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野村直子|デザートのひと口目

 私がホイップクリームを好むのには、理由があるはずです。
 その色はいつだって向こう側を見せない100%の不透明な白であること、無定型な形であることが魅力なのに必ず綺麗な曲面をしていること。

 それは、秘密を決して口外しない、信頼のおける親友の印象と共通しています。
 一枚の絵に味があるとしたら、どんな味であるか……子供の頃、絵画を目にするたびに想像していました。

 今まさにお茶が注がれようとしている、野村直子「菫色のお客日」は、心がほどける瞬間、デザートのひと口目の予感に満ちています。

 このテーブルを囲む一員になって、まだ誰にも言ったことのないあの話についてさりげなく話題にすることも、フルーツの蠱惑的な香りに誘われた蝶になって、何も語らず会話を聞くこともできそうです。

 「白猫ブルーベリークリーム添え」の中には、菫色の瞳に呼び寄せられたように、同じ色のブルーベリーとリボンが招かれています。
 その猫の姿そのものがひとつのデザートであるのなら、どうか気まぐれに背中を向けたりせずにいて欲しいものです。

 世界中どんな場所であっても、お菓子の甘さには、野蛮で無慈悲な精神は宿り得ません。
 音楽は世界共通語、などという言い回しがあるのだから、「甘味は幸福を語るための世界言語である」と言うことも、許されるのです。

作家名|野村直子
作品名|菫色のお客日

アクリルガッシュ
作品サイズ|12.5cm×17.5cm
額込みサイズ|28.7cm×23.4cm
制作年|2024年(新作)

作家名|野村直子
作品名|白猫ブルーベリークリーム添え

アクリルガッシュ・紙
作品サイズ|直径7cm
額込みサイズ|16cm×9.5cm
制作年|2024年(新作)
税込価格|16,500

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