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万能感という愛しくもさみしい存在をリスペクトしたセラピー

私は最強!

窮地に陥ったときに、自分を鼓舞して万能感を創り出し、その場を乗り切ろうとする方法がとられることがあります。

うまく乗り切れた場合、その万能感は肯定され、強化されることになります。

誰も助けてくれない環境だったが、自分を信じて独学で東大に入った。
貧しい環境にいたが、自分を信じて一人事業を起こし富を築いた。
誰も助けてくれない中で、自分を信じて腕一本で職人になった。

このようなストーリーでは、一人で事態を打開したという結果が伴うため、周囲から一目置かれ、万能感は強化されます。

いわゆる根拠のない自信というやつです。
「昔から根拠のない自信があったんだよね~」という場合、それは自ら創り出した万能感かもしれません。

東大や巨万の富でなくても、私達は、一人で何とかしないとならない場面で、自分を奮い立たせて、私は最強!と暗示をかけて乗り切ることがあります。

その万能感の背景には、誰も助けてくれないという悲しみがあります。しかしその悲しみに浸っていては、乗り越えてこられなかった。

悲しみにまみれて動けなくなるのをなんとか防ごうとして創り出した万能感が、自分を守ってくれた。

万能感にあふれた、キラキラ、ギラギラとした輝く世界を維持するために、悲しみや弱さは後ろにと追いやられてしまいます。

万能感によって手に入れた、成功の世界。
そこでは多くの人があなたを賞賛し、あなたを求めます。

しかし、あなたは人とつながることが難しく感じるでしょう。
なぜなら人とつながるということは、悲しみや苛立ちや不安などの「たいくつな」気持ちも生じるからです。

たいくつな感情が生まれると、こころの傷がうずいてしまう。
だから、たいくつな相手とは距離を取る。
自分を賞賛する気持ちの良い相手とだけ付き合う。

成功を手に入れたはずなのに、こころはどこか満たされない。

このように万能感は、成功の素でもあると同時に、悲しさや虚しさの隠れ蓑にもなっています。

万能感は、いとしくもかなしくもある存在です。

万能感に覆われた状態を手放していき、悲しみを受け止め、ちゃんと人と気持ちを通じ合わせていく。心から安心して、生きていく。そういう生き方もあります。

そのためにセラピーという営みはお役に立てる可能性があります。

万能感の存在意義、その力を十分リスペクトしながらも、それによって見えなくなった悲しみもしっかり味わう。そのような目配せをしながら進めていければと思います。

見るからに万能感に満ち溢れたタイプの方もいれば、逆に控えめだけど万能感が心を覆っているタイプの人もいます。

どちらも人とつながることに困難を抱えています。抜け出すには、他者と共に進めていく必要があります。

自信があるような、ないような、自己評価が安定せず、どうにも生きづらい、何とかしたいというお気持ちがありましたら、ぜひご連絡ください。


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