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透析患者さんが教えてくれた「逃げない」生き方。

③平成12年・総合病院169床・千葉県(その9)


みなさんにとって病院ってどういう場所でしょうか?

風邪をひいた時に診てもらいにいく。

怪我した時に運ばれる。

盲腸で入院する。

家族が入院したからお見舞いにいく。

そんな場所でしょうか?

働く看護師からみた病院はどういう場所でしょうか?

外来なら、毎日どこかしら具合の悪い人が集まってくるでしょう。

点滴や注射を受けたり、治療を続ける為に継続的に外来に来る人もいます。

病棟なら、病気や怪我をしたら入院してきて、手術や点滴などの治療をしてよくなったら退院していきますよね。

元気になったらお別れ・・・・それが患者さんと看護師の関係性です。


透析は違います。

以前少し説明した通り、透析は「延命治療」です。

透析するのを止めたら、確実に、数日後には亡くなってしまいます。命を紡ぐ為の治療なのです。

通常の外来や病棟なら、元気になれば、治療が終わればサヨウナラです。そして、患者さんの意思で病院に来なくなるということも多々あります。

けれど、透析患者さんは透析をしないと死んでしまうので、文字通り「死ぬまで」透析を受ける為に通院するのです。

その方の状況にもよりますが、大抵は週3回通院します。一週間のうち、3日。

これを一生、続けるんです。

雨の日も風の日も雪の日も、元気な時も悲しい時も、です。

となりのベットの人と喧嘩をしても、むかつく医師が居ても、看護師が注射が下手でも、です。

透析患者さんが透析から逃げる事は、「死」を意味します。

そんな患者さんたちとの出会いは、今まで逃げの人生を送ってきた私の人生を変えるひとつめのきっかけとなったのでした。

私の逃げの人生とは・・・まずは登校拒否。これは学校からの逃げ、です。両親ともうまくいっていませんでした。これは家族関係からの逃げ。大阪で勤めた最初の病院も嫌だったから辞めるという逃げ。

そして、何よりも自分から逃げていました。

自分が何を考え、何を求め、どう生きたいと思っているのか・・・そんな、自分を知る事からも逃げていたのです。

私は、死ぬくらいツライ出来事なら、逃げた方がいいと思っています。

例えば、いじめを苦に自殺する。これは、学校に行かなければ死ななくてもいいはず。全力でいじめや学校から逃げるた方がいい。

でも、いつか逃げた先で立ち止まって、向き合う時期がやってきます。

それをどんどん先送りにするのも、そのタイミングで向き合ってみるのも、本人次第。姿を変え形を変え、逃げた出来事は巡ってきます。自分のタイミングで向き合えばいいだけのことなのです。

辛い事、嫌な事から逃げる事で自分を守ってきた私は、透析に通い続ける患者さんたちとの出会いによって、「逃げずに踏みとどまる」という、生き方をするようになったのでした。


※透析病院の選び方

週に3日、一生通い続ける場所だから・・・・・と、「通いやすい病院」「送迎してくれる病院」「自宅からいちばん近い病院」を選択する人がほとんどです。

この考え方には落とし穴があります。

ずっと通院するから、通院しやすい場所に、は至極全うな考え方。

でも、ぜひ、距離ではなく、「自分と相性がいい病院」を探して欲しいです。

透析クリニックも病院も、沢山あります。

今生活している場所には、1つ2つしかないかもしれません。

でも、日本中には沢山あります。

ずっと通い続ける病院だからこそ、「ここなら安心して透析を受けられる。ここの先生なら、看護師さんなら、信用出来る」そんな場所を見つけて欲しいです。

本当に色んな病院があります。色んな医師がいます、色んな看護師がいます・・・

透析業界でも有名な良い病院には、その病院に通えるように近くに引っ越す人もいるくらいです。

先生の顔色をみながら、言いたい事もいえず、質問にも答えてもらえないような環境はものすごいストレスです。

穿刺が下手なスタッフしかいなかったら、大事な血管が壊れやすくなってしまいます。

患者さんには選ぶ権利があります。

けれど、その権利と向き合わないままでは、文句を言ったり愚痴を言ったりして終わってしまいますから・・・・



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