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私製:社用でちょっとだけ着ぐるみを着ることになった人向けの覚書

着ぐるみ運用についての心得的なあれこれです。
※このテキストは「会社命令でちょっとだけ(半日~1日)着ぐるみデビューすることになった人」を想定しています。ガチで遊園地などのショーに出る、ビラ・ティッシュ配り等のバイト、慰問/幼稚園訪問などの業務に当たる場合は専門家に聞いてください。


◆そもそも貴方は着ぐるみ業務を行える人か
 体格的にダメな人、というのは残念ながらあります。
身長の高すぎる人、横幅のありすぎる人、どちらもNGです。どちらかというと身長の制約の方が深刻ですが、ぬいぐるみみたいな体型だからといって着ぐるみ業務に適しているわけではありません。そういう恵まれた体格の人はアテンド役に回ることをお勧めします。

◆持参するもの
 替えの下着orTシャツ(多めに。4~5枚程度あると安心です)
 ※用心のためにパンツの替えもあった方がいいかもしれません。めちゃめちゃ汗をかきます
 ジャージズボン(着ぐるみに入る時、ジーンズはやめた方がいいです)
 タオル、手ぬぐい(頭に巻く用、汗を拭く用。これも何枚か)

◆着付け
 着ぐるみにも世代ごとにバリエーションがありますが、基本的に1人で着るのは無理です。胴体を構成するモナカ(ボリュームを確保するための内綿)と外側(人目に触れる毛皮部分)は一体化されている事が多いです。胴体、靴、アタマ、手袋の順に装着します。手袋を先にはめてしまうとアタマの内側のあご紐が締められません。

◆身を守るための諸注意
 連続30分以上の稼働は危険とされています。
 つい気持ちがハイになって張り切ってしまいがちですが後で超しんどいので時間には気を付けましょう。

 足元は見えません。アテンド(歩行介助)役の人を必ず用意しましょう。

 手元も見えません。表彰式などで何かを壇上で誰かに渡す場合は事前にどれくらいの大きさのものを渡されるかを見ておきましょう。アテンド役の人に耳元でささやいてもらう、持ちやすい場所に差し出してもらう、というサポートは必須です。

 横も見えません。隣に誰がいるか分からないので、ほかの演者さんが隣で話しかけてきた場合は併せて肩をトントンしてもらうなどしてもらわないと「振り向く」という動作ができません。事前に打ち合わせができる場合は、その辺の呼吸合わせについてもすり合わせておくとよいです。

 アタマをかぶったときには忘れずにあご紐を締めましょう。着ぐるみのアタマはだいたいでかいので、振り返る・首をかしげる・うなづくという動作のたびに重心がぶれます。あご紐で固定されていない状態だとぐらつく頭部を首だけで支えるような形になり、最悪アタマがすっぽ抜けたりしかねません。

 ※なお「着ぐるみの頭部を横からひっぱたくと中の人の頸部がねじ切られるほどの衝撃になる」という趣旨の都市伝説がネットで流れていますが、真偽のほどは実際やってみれば分かります。
 
 想像以上に、想像以上に暑いです。
 現場で水が無かったら用意してもらいましょう。
 頭に手ぬぐいかタオルを巻くと、汗が目に入るのを多少軽減できます
 (当たり前ですが着ぐるみ運用中は汗を拭けません)
 
 毎回クリーニングに出しているので、言われるほど中は臭くない…はずです。
外れを引いた時は諦めましょう。鼻はすぐバカになります。

 鼻といえば、よくネタとして「鼻の頭が痒くなった時はどうするんだ」というのがありますが、パフォーマンス中は鼻のかゆみとか気にする余裕は無くなるので事前に気に病むだけ無駄です。
 
◆余裕があったら心がける事
 かわいい動き:両腕をオーバーアクション気味に動かすといいです。
 「あごの下に両手を当てる」仕草は傍から見てかわいいし頭を支えられるので楽です。
 また素立ち(何もアクションしないでふつうに突っ立ってる状態)だと
 「ああ、中の人が疲れてるんだな」とすぐばれるので常にステップを踏んだり
 無意味にモジモジしたり、とにかく何かし続け、体を動かし続けましょう。

 「常に動き続けること」ちょう重要です。「中の人」感が外に漏れたら終わりだと思ってください。

 着ているキャラごとに「期待される動き」というものがある筈なので、事前にどんなポージングをすればウケるかイメージしておきましょう。
 舞台に上がる場合は、舞台に出た瞬間から客席へのアピールを心がけましょう。

 
 (参考:着ぐるみレンタル業者のレクチャー動画です)
 https://www.youtube.com/watch?v=OwOfS0mxxTc
 https://www.youtube.com/watch?v=bo1pC3xMxEE
 https://www.youtube.com/watch?v=7wKhY0L0gLk
 
 「人間の目線と着ぐるみ頭部の目の位置は違う」ので、更に余裕があったら
 「着ぐるみの目が相手を見ている」ような角度をつけると良い…らしいです。
 
◆その他
 お子様にはウケます。あと女性ウケも良いです。男は「ケッ、どうせ中に入ってるのはオッサンだろ」な態度をとることが多いです。ああそうだよ、分かってんならスルーしてくれるかい?
 ただしお子様は手加減なしでパンチやキックを繰り出してくることもあります。ガキ容赦なし。こちらの表情は伝わりませんので大袈裟に痛い痛いゼスチャーをしてアピールしましょう。

 着脱シーンを関係者以外の誰にも見られないよう、最大限の注意を払いましょう。以前「く○モン」のパフォーマンスを間近で見る機会がありましたが、奴はワゴン車の後部ドアから登場するその瞬間からく○モンでした。プロ根性を感じました。例え社命でちょっとだけやらされてるのだとしても、あの精神だけは真似ましょう。

 あなたの一挙一動を、誰かが見ています。それで救われる人も、もしかしたらいるかもしれません。
 健闘を祈ります。

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