【学習障害(LD)の最難関?】「話す・聞く」障害の特性とは
・聞いたことをすぐ忘れる
・友だち付き合いがうまくいかない
・話題があちこちに飛んでわかりづらい
・発言するまでに時間がかかる
お子さまや生徒、支援している子の中に、このような特徴を持った子はいませんか?
このような特徴を持っているのは、もしかすると「話す」「聞く」部分に課題がある「学習障害(LD)」かもしれません。
私の個人的な意見としては、学習障害の6つの特性のうち、この「話す」「聞く」の障害が一番やっかいだと感じています。なぜなら、
・発見されづらい
・間違えられやすい他の障害や疾患がある
・他の発達障害との併発も多く、学習障害なのかがわかりづらい
といった特徴があるため、「読む・書く・計算・推論」よりもアセスメントに時間がかかったり、支援方法が複雑になってしまうケースが多々あるからです。
では、そもそも「話す・聞く」という学習障害とはどういった特性なのか、なぜ他の障害と間違えられるのかなどを考えていきます。
【「話す」ことの障害の特性】
■筋道を立てて話すことができない
・頭の中では理解していても、順を追って話すのが苦手
・頭の中では理解していても、筋道を立てて説明するのが苦手
■まとまった文章で話すことができない
・思いつくまま話し出す
・相手に意味がわかるように話すのが苦手
・文章にまとめてから話すことができない
■余分なことが混じった文章を話す
・話そうとする内容とは関係のないことが混じってしまい、途中で話がつながらなくなる
■同じ内容を違う言い回しで話せない
・いろいろな言い方で話せない(言葉を選べない)
・年上や年下など相手によって話し分けることができない
(あきらかに年上の人にもタメ口をきくなど)
■話が回りくどくなりがち(話している途中で黙ってしまう)
・言いたいことを整理して話すことが苦手
・余計なことを話し始めて回りくどくなる
・話が結論までいきつかない
・話したい内容をあらわす言葉が出てこないために、話の途中で黙ってしまう
■長い文章で話すのが苦手
・筋道を立てて長い文章を話すことが苦手
・「昨日、お母さんとお店に行ってかわいいワンピースを買ったの」と話したいところを「行ったの、お母さんと、買った、かわいいの、ワンピース」のように単純な単語の羅列になってしまう
・筋道立てた文章が苦手なので単純な語り口調になる
【「聞く」ことの障害によって起こる特性】
■会話の内容が理解できない
・人が話している会話が理解できずに話に参加する
・話の内容を記憶することが苦手
・文字で書けば理解できる場合もある
(なのでLINEなどSNSでのコミュニケーションはできる)
■文章の聞き取りができない
・教科書の文章を他人に読んでもらっても聞き取ることができない
■書き取りが苦手
・話を聞きながら書き取ることが苦手
(先生の話を聞きながら板書をノートに書き写すのが困難)
・話を聞きながら文章にすることが苦手
(先生が黒板に「持ってくるもの お弁当」と書き、それを見せながら「明日、お弁当を用意して」と言われると書けない。「明日はお弁当を持ってきてください」というように、はっきり意味を言われると書ける。)
■単語の聞き誤りが多い
・「クラス」と「グラス」、「スカート」と「スケート」など、音が似ている単語を聞き誤ることが多い
・「ぎょうじ」「しゃもじ」など拗音が入った単語が理解できなかったり、聞き誤ることが多い
※この場合は耳の疾患の可能性があるので、まずは耳鼻科にかかりましょう
■長い話をじっと聞くことが苦手(長い話に集中できない)
・長い話を聞くことを嫌がる(何を話されているのか理解できない)
・短い話だと聞けるが長い話は集中ができない
・アニメでも30分放送の途中で見るのをやめる
■話された言葉の復唱ができない(音節の順番を間違える)
・人の話が聞き取れないので、話された言葉を繰り返して話す
・音節の順番を間違えることがある
(「今日も元気に、楽しく」を「今日も楽しく、元気に」と覚える)
【話す・聞くの特性から生まれる困り感】
「話す・聞く」という行為は他者との関わりの中で行われるものなので、人間関係のトラブルや衝突を招きがちです。
■話す・聞くの困難からうまれる困り感
①相手の話をうまく聞き取れない
②聞いたことを覚えていられない
③相手にうまく伝わらない
④言葉を思い出すのに時間がかかる
⑤友だちのグループに入れない
⑥話したいことを一方的に話す
⑦話題があちこちに飛びやすい
総じて、人とのコミュニケーションに問題が生じるため、生きづらさを感じやすい障害と言えます。
【LDと間違えられやすい障害とは?】
LDがなぜ起こるのかは、実はよくわかっていません。
脳の中枢神経のつながりになんらかの問題があり、伝達機能がうまく働かないことに原因があるのではないかと考えられているため、同じく中枢神経の障害である他の発達障害と間違えられやすい傾向があります。
特に、この「話す」「聞く」学習障害は、他の障害や疾患と似ている症状が多いです。
また、「話す・聞く」は耳や口という機能を利用するため、この機能に問題がある場合も誤解されやすいです。
■ASD(自閉スペクトラム症)
ASDの中でもアスペルガー症候群の子どもは、早口だったり矢継ぎ早にしゃべったり、難解な語を好んで使用することがあります。しかし、
・言葉を表面的に受け取る
・言外の意味を理解していない
(例:外出前、「窓見てきて(窓開いてたら閉めてきて)」と声掛けしたら、本当に窓を見てきただけ、など)
・代名詞がなにを指しているのかわからない
・皮肉を理解しない
といった言葉の理解に偏りがみられるため、LDと間違えられることがあります。
また、自閉傾向の強い子は言語の発達の遅れや偏りなどの特性がよく見られます。
この傾向の子は、他者に対し興味関心が薄いためコミュニケーションをとりたいと思わない=言葉を覚えることの必要性を感じない=簡単な言葉でも覚えられない、言葉を使おうとしないといった現象が起こるのです。
ですが、これは能力として話せないのではなく、ASDの特性から話さないという状態なので、LDとは異なるのです。
■構音障害(子どもの場合)
言葉を正しく発音できない症状を言います。舌足らずや特定の音をきちんと発音できない状態です。
音声を出す機能上の問題が原因のため、その部分の治療や訓練が必要なのですが、LDに似ているとして間違えられるケースがあります。
この構音障害かどうかの見極めが、学習支援現場では出来ないんです。なぜなら、
・そもそも聴覚が悪く、正しい発音を聞き取れていないから正しく話せないパターン(聴覚の疾患)
・聞き取れてはいるが、舌や唇などの動きが違っていたり、動きづらいために言葉が違って聞こえるので正しく話せていないように聞こえるパターン(口腔内の疾患:これが本来の構音障害)
といった、身体的な問題が原因の疾患が複数あり、それらは病院に行って聴覚の確認や言語聴覚士さんに診てもらわないとわからないのです。
ただし、一つだけ学習支援現場でも確認ができることがあります。
例えば、「みかん」を「みたん」と言っている場合。
話すと間違った発音でも、書かせると「みかん」と書ける場合は、聴覚や口腔内の問題の可能性が高いので、LDではないなとおおよその検討がつきます(しかし、念のため病院には行きますが)。
■語音症/語音障害
身体的や神経学的な障害がないにもかかわらず、言葉を明瞭に発することが難しい状態が続き、会話による意思疎通が制限されるために生活に支障が出ている状態のこと。医学では「コミュニケーション障害」の1つとされています。
この障害だった場合は、治療により会話の困難が改善するケースが多いとされています。
■吃音(きつおん)
言葉がスムーズに出にくい、過剰につっかえる状態が続くことを「吃音」といい、こちらも医学では「コミュニケーション障害」の1つとされています。文章をうまく読むことが出来ないためLDと間違えられることがあります。
↓「コミュニケーション障害」は以前の記事で少しだけ取り上げています↓
■知的障害(軽度含む)
知的障害もLDも「認知」に関する障害なので、学習障害全般と同じような特徴がみられることがあります。
軽度知的の子は、たいてい普通に会話も出来るし普通に生活も出来るので(もちろん支障はあります)、軽度知的ということ自体が発見されづらかったりします。
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このように「話す・聞く」の学習障害は、実にさまざまな障害や病気の症状と似ており間違えられやすいため発見が遅れてしまうケースがあります。
【まとめ】
「読む・聞く」に障害があっても、会話では普通に話せる子も多く、コミュニケーションに問題がないことも多いです。
「計算する・推論する」に障害があっても、生きていく上では電卓を利用するなど対処方法があります。
ですが、今回取り上げた「話す・聞く」の学習障害は、他の「読む・書く・計算する・推論する」と比較して、圧倒的に人間関係に影響します。
また、他の学習障害のような代替になるツールもなく、生きづらさを感じやすい障害だと考えます。
実際、学習障害の中でも、支援がなかなか回っていないのが、この「話す・聞く」障害だと痛感しています。そもそも見逃されたり、発見されづらかったりするので、本当はもっと困っている人がいるはずです。
なので、今回はこのような課題を抱えている人がいるんだよ、こんな風に困ってるんだよ、ということを伝えたくて記事にしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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