声
父さんが死んだ日
少年は真夜中の裏庭に
UFOが来るのを見た
UFOの声は言った
父さんはあの山の
ダムの底に沈んだ
家に暮らしていると
その日から少年は
部屋中に
クレヨンで描いた
父さんとダムとUFOを
ぶら下げた
雪の降る明け方に
少年は
自転車を走らせ
土手を滑り川に落ちた
夜に向かって叫ぶ
星を震わせる
こえにならない声で
今ここにいると
歌う 歌うよ
ぼくはここにいるよ
ぼくはここにいるよ
水の中はキラキラと
いつか見た
星空のようで
父さんの声が
聞こえた気がした
大きな手に
引き上げられ
遠くで声が聞こえる
冷たい雪はほほに落ちる
少年は泣いた
だれも知らない声がする
だれにも見えないものがある
何処にも行けない
ものたちの空が
今ひとつにつながって
夜に向かって叫ぶ
星を震わせる
声にならない声で
今ここにいると
歌う 歌うよ
ぼくはここにいるよ
ぼくはここにいるよ
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