳しい有識者や被害者のために結成した団体の弁護士から「全部嘘である」旨の対抗記者会見までやられてしまい、失点が広がったのは運の尽きとも言えます。これはもう、家庭連合が如何に終戦直後からの人間関係で深く自民党に刺さり込んでいたとしても、取り返しのつかないぐらい決定的な決別を自民党に強いる大事件となったとも言えます。

 あまりにもヤバい話なのですが、そのヤバさ故に、さすがに大手全国紙も含めて名指しせざるを得なくなり、本当の意味で秘史とも言える自民党裏面史における清和会・保守傍流の真実が明らかとなって、米ソ対立において不沈空母として反共産の最前線でデタント政策までずっと頑張ってきた我が国の置かれてきた立場が国民に広く知られることになってしまいました。

 例えば、私もお世話になっている日本財団や笹川平和財団も、もとはと言えば巣鴨プリズンから米CIA資金を得て日本の議会工作を行う拠点となってきた経緯はありますが、とはいえ、そのような日米有力者のせめぎ合いの中から高度成長、そして現代日本に繋がる政治の舞台が作られてきたという一定の意義はあります。

 しかしながら、勝共連合にまつわる話はいまでこそ対北朝鮮工作や沖縄での反基地運動への対策に軸足が移ってきたものの、実際には知られた通り反共産党活動の一環として、ソビエト連邦が日本など極東やアジアでサラミ戦術のような不安定工作に対抗するためのカウンターインテリジェンスそのものであったと言えます。

 それが、ソビエト連邦の崩壊(91年)によって平和の配当状態となると、勝共連合もそれを支えた統一教会も用済みとなり、役割を終えていたはずなのですが、小泉純一郎政権において外務省本筋のルートとは別の官邸二元外交のツールとして使われるようになると70年近い慣性の中で引き続き自民党としては上記のような理由で温存すべき便利な存在として扱われる面が出てきます。持ちつ持たれつの関係性というのはお互いがお互いのために必要とするから起きることであって、女性をあてがわれ長年の関係を築いてしまったので足抜けすることもできず、現在もなお関係性を維持するどころか旧統一教会から家庭連合へ名前を変える認可を主導した議員もいます。

 たぶん、統一教会を被害者の側から見てきた弁護士やジャーナリストが見てきた光景と、私ら仕事の一環として対中国、対朝鮮半島対策を見てきた人間が感じる光景とは、高い山の両側から頂を見るような感じで全然異なるものだったんじゃないかなあと今回特に思います。今回、被害弁護団の先生方が、特に紀藤正樹先生や山口広先生らが直接語った内容は「あれ、そうだったかな」と新鮮に思う部分もありました。

 別でも記事を書きますが、憲法20条3項の信教の自由だけでなく、政教分離の原則は創価学会が支える公明党や、幸福の科学がバックとされる政治団体幸福実現党のような具体的な公党として政治参画しているのはまだマシで、実際には選挙互助会の最たるものである自由民主党が長年の政治活動の中で関係を維持してきた統一教会の役割について公安警察もあまり真剣には取り組んでこなかった面はあります。今回奈良県警本部長でもある鬼塚友章さんは、文字通り北村滋さんの系譜でも仕事をしてきた人ではありますが、会見で、彼が「悔恨、痛恨の極み」と吐露したのは、本音であったと思うし、よりによって、何でこんなことに、という意味において本当に同情します。奈良県警が仮に警備体制に不備があり、油断をしたのか無能だったのか何等か批判に晒されるのだとしても、あまりにも、あまりにも悲劇的な偶然の結果、歴代最長宰相の大政治家の、白昼堂々の暗殺となったことは皮肉どころか呆然とするような事態です。

 また、1950年代の終戦直後・朝鮮戦争前後と2020年代の令和のいまとでは、社会における前提条件が違いすぎて、おそらく認知的不協和の嵐が吹き荒れることになるかもしれないのです。とりわけ、日本の民族主義がネットに適応し、原始的な右翼活動であるネトウヨが出現して10年が経過しているのですが、そのネトウヨが信奉した故・石原慎太郎さんこそもともと熱心な統一教会の支援を受けて日韓・日朝関係に影響を与え続けてきたことを受け入れられるとは到底思えません。

 百田尚樹さんや有本香さんなど、一定の方面にシンパシーを感じてきたネット系の民族主義系譜の人たちが安倍晋三さんの速すぎる逝去に同情を示すのは私も痛いほど理解できる一方、彼らが敵視した北朝鮮、韓国だけでなく中国、グローバリズムといった概念に対し、もっとも配慮し国内で必要以上の批判が渦巻かないよう制御してきたのもまた安倍晋三さんであったことは指摘せざるを得ません。想像以上に岸信介さん、安倍晋太郎さん、安倍晋三さんの抱えてきた血族的系譜と統一教会、勝共連合の長年の関わりが果たしてきた機能は複雑なのであって、しかもそれが基点となって暗殺されてしまったわけで、なみの知能の持ち主では整合的に解釈することはもはや困難です。

 いわば、安倍晋三さんというのは優れて現実主義的であって、一方でかくあるべきという政見も相応にしっかり持っていたうえで、血族や自民党の関係性も相応に重視した結果として、創価学会からの支持を受ける公明党との連立を維持し、反共的文脈を持つ統一教会・勝共連合と自民党の関係を緩やかに継続し、他方で終結した米ソ対立の文脈から切り離された国際政治の舞台においてはトランプ前大統領を事実上制御し、中国やロシアとの関係も相応に良好に保った、という結構な離れ技をやってのけた豪運の政治家だったと言えます。

 最後は悲運の最期を遂げるわけですが、ある面で今井尚哉さんなど信頼する他人に良きに計らえと丸投げし、安倍さん本人は義理堅く友人思いな面もある一方敵味方を露骨に分け、また、用済みと思った手駒は手早く切り捨てる割り切りもし、適切な形で大見得も切り嘘をついて局面を切り抜ける狡猾さも併せ持つ、優れた現実主義者であったのだという結論にならざるを得ません。もちろん、切り捨てられたり、政治的配慮の結果不幸な結末になる人たちも出るのでしょうが、今回の容疑者がかなりの知能の持ち主で、かつ執念深く、奈良県警のすきをついて安倍さんを弑することができてしまったというのは歴史の偶然として恐るべき結末というべきか。

 今日、安倍さんの出棺を見送る中で、やはり「これは大変なことになった」という気持ちを新たにしました。構造や経緯がややこしすぎて、そういうことなのだ、と事実関係を並べて咀嚼しようにも矛盾や対立する概念ばかりであるため、これはもうどうしようもないのだと感じます。いくら整理しても、これは馬鹿には理解できない状況であることは間違いなく、陰謀論も渦巻くことはあるでしょうし、しかしそれを明確に否定する分かりやすいストーリーもないという意味で、本当に歴史的事件だったなと思います。

 こんなもん一般の商業媒体で書き切れるもんでもありませんが、知るほどに、私も気持ちの整理がつきませんので、とりあえずnoteで放流しておきます。

 願わくば、神の御許に召された安倍晋三さんの魂に平安があらんことを。本当に、心から祈ります。


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山本一郎(やまもといちろう)

神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント

山本一郎(やまもといちろう)
作家/投資家。当アカウントは概ね個人の意見です。情報法制研究所上席研究員、お座敷置物芸全般。ゲームと読書と野球と調べものと。