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特に犯罪を犯してないけど性的衝動を持つおっさんはどこへ向かうのか(日本版DBS法への懸念)

 しょうもない方向で着地をしそうだと聞いて、みんなで首をひねっていたわけです。どうしてこうなった。

 「性犯罪歴なくても配置転換」というのは、事業者が雇っている人物(男性女性を問わず)が、子どもを対象にした性犯罪を犯す合理的な恐れがあると判断された場合には、子どもと直接かかわる仕事から外しなさいという義務を課す形で進むと思うんですけれども…。

 これ、法制局通るんでしょうか。

 特に「性犯罪者は再犯率が高い」という俗説は裏付けが乏しい一方、世間的には再犯率の高い性犯罪者が有罪判決を受けたならGPSをつけたり科学的去勢させたりする方向で議論があったりして、危ういなあと思う面があります。

 犯罪白書にもある通り、性犯罪で同一犯の人は恐喝などの事案に比べれば再犯そのものが高いとは言えない一方、詐欺や恐喝など他の犯罪とセットで行われる可能性があること、また、強制わいせつは特に初犯(前科無し)で摘発されている割合が高いことが分かります。

 一方で、強制わいせつや強制性交等については、被害者がセカンドレイプや恥辱などから犯罪被害を受けたことを名乗り出ない暗数も含まれていることを考えれば、家庭内や職場などで繰り返し性被害を受けている可能性は否定できません。その点では、詐欺や恐喝も相当数が暗数になっているはずで、性犯罪だけが突出して暗数が多いとも言いづらい面があります。推測はいくらでもできるけど、結局のところ、確からしさで言えば検挙人員の数と割合で見ていくしか合理的な政策判断はできないのではないかと思います。

レイプ犯の再犯はイメージと比べてそれなりに低いのではないでしょうか

 で、報道の通り「犯罪を犯しているわけではないが子どもの前に出してはいけない人」を、問題とされる事業者はどう判断し対策を打つのかという難題が立ちはだかります。

 ここにはみっつ問題があって、多分どれも解決しないと思うんですが、そもそもそれを選別する方法は何よという手法上の問題、配置転換を求めると言われても少人数で対応している地方の零細学習塾や学童などは成り立たない可能性が高い問題、最後に特に犯罪を犯していない人が就業の機会を奪われるについては人権上・憲法上の問題があるという話になります。

 日頃あれだけ個人情報が大事だとか犯罪者や容疑者の人権も守られなければならないと言っている人たちが、性犯罪対応においてはなぜか具体的な犯罪を犯したわけでもないおっさんを教育の現場から排除することを主張しており、それはダブルスタンダードなのではないかと思うんですが。

 また、記事でも書かれてましたが「子どもの安全」に事業者がより配慮する必要があるのはまあ分かるとして、「犯罪歴がなくても、子どもからの訴えなどで『性加害の恐れがある』と判断された人」ってのは割と大変なことだと思うんですよ。もちろん、子どもがそういうことを言ってきた、保護者を通じて抗議や通報があったということであれば、それに対して事業者が対応しなさいというのは良いと思うのですが、問題はいま話し合っているのは日本版DBSのことであり、「国が構築するデータベースを通じ、雇用主が就職希望者や現職者の性犯罪歴を確認する仕組み」と規定されています。

 つまり、その学習塾なのか学童なのか、犯罪行為とは言えない挙動で子どもや保護者からクレームが入ったら、その人は「疑わしい人」となり最悪DBSに登録されて20年間教育現場の就業機会を失うことになりかねません。いわば司法を経ずに他人を陥れることが容易に可能な冤罪製造装置みたいな状態になります。

 さらに、何らかの理由で間違ってDBSに掲載された場合に、その人は救済されるのがむつかしい、あるいは、対応が非常に遅れる可能性もあります。

 さすがにこの政府案のまま法制局も大納得して立法過程に突入するなんてことは無いと信じたいです。むしろ、必要とされるのは「単に疑わしいというだけの人を性犯罪者がひしめくDBSに堂々登録できて就業機会を奪う仕組み」ではなく、子どもへの性犯罪に対して事業者が適切に管理・監視できる方法であるとも思うので、これらの議論が(良く分からない有識者がやった放言も含めて)、性犯罪者やその予備軍を摘まみ出して子どもを安心安全に育める環境にしたいという枠組みはどうにかせえと思います。

 子を持つ親として安心して預けられる環境を作りたいという気持ちはよく分かります。他方で、具体的に性犯罪を犯して有罪判決を受けた人ならまだともかく、あいつ挙動が怪しいからという訴え出でリストに長期間載せられてしまう仕組みは雑過ぎて厳しいのではないかと考える次第です。

 付言しますが、日本版DBSについて問題だなあと思うのは、NPO/NGOや宗教団体、特にこども食堂などの事業運営母体が除外されています。これ、なんで除外されたんでしょうかね。言い方は悪いですが、無休か極めて薄給のボランティアでもいいから子どもと関わりたいって中年男性に性犯罪者予備軍が一番多いことぐらい、みんな分かってることなんじゃないですか。

 学校や学習塾、プールなどのスポーツ施設で働ける人は、給料をもらって子どもに教えたり対応したりしているわけですから、もちろん子どもに対する倫理観をしっかり持っているべきだというのは当然です。それはそれとしても、人間、どこで子どもと関わるかは分かりません。町内会やマンション管理組合でもやっていれば、年に何度かは、そういう問題施設でまたあいつがやりおったってのは見聞きするわけですから、本当に日本版DBSを意味のあるものとしたいのならば、ちゃんと性犯罪で有罪判決を受けた犯罪者だけを相手にしたらどうかと思うんですが。

 画像はAIが考えた『子ども相手の商売は志のあるやつかただのロリコンか判別がつかずむつかしいので、やらかしたことベース以外で判断するしかないよねと考える図』です。

神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント