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紫光は星空の彼方に

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カルトの話です。現在、有料ノートの眠り姫の少しあとの話になります。
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2014年11月の記事一覧

紫光は星空の彼方に 二章5話

紫光は星空の彼方に 二章5話

 暫く、グレモリーが消えていった場所を見つめていたカルトは、長い溜息を一つつくと、ポリポリと頭を掻きながらこちらへ来た。
「どう?何か分かったかしら?」
 面白そうに口を綻ばせたセリスが問いかける。博識強記、そして慧眼の士であるセリスは、グレモリーの答えともヒントとも取れる言葉だけで全てを理解したようだった。
「う~ん………、近く、近くね~」
 カルトは紫の頭をポンポンと叩く。
「ちょっとぉ~!あ

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紫光は星空の彼方に 二章4話

紫光は星空の彼方に 二章4話

「………それって、本当なんですか?」
 八畳一間のアパート。畳張りの部屋は小綺麗に整理されており、紫が抱いていた男子高校生の一人暮らしの部屋とは様子が違っていた。
 東の壁には大きな本棚が置いてあり、そこには様々な本が並べられていた。見ると、マンガなどは一切無い。紫とは無縁の小難しい小説や辞典ばかりだ。昨日、大切そうに抱きかかえていた本も並んでいた。南側に吐き出しの窓があり、西の壁には小さな箪笥が

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紫光は星空の彼方へ 二章 3話

紫光は星空の彼方へ 二章 3話

 グレモリーが指を一つ鳴らすと、まとわりついていた炎が一瞬にして消え去った。
 グレモリー自身にダメージは見受けられないが、駱駝を倒せたのは大きいだろう。これで、グレモリーは地に降りて戦わなければいけない。カルトの注意を向ける相手は、二体から一体になったのだ。
(長引かせればこっちが不利。だから、決める!)
 カルトはグレモリーに走り寄る。距離にして数メートル、常人では視認することさえ困難なスピー

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紫光は星空の彼方へ 二章 2話

紫光は星空の彼方へ 二章 2話

 昨夜逃げた第三種生命体と、目の前にいる火野雪路。その二つが紫の中で繋がろうとしていた。何故そう思うのか。紫自身にも分からない。楽観的な思考。余りにもタイミングが良すぎる展開に、戸惑いながらも雪路の話に耳を傾けていた。
「俺はね、昨夜、女の人が殺された映像を、この目で見ていたんだ」
 雪路が示したのは自分の瞳。磨かれた御影石のように真っ黒に輝く瞳には、虹色メッシュが僅かに乱れた、嬉しそうに頬を緩め

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