菫色の実験室vol.5|佐分利史子|夏の夜の惚れ薬『恋の三色スミレ』
今日は、菫色の時間が訪れる少し前に実験室の玄関ホールに到着しました。不思議なことに、いつもはそこはかとなく張り詰めている空気が、ほんの少し緩んでいます。居住まいを正す菫色が訪れるまで、意外にも安穏としたひとときが流れているようです。
スミレの香りに誘われて、長い廊下を歩きはじめました。
ここを訪れる時は決まって、白衣に合わせた菫色と白のコーレスポンデント・シューズを履いています。カンガルーのしなやかな革が足先をきっちり包み、靴底もすべらかにスミレの群生に触れていき