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[五等分の花嫁二次創作]五つ子と数学する話:因数分解編① #ごとます

夢を見ていた。あいつらと出会った、あの日の夢をーーー。 



「…えすーぎさーん!うーえすーぎさーん!」
「…。あっ、寝ちまってたか。すまん」
ここは放課後の図書館。俺、上杉風太郎は同級生の五つ子の姉妹の家庭教師をしている。その一環として、毎日のように放課後に集まって勉強会をしている。
「どうした、四葉」
四葉は、五つ子の四女。悪目立ちリボンを頭に付けている、元気バカだ。
「どうしたって、勉強を教えてほしいんです。勉強会なんだから、当たり前じゃないですか」
「…っ、それもそうだな。どうしたんだ?」
「数学が分かりません!」
「ずいぶんと大きく出たな。何かの問題が分からないのか?」
「数学の先生からこんな課題を出されたのですが、全く分からなくて」
「どれどれ、ちょっと見せてみろ」


$$
問題\\次の式を因数分解せよ。\\a^6 - b^6
$$


「この問題なのですが…」
「この問題…因数分解!?一年の内容だろ。まあ、お前にはぴったりだがな」
「先生が、一年生の数学から復習しろって」
「先生もよく分かってるじゃないか。で、どこが分からないんだ?」
「それはですね、全部です!」
「は?」
「全然分かりません!こう見えて私も、上杉さんが思うほどおバカじゃないので、一年生の教科書を引っ張り出して公式を調べてみたんです。でも、大体、$${a}$$とか$${b}$$とか書いてませんし、この『6』の公式なんてありません!この公式はちょっと似ているかなと思いましたが…『3』なんです!」

$$
因数分解の公式\\x^3-y^3 = (x-y)(x^2+xy+y^2)\\x^3+y^3 = (x+y)(x^2-xy+y^2)
$$

「ともかく、この教科書は欠陥です!」
「『6』の公式…?ああ、6乗のことか。教科書を疑う前に自分の頭を疑え!公式はちゃんと使えるぞ。四葉、中学の因数分解のこんな公式を覚えているか?」

$$
a^2-b^2 = (a+b)(a-b)
$$

「もちろんです!こう見えて私、中学時代は少しは勉強してたんですから」
「ほんとかよ。でも結局落第したんじゃないか。それに、大事なのは昔じゃなくて今だろ」
「えへへ、そうですね…。この式、なんだか元の式となんだか似てますが、『6』じゃなくて『2』ですよ?」
「そうだ。でも、使える。よく見るんだ。$${a^3}$$を$${A}$$、$${b^3}$$を$${B}$$とおくとどうなる?」
「$${a^3}$$を$${A}$$とおく…?上杉さん。私、よく分かりません!大体、$${A}$$なんてどこからやってきたんですか?」
「(む…。なかなか手ごわいな)」
「あ!今絶対上杉さん私のことをバカにしました!まあ、おバカなのは本当ですけど」
「ああ、そうだな。でも、数学で別の文字に置き換えて考えるのは基本中の基本だ。丁寧に解説していくぞ。四葉、いけるか?」
「はい!」
「まず、これが成り立つのは分かるか?」

$$
a^6 - b^6 = (a^3)^2 - (b^3)^2
$$

「…わ、分かります!」
「全然分かってない顔をしてるぞ。いいか?$${a^3}$$の二乗だから、$${a^3 \times a^3 = a^6}$$だ。」
「むむむ…」
「『指数法則』の復習をやっておいたほうがよさそうだな。これは数学の基本だ。宿題を出すから、一年の教科書を読みながらやっておくんだな」
「宿題をやりに来たはずなのに、宿題が増えた…!上杉さんの鬼!」
「何とでも言え!俺の好きにやらせてもらうぞ。ここで、$${a^3}$$というのを、$${A}$$という別の文字に置き換えるんだ。$${b^3}$$に対しても同様だ。そのまま置き換えるんだ。そうすると、こうなるだろ?」

$$
A=a^3, B=b^3とおくと、\\a^6 - b^6 = A^2 - B^2
$$

「なるほどー。なんだか、さっきの公式」

$$
a^2-b^2 = (a+b)(a-b)
$$

「と似ていますね?」
「そうだ。さっきお前は$${x}$$とか$${y}$$の式を見て$${a}$$とか$${b}$$がない!なんて言っていたが、公式に$${x}$$だとか$${a}$$だとかは関係ないんだ。この公式で、さっきと同じような感じで、$${a}$$を$${A}$$、$${b}$$を$${B}$$に置き換えて式をよく見るんだ。」
「置き換える…?こういうことでしょうか」

$$
a^2-b^2 = (A+B)(A-B)
$$

「うーん、惜しい!左辺、左側も$${A}$$と$${B}$$に置き換えるんだ。ここまでできればきっとできるはずだ」
「任せてください!えーっとこうかな」

$$
A^2 - B^2 = (A+B)(A-B)
$$

「あああっ!これ、さっき見ました!」
「そうだ。これをさっきの問題の式に使おう」
「はい!」

$$
A=a^3, B=b^3とおくと、\\a^6 - b^6 = A^2 - B^2 = (A+B)(A-B)
$$

「できました!やった」
「まだ早いぞ。$${A}$$とか$${B}$$とかは、あくまで俺らが勝手に導入したものだ。もとは$${a, b}$$の式だったんだから、元に戻すぞ。」

$$
A=a^3, B=b^3とおくと、\\a^6 - b^6 = A^2 - B^2 = (A+B)(A-B)\\ここで、A=a^3, B=b^3だったから、\\  (A+B)(A-B) = (a^3+b^3)(a^3-b^3)\\つまり、\\a^6-b^6 = (a^3+b^3)(a^3-b^3)
$$

「これで、$${a, b}$$の式で書けた。だが、もう一段階必要だ。最初に四葉が言っていた、因数分解の公式」

$$
因数分解の公式\\x^3-y^3 = (x-y)(x^2+xy+y^2)\\x^3+y^3 = (x+y)(x^2-xy+y^2)
$$

「があるだろ、これもさっきと同じだ。$${x,y}$$を$${a,b}$$に置き換えるんだ。今回も、左右どっちも置き換えるんだぞ。いけるか?」
「今度こそできます!」

$$
a^3-b^3 = (a-b)(a^2+ab+b^2)\\a^3+b^3 = (a+b)(a^2-ab+b^2)
$$

「よし。よくできたな。次はこれをさっきの式に代入するんだ」
「代入…?と言いますと…?」
「今の公式の左辺を、右辺に置き換えるんだ。代入できる形だろ?まとめると、こうだ」

$$
a^6-b^6 = (a^3+b^3)\cdot(a^3-b^3)\\=(a+b)(a^2-ab+b^2)\cdot (a-b)(a^2+ab+b^2) \\ = (a+b)(a^2-ab+b^2)(a-b)(a^2+ab+b^2)\\つまり、\\a^6-b^6 = (a+b)(a^2-ab+b^2)(a-b)(a^2+ab+b^2) 
$$

「これで因数分解できたな!問題が解けたぞ。どうだ、分かったか?」
「うーん、確かに…。ありがとうございます。でも、上杉さんって、ワガママです!」
「は?」
…は?

次回に続く


Special Thanks(参考文献)

  • 春場ねぎ「五等分の花嫁」

  • きさらぎひろし「やさしい高校数学(数学I・A)改訂版」

  • 結城浩「数学ガール」シリーズ


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