見出し画像

号泣しながら寝かしつけをした夜

突然だが、私は実母とソリが合わない。仲良くやっている時期もあった。実母の財布を当てにして色んなところへ2人で遊びに行った。持病の通院の帰りにはマールブランシュでケーキやゼリーを買って帰ったし、コナンの最新刊は実母と回し読みしていた。今も実母の影響で好きになったドリカム のワンダーランドには2人でいく。でも、親子ってのはとくに母娘の関係ってのは難しくて、時には私が、時には母が何かに感情的に反応してうまくいかない。お互いにうまく関われない。今は住まいがかなり離れたので、距離を置いてお互いに好き勝手にしている。実父が私達をつないでいる。

初めて自分の小遣いで母の誕生日プレゼントを買ったのを覚えている。10歳くらいだったと思う。駅前の小さな文具屋で「ワープロ印刷ができる」と書かれたレターセットを買った。実母はその時SLALAをかって(懐かしいでしょ?)ブラインドタッチ練習(懐かしいでしょ?②)に勤しんでいた。インクリボン(懐か…ry)がすぐなくなるし高いから感熱紙を使おうかと奮闘していた頃だ。唐突に誕生日に渡したら実母はびっくりしすぎて反応できない感じだった。でも、あの溢れんばかりに喜んでもらっている感じはよくよく伝わった。幼いながら、嬉しかった。

実母はちょっと嫌味な性格だった。それに私の両親は私を決して可愛いと言わなかった。むしろおしゃれをしようとすると茶化して笑った。それは私のこの歪んだ性格に大いに影響してると思う。更に私は反抗期が長かった。反抗的な私の態度に実母はそれはそれは苛立ちを募らせていたようだ。私も苛立ちを募らせてたけど。実母は親の過干渉に悩んだ少女時代を過ごした人だった。我が子には干渉すまいと決めていたのだろう。その結果、関わり方が分からず放置したり、抑えきれずに最後の最後でとんでもない干渉をしたりしては私に嫌われた。そしてそんな小さな出来事や大きな出来事を積み重ねながら、私たち母娘の関係は表面上は繕ってはいたが、蓋をあければどこか歪なものになっていた。

そんな母娘関係がよろしくない私が子育てを始めた。ここでもやっぱり実母を頼ってはうまくいかない経験を繰り返す。そして娘が生まれた時、決定的にダメになった。産後ガルガル期の私はとにかく怒りを抑えられない。私は実母に切れまくり、昔の嫌な思い出がそのたびに蘇った。些細な事ばかり。その些細な事が全く許せなかった。そして娘出産後は交流が激減した。

今年の夏頃、いつもどおりのワンオペを終え、寝かしつけをしている時に、「娘がとても可愛い」と感じた。正直、それまで私は息子の方が可愛いと感じていたところがあった。でも突然、娘がすごく愛しくなった。仕事もワンオペも辛かった。この一年ずっと1人になりたい、なにもしたくない、1か月くらいどこかへ消えてしまいたいと思ってたヤバい時期だった。この殺伐としたなかで私は確かに娘を「愛しい」と思った。その事に自分でとてもびっくりした。私は子どもを、可愛いと思っている。可愛い、愛しいって気持ちは私の中にあったのだ。そして、私がこの気持ちを持っているのは、かつて私が「可愛い」「愛しい」と思ってもらっていたからだと。私は大事にされていたのだと、だから私は自分の子どもを大事にしようと思えるのだと。

あんなにソリが合わない実母も、私を大事に思っていたのかと思うと涙が溢れた。なのに私には今こんなに嫌われて、勝手な話だけどそれがとても可哀想だった。どんどん溢れて、止まらない。声を殺しながら泣いて、泣きながら娘の背中をトントンした。娘は怪訝な顔をして「泣いてるの?痛いの?」ときいた。「あなたが大好きよって涙がでたの。痛くないよ」と答えた。娘は全然意味がわからない感じだったけど、すぐに眠さに押し負けて寝ていた。娘がしっかり寝入ったら、私は自分を制御できなくなっていた。嗚咽が止まらず、ただただ泣き続けた。

帰宅した夫はとても驚いてスーツのまま寝室にやってきた。私は次々に流れる涙も鼻水も拭き拭きゆっくり事情を話した。私の話をきいて夫は「そうだよ。大事にされてるよ。大事なんだよ」といった。その後に続く言葉はやや興醒めの自分語りだったので割愛しておく。その時の私自身も無視して自分の感傷に浸ってた。一番大事なところはちゃんと決めてくる。だけど、集中力が続かなくて、自分の事ばかりになってしまうのがうちの夫だ。もう15年近くの付き合いになるとそういうのもやっと慣れてきた。そういう時はほっておけばいいのだ。

こんな歳になって、やっと自分が大事に育てられたってことに気づいた。多分、うちの子どもたちもそうそう簡単に自分が大事された存在だなんて解らないだろう。二分の一成人式なんて表面上でやらせたって解らないものは解らない。この夏私が経験したことはそんな押しつけられた儀式なんかで感じられるものか。解らないもんだって思っとかないといけないなんて、親ってなんて辛いんだ。でも、とにかく幸せで、とにかく楽しく生きてほしい。辛い事もある人生だけど、楽しいことが少しでも多いといい。そう祈らずにいられない。

そして、実母にも。まだまだ幸せが感じられるといい。私はまだ全然素直になれないし、距離はあるけど、いまやっと、実母の幸せを願っている。

子ども服やポケモン・プリキュアの食玩を買います。あと、ねるねるねるね。