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α版《研究論》カスタムロボV2オンライン対戦におけるエアリアルビューティー(AB)の本質を捉える

0. 読み方

0.1 要旨(Abstract)

 初めに、2章にて、カスタムロボV2のゲーム性に関わる重要語および概念を導入した。
 次に、3章にて、カスタムロボV2における対戦を、「接敵」をめぐる3フェーズの「駆け引き」に分解した。そして、対戦構造の本質は「接敵」すなわち「水平方向の間合い」であると結論付けた。
 さらに、4章にて、ロボの理論値は水平方向の機動力が大きな部分を占めると推定した。また、理論値の実現は、ロボの基本性能および使い手の練度に大きく左右されることを示した。そして、ABの本質的な強みが、主に空中加速の高さによって使い手の練度を間接的に高めることであり、本質的な弱みが、主に水平速度の遅さによって理論値が低いことであると考察した。
 5章の内容は、ABのパーツ選択に対する方針を示すものである。

0.2 《考察論》の紹介

 本《研究論》では、実対戦で役に立つことはあまり書きません。
 《考察論》という、実戦のノウハウを詰め込んだ記事を執筆しております。まずはそちらをご覧ください。
 《研究論》は、《考察論》の内容を前提としています。その意味でも、まずは《考察論》をご覧いただきたいです。

1. はじめに

 本記事は、ABの本質について捉えることを目的として、カスタムロボV2のゲーム性について掘り下げます。
 私の独自解釈、私見を多分に含む内容となる予定です。ご覧いただく際は、ご注意ください。
 調べてみると、自分がやろうとしていることは、理論研究に類するように思われます。「ものごとの理を明らかにする研究」とのこと。
 難解なことにチャレンジします。ゲームの大前提から言語化して、まさに理論そのものを構築することを狙います。とはいえ、私の力不足で、必要であるはずの前提を用意できていなかったり、前提から得た推論が甘い部分もあるでしょう。読み手の考察機会として残しておくか、自分で不整合を修正して理論としての完成度を上げるのかは、悩みどころです。

※最後まで書いてからの追記
 体系的に整理できていません。
 彷徨いながら、寄り道しながら、雲みたいな捉えどころのないものを、なんとか輪郭だけでも作れないか、という試行錯誤の道程です。
 この記事に”α版”と付すことを決めました。いつか「完成版」として自らが納得いくものにするぞ、という決意表明です。半年後か一年後か、私がまだカスタムロボV2の対戦に身を置いていた時に、今回書いた内容を精査の上、再考も踏まえつつ整理することにします。

1.1 記事執筆の目的

(1)カスタムロボV2オンライン対戦におけるABについて、その本質的な強み・弱みを捉えること。
(2)カスタムロボV2のゲーム性に関する私の理論を構築し、自身が以後行うはずの考察に対する基礎を準備すること。
(3)対戦人口全体へ向けて、カスタムロボV2というゲームにおいても理論という概念が存在しうると示唆すること。
(4)本ゲームを理論的に考察しようとする人に向けて、その手法の一例を示すこと。
(5)レギュレーションや大会ルールを制定しようとする人に向けて、それらの検討は理論からも可能であると示唆すること。

1.2 御断り

(1)対戦のルールは、「カスタムロボ交流サーバー」の「#競技用レギュレーション」を前提とする。詳細は1.3節に示した。
(2)適宜、パーツを略記する。
(3)水平方向とは、x軸、y軸方向のこと。垂直方向とは、z軸方向のこと。
(4)横移動とは、水平方向で相手との間合いを変えない移動のこと。前後移動とは、水平方向で相手との間合いを変える移動のこと。縦移動とは垂直方向の移動のこと。
(5)高空ロボ(あるいは高空系ロボ)とは、特に断りが無ければ、SSハイ、FVハイ、FOフェザー、FOワイドを指す。
(6)本記事の大部分は私見で構成されている。読むにあたって、留意すること。

1.3 #競技用レギュレーション

2023年7月22日時点での「#競技用レギュレーション」を以下に示す。
《基礎論》や《考察論》と違って、本《研究論》では実対戦に必要な情報をあまり載せない予定であるから、レギュレーションの説明はいらないかもしれないが、一応。

禁止パーツ、限定禁止パーツ、限定解禁パーツがある
激闘編と同様、試合時間は120秒である。また、公平を期すために先制攻撃が禁止されている

2. カスタムロボV2のゲーム性

 どういう結論に持っていきたいのか、議論の大枠はあるのだが、どこから出発してどんな道筋を辿るのか、自分でもよくわかっていない。
 とりあえず、書いてみれば何かわかるだろう。

2.1 ゲーム性という言葉の意味

 ゲーム性について考えると言ったが、そもそもゲーム性とは何か、私自身も分かっていない。まずは定義付けから始めてみよう。

(1)見城こうじ氏の見解

 ゲーム性という言葉に、厳密な意味はないようだ。各々が好き勝手に解釈して使っている。その解釈の幅広さから、ゲーム性という言葉を忌避したり、解釈違いから議論を呼んだりしているようだ、
 検索してみたところ、カスタムロボの生みの親、見城こうじ氏のnoteがヒットしたので、これを参考にしよう。
(なお、私は今回この記事を読んで初めて、彼がカスタムロボのディレクターであることを知った)

 なるほど、と思う部分を引用してみる。

桜井さんは自身の公式動画でハッキリと「自分はこう考えている」と自分なりの定義を語られていました。ゲーム性とは「かけひき」そして「リスクとリターン」だと。

そして本題のゲーム性とは何なのか、ですが、ぼくはけっこうシンプルに言えると思っていて、「プレイヤーが選択し、実現した行為の難易度に応じて、適切なご褒美が返ってくること」だと考えています。よく言う「ゲーム性が高い」というのは、行為の難しさとご褒美のバランスが適切ということです。

 スマブラで有名な桜井政博氏の考えを引用して支持しつつ、見城氏の考えが述べられている。
 ゲーム性が高いとは、いわゆるリスクリターンであったり、コストパフォーマンスであったりのバランスが適切であることを言うらしい。
 カスタムロボV2において考えてみる。
 例えばSVの着地キャンセルは、それを実現する難易度が高い代わりに、高い機動力を得られる。
 かつて、SSハイスナイパーは伸びしろが無い等と評された時期があったかと思う。これは、ワンボタンで瞬時に高空へ到達できて扱いが簡単である代わりに、できることが少なく出力の限界値が低いということか。
 であるなら、ABは小回りが利いて操作がしやすい分、これも出来ることが少なく、出力の限界値が低いのだろうか。
 違法パーツを解禁したルールでは、行為の難しさ(リスク)に対して、ご褒美(リターン)が大きすぎるため、ゲーム性が損なわれると言えるだろうか。

Key1:ゲーム性とは「駆け引き」である。
Key2:ゲーム性が高い状態とは、「リスクリターン」が適切であることを言う。

ゲーム性の高さを決定する要素にもう少し加えると、「どの選択が正しいか」の判断が“必ずしも”簡単ではないことも重要だと思います。「その後の展開を考えるとどちらが得か」「自分の技術や知識で実現できるか」が複雑に絡むことで選択を難しくし、深みを生み出します。

 試合における駆け引きの一要素と言えよう。
 簡単な場面を例に出す。相手をダウンさせた時、追撃して火力を取るのか、追撃せずに距離を取るのか。「その後の展開を考えるとどっちが得か」という判断を要求される。
 再度、SVの着地キャンセルを例に出そう。「自分の技術で実現できるか」という判断の結果、実現できると踏めば着地キャンセルを立ち回りに組み込むし、できなければ諦めて別の方法で戦う。

Key3:ゲーム性の高さには、「選択」の「判断」が関わっている。

似た例で自分がかかわったゲームだと、『カスタムロボ』のポッド(追尾能力弱めの誘導ミサイル)はノーリスクで撃ち出せる代わりに敵に当たる可能性も低い。ガンは速効性が高くダウン値も高い代わりに隙が大きくなる。『ストリートファイターII』同様、桜井さんがおっしゃった「リスクとリターン」ですね。

 カスタムロボの基本が述べられている。
 リスクの低い行動では、得られるリターンは小さい。リスクの高い行動では、得られるリターンは大きい。
 ポッドが敵に当たる可能性が低いと書いてあるが、これは何だか違う気もする。まぁ、基本にしたがえば、ポッドは相手を追い詰めるものであって相手に直接当てるものではないから、間違っていないとも思えるが。

アクション系のジャンルは、選択とご褒美がすごく短い時間で繰り返されていて、かつ選択の結果がよりシビアに成功と失敗に分岐することが多いため、ゲーム性(と仮に呼んでいるその概念)を意識する機会が多い、というのがその論拠です。ぼくの思い込みかもしれませんけれど。

 私は2D格ゲーをやったことがないのでいい加減なことを言うかもしれないが、2D格ゲーだと、一次元を基礎として多少の垂直方向を含む非常に狭い二次元空間にあって、お互いに接敵するのが前提で作られているから、選択とご褒美が短い時間で繰り返され、選択の結果がシビアに分岐する。
 スマブラは、そこから水平にも垂直にも大きく拡張した二次元空間にあって、離れた位置からどのルートで、どのタイミングで接敵するか、というところから選択とご褒美が始まる。
 カスタムロボは、さらに次元を足して三次元空間にある。遠距離でも相手に攻撃が届くとは言え、スマブラ以上に接敵の機会は少ない。「接敵しないことを前提とする」戦術も想定できよう。いわゆる逃げカスタムとか、スフィアステーションでお互い遠距離ガンとか、そういう状況だ。接敵するのかしないのか、接敵前提ではない状態から駆け引きが始まる。

 カスタムロボの駆け引きを少し考えてみる。一方がWSマグナム、もう一方がSVグラビティを想定しよう。まず、最遠距離からスタートして、WSマグナムが接近を試みる。地上移動や低空ダッシュを駆使しながら、グラビティを掻い潜ってSVに接敵する。これは、「離れた位置からどのルートで、どのタイミングで接敵するか」という駆け引きである。次に、接近に成功した場面。接敵した場面と言っても良い。WSマグナムは、SVの迎撃択や逃げルートを想定しながらボムポッドを搦めて相手の退路を塞ぎ、ダッシュからマグナムに繋げようとする。この瞬間は、「選択とご褒美が短い時間で繰り返される」駆け引きだ。
 
Key4:駆け引きの数は、接敵回数に比例する。
Key5:ステージが広大であればあるほど接敵機会は減り、接敵するかしないか、あるいは、どのように接敵するかという新たな駆け引きが生まれる。

操作性はどんな遊び(ゲーム性)にしたいかで決まるものです。たとえば、機敏な動きで攻撃をガンガンかわすゲームにしたいのか、慣性のある動きである程度先読みが必要な遊びにしたいのか(すぐに動作が止められないので)。

 他にもたとえば、行動の予備動作の時間を大きくするのか、もしくは行動後の隙を大きくするのか(もちろん、こうした概念がほとんどないゲームもあります)。

 操作性について書いている。
 カスタムロボには、様々な機動力を持つロボに、複数種類のレッグによって更に方向性を持たせることができる。「機敏な動きで攻撃をガンガンかわすゲーム」にも、「慣性のある動きである程度先読みが必要な遊び」にもなりうる。
 行動前後の隙についても述べられている。ロボの地上加速、ダッシュ(多段)前隙、着地隙、ガン・ボム・アタックの前後隙などが該当する。カスタムロボには様々なロボ・パーツが用意されており、組み合わせ次第で如何様にもなる。
 カスタムロボは、色々な操作性で遊べるゲームと言えよう。例えば、ヒヨコ縛りでシナリオをクリアするとか。
 
Key6:操作性はゲーム性に関わる
Key7:カスタムロボの操作性は、選択するパーツによって変化する

ぼくがゲーム性という言葉の議論の中で大事なポイントだと思うのは、最初のほうでも少し触れましたが、人がその言葉を使って話すとき、ほぼそこにゲームならではのおもしろさについての“理解”や“思い”を含んでいるであろうということです。

 まさに、カスタムロボV2ならではの面白さについて、理解や思いがあったから、ゲーム性という言葉を持ち出した。
 これから書く《研究論》の存在を肯定してくれているようで、少し嬉しくなった。

(2)カスタムロボV2におけるゲーム性とは

 (1)で展開した内容をまとめる。
 どういう解釈になるか自分でも不透明であったが、以後に自分が展開したい議論をする上で都合が良い解釈を得られたので、このまま進める。
 議論に都合が良い解釈を得られたのは、ある意味で当たり前かもしれない。カスタムロボについて論じようとする時に、ゲームの生みの親が持っている解釈をベースにするわけだから。ゲームの本質に近づくための第一歩は成功した、と思ってもいいのだろうか。

  • ゲーム性とは、「駆け引き」である。

  • ゲーム性が高い状態とは、「リスクリターン」のバランスが適切な状態である。

  • ゲーム性には、プレイヤーが「判断」して「選択」する要素が含まれる。

  • カスタムロボV2における「駆け引き」が発生する場面は、大きく分けて3種類ある。
    1つは、「接敵」を狙うかどうか。
    2つは、「接敵」に向けての攻防(どのように「接敵」するか。どのように「接敵」を回避するか)。
    3つは、「接敵」後の攻防(どのように攻撃を当てるか。どのように退避するか)。

  • 操作性はゲーム性に関わる。

  • カスタムロボV2は、選択するパーツ次第で、操作性が如何様にも変化するゲームである。

(3)重要語の抽出

 以下の言葉を軸に、以後の議論を展開する。

  • 「駆け引き」

  • 「接敵を狙うかどうか」「接敵に向けての攻防」「接敵後の攻防」
    それぞれ、(2)で挙げた3つの「駆け引き」が発生する3場面である。

  • 「リスクリターン」

  • 「プレイヤーの判断と選択」

  • 「操作性」

2.2 概念(言葉)の導入

 ここでは、以後の議論に必要な概念(言葉)を導入する。
 私の頭の中で必要なだけだから、記事の中にはほとんど出さないかもしれない。
 議論したい内容に合わせて言葉を作ったから、ご都合主義が大きい。
 具体的に定義しきれないものもあるし、私が勝手に作った概念もある。
 本当は数学チック・論理学チックに集合や写像を使って定義したいのだが、残念ながら私は慣れていないのでできない。

(1)操作量

 プレイヤーが、「立ち回り」や「判断」を元にロボへ加える操作のこと。

(2)操作量の安定度

 プレイヤーの操作量が安定しているかを示す指標のこと。
 例えば、操作量の安定度が低い場合、試合によってロボを制御する調子が良かったり悪かったりする。同じ状況が繰り返された時に、ロボの動かし方が安定しない。
 一般に、操作が難しいと言われるロボほど、プレイヤーに高い操作量安定度を求める。ABはプレイヤーの操作量安定度が低くても十分に動かせる。

(3)出力

 任意のカスタムに対して、プレイヤーがある操作量を加えた時に、得られる強さのこと。ここで、その操作量は、プレイヤーの「判断」まで反映したものである。
 局所的な「駆け引き」において、出力が上回った側が勝つ。大局的に1試合を通して出力の積分値が上回った側が勝つ。

(4)出力の安定度

 出力が安定しているかどうかを示す指標のこと。
 例えば、出力の安定度が低い場合、試合を繰り返すたびに勝ったり負けたりが激しい。同じ「駆け引き」を繰り返した時に、成功率が安定しない。
 カスタム自体の性質、およびプレイヤーの操作量安定度に依って、出力の安定度も決まる。
 WSマグナムは安定しない、とよく聞く。カスタム自体も不安定だし、プレイヤーに求める操作量安定度も大きいためであろう。

(5)練度

 スナイパーの練度が低い、ABフレイムの練度が高い、などと使う。
 プレイヤーがカスタムやパーツを扱う時に、プレイヤーの知識・経験を基礎として練達した、操作精度・立ち回り・判断力などを総合して称した指標。
 プレイヤーの練度が高いほど、プレイヤーはロボに対して、状況に合わせた最適な操作量を安定して与えることができる。
 すなわち、練度が高いほど、カスタムの出力は理論値に近い状態で安定する。
 練度とは、以下への指標にもなる。
 自分のカスタムの強み・弱みを適切に理解しているか?
 相手との相性関係を正しく理解しているか?
 相手のカスタム・立ち回りや、状況・ステージ構造に合わせて、勝つために最善の動きをすることができるか?

(6)出力の理論値(最大値)

 練度が最大の状態において、そのカスタムが出せる出力の最大値のこと。

(7)ロボの長所

 ロボの基本性能、およびそこから導かれる性質のうち、プレイヤーが能動的に生かせるもののこと。
 例えば、MGは防御力と我慢値を生かして他ロボにはできない位置取りを可能とする。この時、防御力と我慢値の高さは長所として機能している。

(8)保険

 ロボの基本性能、およびそこから導かれる性質のうち、受動的に生きてくるもののこと。
 例えば、MGが相手からマグナムを受けた時、防御力が他ロボより高いので被害が少なくて済む。これは防御力が保険として機能している。
 もう一つ例えを出す。アニーアタックは相手に接近を許した時の緊急回避として非常に優秀な性能を持つ。カーライルアタックのように、戦術の一つとして能動的に生かすのは難しいが、限定的な場面で受動的かつ有効に使うことができる。その意味で保険となる。
 《考察論》の中で、ABには相手の接近に対する保険が無い、という話をした。まさに、この意味で使っている。

(9)ロボの短所

 ロボの基本性能、およびそこから導かれる性質のうち、相手プレイヤーに能動的に生かされてしまうもののこと。
 例えば、MGがダウンしにくいことを相手に利用されて、多段ヒットする攻撃で火力を取られてしまう。これは我慢値の高さが短所として機能している。

(10)足枷

 (7)、(8)、(9)の例に挙げたように、ロボの性能は、状況次第で、長所にも保険にも短所にもなり得ることが多い。
 足枷とは、ロボの基本性能と性質のうち、長所にも保険にもならないもの、すなわち短所にしかならないものを言う。例えば、TFの被弾硬直の長さ、体の大きさ。
 体の大きさは、ガンの射程が伸びるという長所にはなり得るが、その恩恵に対して損失があまりにも大きいため、足枷を見なす。

(11)有効射程

 主にガンについて、そのガンを効果的に扱える距離のこと。
 ガンのヒットが確定する射程という意味ではないので注意。
 例えば、マグナムの有効射程は至近であり、発生が早く弾速も速いから、有効射程≒確定ヒット距離である。
 一方、グライダーの有効射程は遠距離であるが、遠距離で撃ったからと、直ちにヒットが確定するわけではない。相手の回避動作に依る。

(12)接敵

 攻める側のプレイヤーが、相手をガン(またはそれに準ずる攻撃手段)の有効射程に捉えた状態を言う。
 接敵状態では、攻める側のプレイヤーは、如何にしてガンを当てるか、攻められる側のプレイヤーは、如何にしてそれを拒否するか、という攻防が生まれる。
 なお、この定義に従えば、遠距離ガンの有効射程は遠距離であるから、相手との距離が離れている状態を「接敵」と呼ぶことになる。ややこしいので、これは例外的に「接敵」とは呼ばないことにする。遠距離ガンを相手に当てるためにボムポッドで圧力を掛けに接近していった状態を「接敵」と表現する。

(13)立ち回り

 よく使われる言葉だから、改めて書くか迷ったが、明確にしたいので書く。
 対戦においてプレイヤーが予め定めた方針であって、局所的に発生する「駆け引き」や、大局的に試合を有利に運ぶためのもの。
 かみ砕いて言えば、対戦の様々なことを、プレイヤーが事前に検討した内容のこと。

例:
SSハイスナイパーを使っている時にグラビティと対峙した時の立ち回り
●基本方針
(a)グラビティの射程内に入らない
(b)歩きを多めにする
(c)スナイパーを多めに撃って、グラビティを撃てないように圧力を掛ける
●試合の中で、相手がグラビティの取り扱いに慣れていないと分かったら
(d)積極的にジャンプして頭上を取って、ドルフィン爆撃を狙う

以上のように、立ち回りは、試合の中でも変わり得る。
せっかくなので、この例を、後述する「駆け引き」の3フェーズに対応させてみる。
(a)「接敵を狙うかどうか」
(b)「接敵に向けての攻防」
(c)「接敵に向けての攻防」「接敵後の攻防」
(d)「接敵を狙うかどうか」「接敵に向けての攻防」「接敵後の攻防」

3. カスタムロボV2の対戦構造と本質

 準備ができたところで、私が思うカスタムロボV2というゲームの本質へ繋げる。

3.1 対戦を組み立てる3フェーズ

(1)「駆け引き」が発生する3場面の再掲

「接敵を狙うかどうか」
「接敵に向けての攻防」
「接敵後の攻防」

(2)対戦は、3フェーズの「駆け引き」から成る

 標記の通り。(1)で挙げた3つが、そのまま、対戦におけるフェーズ(段階)となる。

Phase1.
 「接敵を狙うかどうか」を判断する
Phase2.
 「接敵に向けての攻防」を制する
Phase3.
 「接敵後の攻防」を制する

(3)回避戦の取り扱い

 Phase1. において、プレイヤーが両者とも「接敵しない」と判断した場合、Phase2. には移行しない。Phase1. の状態のまま、ボムポッド(+ガン)による回避戦に突入する。
 カスタムロボV2は、格ゲーとは異なり、接敵しなくても相手を攻撃することができるために生まれる状況だ。お互いが遠距離ガンを持っている場合、この状態に陥りやすい。

 私の定めた対戦構造では、3フェーズが、Phase1. → 2. → 3. と移り変わることを想定している。であるから、遠距離での回避戦を、Phase1.から分岐する形で用意しても良い。
 ……のだが、私はそのように処理せず、回避戦はPhase1. に含める形で議論を進める。回避戦をしながら、常にPhase1. の状態、すなわち「接敵を狙うかどうか」の判断を行っている、と見なす。

 遠距離ガンどうしの戦いであっても、試合の最初から最後まで、両者が終始、「接敵しない」という判断で終わることは珍しい。結局、HP状況と残り時間を考慮して、不利な側が仕方なく接敵を狙うことが多い。近距離でガンが機能せずとも、このゲームには、ボム・ポッド・アタックと、攻撃手段が他にある。

(4)高い水平機動力は、Phase2. とPhase3. を曖昧にする

 実は、必ずしも、Phase2. → 3. と順番に移行するわけではない。
 WSマグナムを例に考える。見方によって、ちょっと変わってくる。
 私が言いたいのは、見方2のケースである。

▼見方1
 まず、「接敵」の定義は、相手をガンの有効射程へ捉えることであった。
 マグナムは、発生と弾速の速い近距離ガンであるから、「接敵」した時点でヒットが確定する。すなわち、マグナムにとっては、「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)を制した時点でヒットが確定するから、「接敵後に攻撃を当てるための攻防」(=Phase3.)は存在しないことになる(と言うと乱暴な解釈だが)。

▼見方2
 ところで、WSのダッシュは非常に速い。ダッシュして瞬時にマグナムの有効射程へ入り、ヒットを確定させることができる。
 これは、マグナムの有効射程を疑似的に伸ばしている、と考えることもできる。そうすると、ワンダッシュ圏内も「接敵」と見なすことが可能だ。
 すると今度は、ワンダッシュ圏内における攻防は、既に「接敵」しているのだから、「ダッシュで接敵するための攻防」(=Phase2.)ではなく、「接敵後の攻防」(=Phase3.)と見なせる。

 あれこれ書いたのだが、何を言いたいのかというと、
 攻める側が高い水平機動力を持つロボである場合、「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)と「接敵後の攻防」(=Phase3.)の境界が曖昧になる、ということだ。攻める側にとって、Phase2. を制することが、そのままPhase3. を制することになってしまう。しかも、「接敵」しているのか、していないのか、それすら曖昧になる。

3.2 対戦構造の本質は「接敵」すなわち「水平方向の間合い」である

(1)結論

 カスタムロボV2の対戦構造の本質は、「水平方向の間合い」である。
 
別の言い方をすれば、
 「水平方向の間合い」とは、対戦を構成する3フェーズの「駆け引き」そのものである。

(2)根拠

・近距離ガンを持ったならば、接近を狙う。
・遠距離ガンを持ったならば、退避を狙う。
・HP状況や残り時間に応じて、プレイヤーは距離を取るか詰めるかを判断する。
・環境上位ロボ(SV、WS)は水平方向に速いロボである。

(3)論理

 対戦における3フェーズは、いずれも「接敵」が軸となっている。
 「接敵」とは、水平方向に間合いが詰まることに同じである。
 したがって、対戦構造の本質を水平方向の間合いと見なした。

(4)ここから展開して考察すべき内容

 例えば、次のトピックがある。
・水平方向の間合いが持つ意味
・垂直方向の間合いが持つ意味
・強いロボの条件
・対戦における、各パーツの役割

3.3 「駆け引き」を制するには

 対戦は「駆け引き」の3フェーズから成ると定めた。
 ここでは、各フェーズ毎に、重要となる要素は何か?を考えてみる。

(1)「駆け引き」を制するための判断材料

 思いつく限り、書いてみよう。各フェーズで重要だと思う判断材料に★を付けてみた。
 人によって切り口は異なるだろう。私自身、すべての要素を挙げている自信はないし、不要なものを挙げているかもしれない。

▼「接敵を狙うかどうか」の判断材料
★自分のカスタムの有効射程はどれくらいか
★相手のカスタムの有効射程はどれくらいか
・相手のカスタムの対近性能はどれくらいか
★残りHPの状況はどうなっているか
・残り時間はいくらか

▼「接敵に向けての攻防」における判断材料
 自分が接近する側として書く。自分が接近される側の時は、挙げたことの逆を考えれば良い。
・現在の相手との位置関係はどうなっているか(水平、垂直)
・ステージ上で、ボムポッドの爆風はどこに生成されているか
・ステージ上で、ボムポッドの弾はどこにあるか
・ステージ構造やステージギミックはどうなっているか
★自分のロボの機動力を考えて、取り得る接近ルートは何か
★相手のロボの機動力を考えて、取り得る回避ルートは何か
・自分の攻撃のリロード状態はどうなっているか
・相手の迎撃のリロード状態はどうなっているか
・自分の射線はどのように通るのか
・相手の迎撃射線はどのように通るのか

▼「接敵後の攻防」における判断材料
 自分が接近した側として書く。
・現在の相手との位置関係はどうなっているか(特に垂直方向)
★自機と敵機の周辺で、ボムポッドの爆風はどのように生成されているか
・自機と敵機の周辺で、ボムポッドの弾はどこにあるか
・ステージ構造やステージギミックはどうなっているか
★相手のロボの機動力を考えて、取り得る回避ルートは何か
・自分のロボは、相手の回避ルートを先読みして移動できるか
・自分の攻撃のリロード状態はどうなっているか
★自分の攻撃の性能はどうなっているか
・相手の迎撃のリロード状態はどうなっているか
・相手の迎撃の性能はどうなっているか
・試合の流れ、心理的な読み合い、人読みはどうか

(2)「駆け引き」を制するために重要な要素

▼「接敵を狙うかどうか」を制する
 どちらのプレイヤーが攻めなければならないのか。これを適切に判断できれば、本来的に有利な状況を見逃さずチャンスにでき、本来的に不利な状況を見逃さず打開策を打つことができる。
 制するために重要な要素は、残りHP状況であろう。多くの場合、残りHPの少ない側が、逆転のために「接敵」を狙うことになる。リスクリターンまで考慮できると良い。例えば、自分のカスタムの火力が低いなら、何回も接敵を狙ったり、一度の接敵で確実にリターンを取るようにする必要がある。残り時間が少なければ、一発逆転を狙ってリスクを承知で大胆に攻める必要もある。
 お互いの有効射程も重要な要素である。マグナムとグライダーの対戦では、マグナム側が「接敵」の判断をすることになる。

 このフェーズは、相手との「駆け引き」ではなく、カスタムロボV2のゲーム性がプレイヤーへ提供する「駆け引き」であろう。したがって、正しくゲーム性を理解して実戦経験を積めば、この「駆け引き」を自然と制することができるようになるだろう。
 初心者どうしの対戦は、お互い間合いが遠いことが多い、と感じる。おそらく、「接敵を狙うかどうか」の判断を正しく行えていないためではないか。あるいは、自分の操作精度に自信が無く、リスクリターンを考えて判断した結果なのかもしれないが。後者であれば、「駆け引き」を制した、と思っても良い。

Point:
 相手との「駆け引き」というより、ゲーム性がプレイヤーに与える「駆け引き」である。

▼「接敵に向けての攻防」を制する
 ここから、相手との「駆け引き」が始まる。
 このフェーズを制するために重要となるのは、ロボが持つ水平方向の機動力と言えよう。何せ、攻防の目的は、相手に接近すること(相手から距離を取ること)であるから。
 次に重要となるのは、ボムポッド(+ガン)であろう。接敵するために、相手の移動を強制したり、抑制したり、妨害したり、誘導したりする。ボムポッドの基本的な使い方だ。守る側にとっても同様で、相手の接近を拒否するためにボムポッドを使う。
 ここに、プレイヤーどうしの読み合いが加わり、「駆け引き」が成り立つ。

Point:
 ロボ本来の水平機動力、ボムポッド、読み合いが重要である。
 ロボを精度良く動かすにも、ボムポッドを上手く使うにも、読み合いを制するにも、プレイヤーの「練度」が必要である。

▼「接敵後の攻防」を制する
 相手との水平方向への間合いが詰まった状態。格ゲーのように、短い時間で適格に判断していくことが求められる。
 前フェーズと同様の要素が重要となりそうだ。
 攻める側と守る側に分けて考えてみる。
 守る側にとって、このフェーズの攻防を制するとは、相手から距離を取る(=Phase2. に戻る)ことである。そのために、ダッシュをしたり、一時的に高空へ逃げたり、攻めてきた相手に攻撃を当ててダウンさせようとしたりする。必要なのは、ロボの機動力、および迎撃であろう。
 一方、攻める側にとって、このフェーズの攻防を制するとは、逃げようとする相手に攻撃を当てることである。相手の退避ルートを先読みして移動を合わせたり、ボムポッドを置いたりする。必要なのは、ロボの機動力、およびボムポッドであろう。
 ここに、プレイヤーどうしの読み合いが加わり、「駆け引き」が成立する。
 
Point:
 Phase3. は、Phase2. よりも短い時間で攻防が繰り広げられるから、プレイイヤーは、素早く的確に判断することが求められる。
 Phase2. と同様に、ロボ本来の機動力、ボムポッド、読み合いが重要である。
 プレイヤーの「練度」が必要なのも同様である。

3.4 垂直方向の意味は?

 ここまで、「接敵」とか「カスタムロボV2の対戦構造の本質は水平方向の間合いである」などと書いてきた。
 私の持論であって、それが正しいことなのか、分からない。

 ところで、水平方向の話ばっかりしてるけど、垂直方向は?
 そんな声が自分の心の内からも聞こえてくるので、考察しておく。
 多段ジャンプを持つABについて考察するのに、垂直方向を疎かにするわけにもいかない。

(1)垂直方向が持つ意味

 私は、垂直方向は対戦構造の本質ではなく、3フェーズに分解した「駆け引き」それぞれを有利に進めるための一要素である、と捉えている。
 極端な話をすれば、自分だけが永遠に空を飛び続けられるならば、自分側が一方的に超有利である。もはや、「駆け引き」なんて存在しないことになる。アクロバットが禁止されている理由である。
 現実には、永遠には飛び続けていられない。飛ぶことで得た一時的な有利に対する代価を、着地という形で支払うことになる。
 そういう話を、この節で掘り下げてみたい。

(2)垂直方向の機動力を要素分解する

 以下の3要素に分解する。
 なお、実際には、これら3要素は関連しあっている。高度が高ければ滞空時間は長いし、滞空時間が長ければ落下速度は遅い、という具合だ。

・高度(≒垂直方向の間合い)
・滞空時間
・上昇速度・落下速度

 以下、(3)~(5)にて、それぞれの要素の利点や欠点を思いつくままに羅列してみる。

(3)高度

 ここでは、少なくともアイドリングPの爆風を無視できる程度の高度以上、かつ、相手より高度が高い状態を想定する。
 相手の頭上を取ることの強さが詰まっている。

・爆風を一時的に無視できる
・障害物を超えて移動できる
・障害物を超えて射線を通しやすい
・空中は3次元的な動きができるので、相手は攻撃を当てにくい
・一方、自分から見ると、相手は2次元的な動きをしているので、相手に攻撃を当てやすい
・相手の頭上を押さえてガンを撃つことで、垂直方向への回避を難しくする(垂直方向へ回避しようと跳ぶと、垂直にすれ違うタイミングで間合いが詰まって余計に当たりやすくなるためだ)
・以上より、有利な読み合いを展開できる

(4)滞空時間

・滞空時間が長いと、空中にいられる時間が長くなる
 すなわち、高度で挙げた利点を得られる時間が長くなる
・逆に、滞空時間が短いと、高度で挙げた利点を得られる時間が短くなる
・滞空時間が長いほど、着地隙を晒す頻度が少ない。
・滞空時間が長いほど、一般に落下速度が遅い

(5)上昇速度・落下速度

・上昇速度・落下速度は、遅ければ滞空時間が長くなる。
・逆に、速度が速ければ滞空時間が短くなる。
・上昇速度が速いほど、最高高度へ早く到達できる
・落下速度が速いほど、地上へ早く降りることができる
・上昇速度・落下速度が速いほど、相手の攻撃を垂直方向へ避けやすい

(6)対戦の各フェーズにおける、垂直方向の役割

 各フェーズに対して、上で挙げた各利点・欠点を関連付けてみる。
 「接敵を狙う側」の気持ちで書く。「接敵される側」でも同じことが言える。
 両者が地上にいる状態、
 攻める側が地上、守る側が空中にいる状態、
 攻める側が空中、守る側が地上にいる状態、
 両者が空中にいる状態。
 色んな場合が想定できて、それぞれのケースで垂直方向の各要素が発揮する力は変わってくるだろう。中々に難しいが、ともあれ書いてみる。

▼「接敵を狙うかどうか」(=Phase1.)
・爆風を一時的に無視できる

 「接敵」を狙うかどうか、という判断自体に、垂直方向の機動力は関与しない。
 両者が「接敵しない」と判断して、遠距離の回避戦に突入した時、垂直方向の役割が出る。
 高度を出したり滞空したり、垂直速度を生かして、ボムポッドの爆風を回避する。
 回避戦に負けてHPを削られた側が、「接敵を狙う」と判断する。
 空中主体ロボの中では、ABやFOが得意とするフェーズではなかろうか。前者は小回りで回避戦をする。後者は長い滞空時間で爆風を無視する。もちろん、それらロボだって、必ずしも回避戦で有利というわけではない。例えば後者は、グライダーの回避が難しい。

▼「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)
・爆風を一時的に無視できる
・障害物を超えて移動できる・射線を通せる
・相手は攻撃を当てにくい
・空中ダッシュをいつでも出せる

 基本的に、相手に「接敵」するための利点を考えると良い。障害物を超えて直線的に相手を追える、等。
 このフェーズでは、滞空時間は長いほうが良さそうだ。上手く説明できないが、相手を追う上で選択肢が多いという感覚がある。守る側にとっても、高度の高いところで滞空すれば、相手は「接敵」しに行くことができない。
 空中主体ロボの中では、攻める側としてはFV、LSワイドが得意とするフェーズではなかろうか。高度を出しつつそれなりの水平速度が出る。逆に、水平に遅いABは苦手なフェーズであろう。
 守る側限定で、SSハイも得意なフェーズだろう。相手の「接敵」を拒否するために、瞬時に高度を出して逃げることができる。

▼「接敵後の攻防」を制する
・爆風を一時的に無視できる
・相手は攻撃を当てにくい
・自分から見て相手は2次元的な動きをしており、攻撃を当てやすい
・相手の頭上を押さえてガンを撃つことで、垂直方向への回避を難しくする
・上昇速度が速いほど、最大高度へ早く到達できる
・上昇速度・落下速度が速いほど、相手の攻撃を垂直方向へ避けやすい
 
 相手と「接敵」した後、攻撃の当てやすさの視点から利点を考えると良い。
 このフェーズでは、攻める側にとっては「頭上を取ってガンを撃てば相手は垂直に回避できない」こと、逆に守る側にとっては「上昇速度が速いほど相手の攻撃を垂直へ咄嗟に避けやすく、早く最大高度へ到達して攻撃を一時的に無視できる」ことが重要であろう。なお、当然だが、ジャンプ上昇速度を持ち出した話では、そのロボが地上にいる状態から攻防の「駆け引き」が始まっている、という前提がある。空中に居ること前提では、ジャンプ上昇も何もない。
 このフェーズが得意なのは、ジャンプ上昇速度の速いSSハイ、BBハイ等ではないか。細かく動けるABも得意そうだ。

4. ABの本質(副題:ロボの再考)

 ようやくABに関する考察を始める。
 2章、3章にて、カスタムロボV2の対戦とはどんなものか? 水平方向、垂直方向の持つ意味とは何か? を議論してきた。上手く整理できなかったが、ひとまず、ロボを考察するための前提となる結論は得られた。
 ここからは、対戦において必要なロボの性能、すなわち、強いロボ・弱いロボとは何か、という視点からABを論じる。さらに、使い手がロボの性能を発揮する、という視点でも論じる。

4.0 2,3章のおさらい

 4章に入る前に、2,3章の内容をおさらいする。
 全然上手く整理できなかったためだ。

  • 対戦は、「接敵」に関わる3フェーズの「駆け引き」から成る

  • 対戦構造の本質は、「水平方向の間合い」である

  • 垂直方向は、「駆け引き」を有利にする一要素である

4.1 強いロボ、弱いロボ

(1)強いロボであるための最重要条件

 それは、水平方向の速度であると考えている。
 というか、この結論に持っていきたいがために、「カスタムロボは水平方向の間合いが大事なんだぜ」なんて言った。結論ありきの議論なのであった。

 2,3章で述べてきたことを繰り返す。

 カスタムロボV2は遠距離でも攻撃手段のあるゲームであるが、いくつかの対戦を観察すればわかるように、遠距離戦に終始する試合は無い。2D格ゲーやスマブラと同様に、「接敵」してダメージを取ることが基本のゲームだからである。
 ただし、それらゲームと異なり、「接敵後の攻防」の前フェーズに、「接敵を狙うかどうか」「接敵に向けての攻防」という2フェーズが存在する。
 すなわち、「接敵」を成功させる(または拒否する)という攻防が存在しているのだ。

 この「接敵」を成功させる(拒否する)ために、最重要となる要素は何であるか?
 私は、水平方向の速度である、と考えている。「接敵」とは、水平方向に間合いを詰めることに他ならないからだ。

 もちろん、「接敵」を成功させる上で重要な要素は、他にもある。高度であったり、ボムポッドであったり、防御力・我慢値・体の小ささなんかも、要素に含まれてくるだろう。
 だが、それらは、あくまで「駆け引き」の要素にすぎない。「間合いを詰める」ことを試みるなら、「間合いを詰める速度」が必要不可欠である。
 そもそも水平速度で相手に勝っているなら、「駆け引き」の要素を自分から持ち出す必要はない。水平速度で相手より劣っているから、その差分を「駆け引き」の要素で何とか埋め合わせようとするのだ。逆に、水平速度で相手に勝っていたとしても、相手が「駆け引き」の要素を持ち出してくるなら、自分も付き合わなければならない。
 「何とかしないといけない」のは、いつだって水平速度が遅い側なのだ。それだけ、水平速度の速さは絶対的なアドバンテージだと、私は思っている。

(2)各ロボの水平移動速度と距離を算出してみる

 計算方法が合っているか分からないが、ロボの水平速度を算出してみた。

 空中ダッシュを連続して行った時の、1回目のダッシュを入力してからダッシュ終わりまでを計算する。
 ダッシュしないロボは、時間45(SVフェザーの3回ダッシュ時間)だけ最高速度を維持して移動したとする
 なお、より実際的な速度を求めるなら、着地隙やダッシュ後慣性も含める必要がある。

▼ランキング

【瞬間最高速度】
1位:WS、TF(400)
2位:MG、SF(300)
3位:SV(270)、BB(260)
参考:AB(110)

【平均速度】ダッシュ前硬直を考慮
1位:WS(300)
2位:SV(234)、MG(232)
3位:SF(188)
参考:AB(110)

【総移動距離】
1位:FO(18000)ダッシュ回数が多すぎる
2位:SV(10530)
3位:WS(9600)
参考:AB(4950、SVフェザーと同じ時間だけ移動したと仮定)

【分析】
 上記ランキングのすべてに名が挙がっているSV、WSは、やはり水平に強いのだろう。
 一方、弱ロボと名高い(名低い?)SFが、速度ランキングの上位に入っている。強ロボになるための条件は揃っている、ということか。ではなぜ弱いのか。考察しがいがある。
 リトルレイダーを地上移動で計算してみた。速い印象を受けるが、実際には最も遅い。しかも地上を走るから、地形や障害物の影響を受ける。私の中で、リトルは遅いロボである。
 総移動距離については、実質SVが1位だと思う。FOはなんかずるい。
 この他、ステルスの有無とか、ダッシュ前硬直の長さとか、考察に値するポイントはいくつもある。きりがないので辞めておくが。

▼個別計算

●SF
空中ダッシュ速度:300
空中ダッシュ時間:10
空中ダッシュ回数:2回
空中ダッシュ前硬直:6
総移動距離:(300×10)×2回=6000
総時間:(10+6)×2回=32
総硬直時間:6×2回=12
平均速度:6000÷32=188
最高速度:300

●ABハイ
空中水平速度:110
移動時間:45と仮定する
総移動距離:110×45=4950(0.47*SV)
平均速度:110
最高速度:110

●WSハイ
空中ダッシュ速度:400
空中ダッシュ時間:12
空中ダッシュ回数:2回
空中ダッシュ前硬直:4
総移動距離:(400×12)×2回=9600
総時間:(12+4)×2回=32
総硬直時間:4×2回=8
平均速度:9600÷32=300
最高速度:400

●MGグランダー
空中ダッシュ速度:300
空中ダッシュ時間:17
空中ダッシュ回数:1回
空中ダッシュ前硬直:5
総移動距離:(300×17)×1回=5100
総時間:(17+5)×1回=22
総硬直時間:5×1回=5
平均速度:5100÷22=232
最高速度:300

●TFハイ
空中ダッシュ速度:400
空中ダッシュ時間:5
空中ダッシュ回数:3回
空中ダッシュ前硬直:7
総移動距離:(400×5)×3回=6000
総時間:(5+7)×3回=36
総硬直時間:7×3回=21
平均速度:6000÷36=167
最高速度:400

ダッシュ前硬直中も、水平速度は0ではない。
よって、実際の平均速度はもっと速い。

●SSハイ
>空中ダッシュする場合
空中ダッシュ速度:200
空中ダッシュ時間:10
空中ダッシュ回数:4回
空中ダッシュ前硬直:3
総移動距離:(200×10)×4回=8000
総時間:(10+3)×4回=52
総硬直時間:3×4回=12
平均速度:8000÷52=154
最高速度:200
>空中ダッシュしない場合
空中水平速度:140
移動時間:45と仮定する
総移動距離:140×45=6300(0.60*SV)
平均速度:140
最高速度:140

●LRスタビライザー
地上速度:101(ロビン)
移動時間:45と仮定する
総移動距離:101×45=4545
平均速度:101
最高速度:101

●LSワイド
空中水平速度:140(SSと同じって本当か?)
移動時間:45と仮定する
総移動距離:140×45=6300(0.60*SV)
平均速度:140
最高速度:140

●FO
>空中ダッシュする場合
空中ダッシュ速度:150
空中ダッシュ時間:20
空中ダッシュ回数:6回
空中ダッシュ前硬直:2
総移動距離:(150×20)×6回=18000
総時間:(20+2)×6回=132
総硬直時間:2×6回=12
平均速度:18000÷132=136
最高速度:150
>空中ダッシュしない場合
空中水平速度:110
移動時間:45と仮定する
総移動距離:110×45=4950(0.47*SV)
平均速度:110
最高速度:110

●FVハイ
空中水平速度:135
移動時間:45と仮定する
総移動距離:135×45=4950(0.58*SV)
平均速度:135
最高速度:135

●BBハイ
空中ダッシュ速度:260
空中ダッシュ時間:20
空中ダッシュ回数:1回
空中ダッシュ前硬直:2
総移動距離:(260×20)×1回=5200
総時間:(20+15)×1回=35
総硬直時間:15×1回=15
平均速度:5200÷35=149
最高速度:260
※ステルスダッシュ

●SVフェザー
空中ダッシュ速度:270
空中ダッシュ時間:13
空中ダッシュ回数:3回
空中ダッシュ前硬直:2
総移動距離:(270×13)×3回=10530
総時間:(13+2)×3回=45
総硬直時間:2×3回=6
平均速度:10530÷45=234
最高速度:270
※ダッシュ終わりに慣性も乗る
空中水平速度:160
※ステルスダッシュ

(3)(メモ段階)移動手段の考察

 地上を移動する、ジャンプで移動する、空中ダッシュで移動する
 移動の前隙、後隙
 それぞれが持つ意味について述べる。

 地上移動、ジャンプ移動、ダッシュ移動。それぞれの速さはどうか。最も継ぎ目なく滑らかに動けるロボは何か、どんな性能を持っているのか。最もメリハリを付けて瞬間的に動けるロボは何か、どんな性能を持っているのか。それらを両立するロボは存在するのか。SVフェザー、WSハイ、MGグランダー辺りは両立している気がする。
 最高速度、加速度(初速、小回り)、前後隙について考えることが必要。

 移動の前隙には相手の先読み行動が刺さる。移動の後隙には相手の後出し行動が刺さる。当然、後出しのほうが相手にとって判断が楽。よって、移動は前隙が小さいことより後隙が小さいことのほうが大事。前後隙の両方が大きいSFは辛い。
 移動の前隙が大きいと、プレイヤーの「判断」が反映されるまでに時間がかかる。この話は操作性の項目にて。

 地上は障害物が邪魔。空中は障害物を避けられる。
 地上移動はほとんどのロボで小回りが利く。
 ジャンプ移動は着地隙があり、このタイミングで速度が0になる。
 空中加速が低いと空中で融通が利かない。
 空中ダッシュ、多段ジャンプには前隙も存在する。着地隙も大きくなる。

 速度が0になる行動。

(4)ロボの強弱を決める性能

 水平速度が速くとも、一度に移動できる距離が長くとも、それだけで直ちに強いロボとはならない。
 実際、SFは速度ランキングの上位であったが、弱ロボと評価されることが多い。TFも、最高速度こそWSと並んで1位であるのに、弱ロボと評価されることが多い。
 逆に、SSハイは水平に速くないのに、SV、WSに並ぶ強さであると評されることが多い。
 水平方向の最大値がこのゲームの全てであるなら、全ロボがフォーミュラー、ロングバーニア、ワイドジャンプを履くだろう。現実にはそうはなっていない。

 ロボの強弱を決める性能は、水平速度のみではない。
 ロボの持つ様々な性能が絡み合って、ロボの性質を生み出す。そして、その性能と性質で以って、ロボの強弱が定まる。

 思いつく限りの性能を挙げてみる。
 ロボ毎の考察は別で節を設ける。そちらを見ること。

・地上加速
・地上最高速度
・地上旋回性能
・ジャンプ上昇速度
・落下速度(滞空時間)(空中下加速)
・ジャンプ高度
・空中水平最高速度
・空中加速(空中横加速)
・空中ダッシュか、多段ジャンプか
・ステルスがあるか
・ダッシュ速度、多段ジャンプ速度
・ダッシュ時間、多段ジャンプ時間
・ダッシュ距離、多段ジャンプ高度
・ダッシュ回数、多段ジャンプ回数
・ダッシュ前隙、多段ジャンプ前隙
・ダッシュ方向(上昇・平行・降下)
・通常着地隙
・ダッシュ、多段ジャンプ後の着地隙
・防御力
・攻撃力
・我慢値
・体の大きさ
・腕の長さ(銃口までの長さ)
・被弾後の硬直の長さ
・アタック

4.2 理論値と練度

(1)ロボの理論値とは

 似たような話を何度も繰り返す。4.1節(1)も参照されたい。
 私は、このゲームにおけるロボの理論値は、動きの最大値(特に水平方向)が大部分を占めると考えている。すなわち、一度に長い距離を素早く色々なルートで移動できるか?ということだ。これを持つロボが、理論上は最も強いと考える。
 なぜならば、カスタムロボV2の試合の大部分は、「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)であると思うからだ。さらに、水平方向に速いロボは、「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)と、「接敵後の攻防」(=Phase3.)との境界を曖昧にする。言い換えれば、Phase2. とPhase3. の攻防を、同時に制してしまうのだ。

 具体的に考えてみる。
 SVは、速く長いステルスダッシュを3回も持つ。フェイントを掛けながら、色々なルートから素早く接近(または退避)できる。ダッシュの総移動距離がトップで、ステージの端から端までを3回のダッシュで移動できる。ステルスまで生かして瞬時に相手へ詰め寄ることができる。よって、攻めるSVにとって「接敵に成功した」=「攻撃を当てることに成功した」であることも多く、すなわち、Phase2. とPhase3. の攻防を同時に制したと言える。逆に、逃げるSVにとって、「接敵」されてしまった状況において、「攻撃を回避することに成功した」=「退避に成功した」であることも多く、Phase3. とPhase2. を同時に制したと言える。
 WSは、非常に速い降下ダッシュを2回持つ。瞬間の速さだけならSV以上で最速であり、ダッシュの総移動距離もSVに次ぐ。WSの例は、3.1節(4)に示したので省略する。SVと同様である。
 TFは、非常に速いダッシュを3回持つ。瞬間の速さはWSと同等、ダッシュ回数はSVと同等である。動きの最大値は悪くない。SV、WSと比べ、一度のダッシュで移動できる距離が短い。ダッシュ前硬直も長く、平均の速さは速いわけではない。それらの点で劣る。
 SFも、ダッシュの瞬間速度はSV以上、平均速度もSVに次ぐ。ただし、ダッシュ回数は2回で、総移動距離はTF相当。理論値はそこまで悪くないが、SV、WSには劣る。
 MGは、長いダッシュを1回だけ持つ。SVより速く、長い距離を移動できる。しかし、1回しかダッシュできない。理論値はSF、TFにも劣るだろうか。余談だが、連射コンでMGグランダーのダッシュを連打させる動きを見たことがある。特に相手から逃げる場面において、非常に強力であった。MGは最速のジャンプ&ダッシュ入力をすると水平方向に爆速となる。

 ここまで、水平方向のみ考えてきた。垂直方向の動きの最大値も考えてみる。
 禁止級であるSSワイドを考えてみる。ジャンプ主体のロボとしては水平方向に速く、平均速度はSF以上であろう。しかも垂直方向にも高く速い。WSハイは高度も出るのだが、ジャンプ主体ロボであるSSほど、空中の柔軟性には優れない。SSワイドは、水平にも垂直にも十分な強さを持つから、禁止級となっている。
 SSハイは禁止されていない。水平に遅いから許されているのだろう。ただし、垂直方向の最大値はトップクラスである。これは、「駆け引き」のPhase2. とPhase3. において、特に守る側となった時に重要な役割を果たす。

(2)短所・足枷は、理論値の出力を邪魔する

 SFやTFは、理論値だけ見ると悪くないようだが、実際には弱ロボとされている。
 理論値が高いことと、理論値を現実に出力できることは別であるようだ。
 考察してみよう。

▼SFを例に考える
 SFの理論値出力を邪魔する短所は、動作の前後隙であると考える。
 動作の前隙としては、地上加速が遅かったり、ダッシュ前隙が長かったり。ジャンプ上昇速度も、空中加速も低い。後隙としては、着地隙が非常に大きい。これらに、相手の攻撃や接近が刺さりまくる。
 レッグで補正しようにも、補正すべき短所が多すぎて庇い切れない。
 WSも、SFに近い性能の部分はある。ジャンプ上昇速度と空中加速の低さだ。これらはハイジャンプを履くことでカバーできる。ジャンプ上昇速度を強化して、垂直方向の最大値を向上させる。次に、跳び上がった後の状態は、空中加速が低いため隙が大きい……ように見せかけて、高速降下ダッシュがあるので、水平に高速移動しつつすぐに着地できる。高速降下ダッシュのおかげで、空中性能が低いという短所を相手に晒さないのだ。ダッシュ終わりと同時に着地すれば、着地隙も小さくて済む。
 対してSFはどうか。仮にハイジャンプを履いてジャンプ上昇速度を強化して高度を出しても、ダッシュが終わってから着地するまでの、SFの弱い部分の時間が延びる。カバーしきれていない。
 逆に、空中加速(+地上加速)を補正しようとグランダーを履けば、ジャンプ上昇速度が遅くなりすぎて、これまた隙だらけである。弱いジャンプにスナイパーがバカスカ当たる。
 ショートバーニアを履けば、私の挙げた短所はおおむね改善されて、理論値を出力しやすくなる。その代償に、理論値そのものが下がる。本末転倒である。
 ワイドジャンプやロングバーニアを履けば、理論値は上がるが、短所をカバーできていない。操作が難しくなって練度が要求されるようになり、理論値の出力を邪魔する要素が減るどころか、増えてしまう。

▼TFを例に考える
 TFの理論値出力を邪魔する足枷は、体の大きさと被弾硬直である。本当に致命的だ。
 体が大きいせいで、相手の攻撃にバカスカ当たる。「接敵に向けての攻防」(Phase2.)において、相手の攻撃が当たらないように「接敵」するには、非常にシビアな移動を要求されてしまう。相手から逃げようとする場合も同様だ。ステルスダッシュでガンを消せるSVとは大違いである。
 被弾硬直の長さも拍車をかける。ただでさえ相手の攻撃が当たりやすいのに、被弾硬直が長いせいで、色んなコンボが繋がってしまう。単にウェーブポッドが連続被弾するだけで致命的である。
 SF同様、ダッシュ前隙が長いのも気になるが、これは許容しよう。TF限定で、ダッシュ前隙中も速度が保持されているらしい。完全に硬直しているわけではない。
 地上移動も短所だが、TFが理論値を出力する上では関係ない。
 本当に、体の大きさと被弾硬直がすべてを台無しにしているロボである。
 そして、非常に残念なことに、これらはレッグで補うことができない。どうやっても打ち消せない足枷を、TFは抱えている。

▼反対に、理論値の出力を助ける長所とは
 SV(&BB)の理論値出力を助ける長所を考えてみる。
 TFの項で触れたように、ステルスである。ただでさえ機動力の高いところに、相手のガンまで無視できる。
 リトルワイドの体の小ささなんかも、理論値出力の助けになっているだろう。相手の迎撃が当たりにくいので、「接敵」を狙う場合に都合が良い。

(3)理論値を出力するには練度が必要である

 2.2節(1)~(6)も参照されたい。
 理論値を出力できるかどうか、高い出力を安定して出せるかどうかについて、(2)の短所・足枷に引き続いて、練度も関わっている。

 人間がロボを操作する以上、プレイヤーの「操作精度」「立ち回り」「判断力」といった要素は、必ず発生する。これらを、単に「練度」と称する。
 練度が高ければ、操作ミス無く思い通りにロボを動かせて、戦況に応じた攻防バランスを理解し、的確な判断力と技術によって、相手との読み合いまで含めた攻防を制することができる。
 私の言う理論値とは、「操作精度」「立ち回り」「判断力」を限界まで高めた状態での、そのロボの出力のことだ。
 そして、私の予感は、SVこそが、最も理論値の高いロボ(最も勝てるロボ)だと言っている。すなわち、思い通りの場所に必ず着地できるまでダッシュ精度を極め、試合を成す各フェーズにおいて為すべきことを正しく理解し、相手の動きを未来予知できるならば、SVが最強である、と考えている。

(4)保険は、理論値と現実を埋める

 しかし、現実には、練度を限界まで高めることは、TASかチートでもなければ難しい。また、限界まで高めることを目指すにしても、操作の楽なロボと難しいロボがいるように、習熟に必要な練習量・センスは異なる。
 理想と現実のギャップを埋め合わせるために、他のパラメータも重要となる。

▼保険の例
 例えば、SVフェザーの保険を考えてみる。SV(スタンダードレッグ)は、強力な水平移動こそ持つものの、人間が完璧に操るのは難しい。短い滞空時間の中で精度良くダッシュすることが難しいことに加え、ジャンプが低く障害物や爆風の影響を受けやすいからだ。私の言う理論値(動きの最大値)は、ダッシュを阻むはずの障害物をも利用して、苦手な高度すら稼いでいく動きであるが、これを人間がこなすのは相当難しい。そこで、使い手は、SVにフェザーを履かせることで、地上加速と空中移動力を補正してダッシュ以外の移動も柔軟にできるようにしている。さらに、ダッシュ後の大きい着地隙をケアしつつ、滞空時間を延ばしてダッシュの使い方に幅を持たせている。理論値は、ワイドジャンプ等を履いて着地隙を晒すことなく無限に着地キャンセルし続ける動きであろうが、現実には難しいため、フェザーを履かせている、という解釈だ。しかも、そんなTASのような動きをせずとも、出力で相手を上回ることは十分可能だから、理論値を上げる方向ではなく、取り回しの良い方向へ強化している、と思っている。なお、ここで述べた理想的な動きを実現しつつある人間がいる、という事実は、本当にあった怖い話だ。
 今度は、SVと比較しながら、MGの持つ保険を考えてみる。4.2節(1)で見たように、理論値はSVより低く、一線級ではない。加えて、身体が大きいため被弾しやすい。しかし、それらを解消できる保険を、MGは持っている。MGに不足している性能は、防御力と我慢値の高さで丸く許される。付け加えれば、動きの鈍重さは、操作のしやすさにもつながり、その意味で人間に優しいロボと言える。

(5)理論値の言い換え

 《研究論》を一通り書き終えた後で、良い言い換えを思いついたので追記する。
 理論値とは、そのカスタムが持つ潜在的な強さである。ポテンシャル。
 理論値が高いとは、ポテンシャルが高いということ。そして、そのポテンシャルを現実のものにできるかどうかには、使い手の練習が必要になる。

4.3 操作性に関する考察

 4.2節に含めるか迷ったが、別で節を立てることにする。
 ここでは、操作性について考察する。
 2.1節(1)で触れて以来、ここまで触れてこなかった。
 操作しやすい、操作しにくいことが、どんな意味を持つのだろうか?

(1)2.1節(1)のおさらい

  • カスタムロボV2の操作性は、パーツ選択によって変化する

  • 「機敏な動きで攻撃をかわすゲーム」にも、「慣性のある動きで先読みが必要な遊び」にもなる

  • ロボの機動力だけでなく、ガン・ボム・ポッドの前後隙も操作性の要素である

(2)操作性を決める要素

 いくつか羅列してみる。
・速度
・加速度
・地上旋回性能
・慣性
・動作・行動の前後隙
・入力遅延(レイテンシー)、ラグ

(3)操作しやすいと、何が嬉しいのか

▼素朴な理解
 4.2節(3)の中で、練度の3要素とは、「操作精度」「立ち回り」「判断力」であると解釈した。
 単純に捉えるなら、操作しやすければ、プレイヤーの「操作精度」が向上する。あるいは、プレイヤーに要求される「操作精度」のハードルが下がる。
 例として、SVにフェザーを履かせれば操作しやすくなって「操作精度」が向上する、等。

▼本記事における解釈
 プレイヤーは、事前に定めた方針「立ち回り」に沿ってロボを「操作」し、場面場面の「駆け引き」において「判断」し、ロボにさらなる「操作」を加える。
 プレイヤーの「立ち回り」や「判断」を反映したものが、「操作量」と言えよう。
 すなわち、操作しやすければ、プレイヤーの「立ち回り」や「判断」がゲーム画面上に精度良く反映される、ということなのだ。
 これが、操作性のもたらす重要な意味である。
 これも例を挙げよう。
 最も簡単な例として、SSハイスナイパー VS WSマグナムを挙げる。自分はSSハイスナイパーで、相手はWSマグナムだ。相手のダッシュマグナムに合わせて空中撃ちスナイパーを撃ったが、相手のマグナムが間に合ってスナイパーは発射できなかった。(1)で書いたように、「ガンの発射前隙」は操作性を決める要素であった。この要素が、ゲーム画面上においてプレイヤーの「判断」を反映したか、しなかったか。前隙の小さいマグナムは反映して、前隙の大きい空中撃ちスナイパーは反映しなかった(反映が間に合わなかった)、ということだ。

 以上をまとめる。
 操作しやすいと、「操作精度」が向上し、「立ち回り」や「判断」がゲーム画面上に精度良く反映される。
 これを、私は、練度の3要素にブーストがかかる、と解釈する。
 そして、練度が高くなれば、ロボの出力は理論値に近づいて安定する。

4.4 ABの本質

 本題のABに入る。
 私は、《考察論》の中で、ABの様々な『性質』を導いた。
 これらのうち、ABの根本を成すものを、『本質』として取り出す。
 4.1節~4.3節の議論を、そのままABに当てはめていく。


 4.4節では、ABハイを前提とする。おそらく、履くレッグに依っても結論は変わってくるから。

(1)ABの強み(練度ブースト)

▼『性質(15) 使い手が操作しやすい』
▼『性質(16) 使い手の意志を即座に精度良く反映する』

 ABは、高い空中加速と多段ジャンプを持つ。非常に制御しやすいロボである。
 また、水平速度が遅いことも制御のしやすさにつながる。私は短所として書くことが多いけれども。
 これがもたらすものは、4.3節(3)で述べた。

 操作しやすければ、プレイヤーの「操作精度」が向上する。
 操作しやすければ、プレイヤーの「立ち回り」や「判断」がゲーム画面上に精度良く反映される。

 以上を、練度の3要素にブーストがかかる、と解釈する。
 そして、練度が高くなれば、ロボの出力は理論値に近づく。 

 ABは、理論値を安定して出力しやすいロボだ。
 これが、私が考えるABの本質的な強みである。

(2)ABの弱み(低い理論値)

▼『性質(10) 攻め切ることが苦手、逃げ切ることが苦手』

 残念ながら、ABは環境ロボになり得ない。
 私の経験則たる《考察論》からも、理論たる《研究論》からも、少なくとも私には、そう結論付けるしかなさそうである。
 その理由は、ABは出力の最大値(理論値)が低いからである。
 
出力で相手を上回れなければ、当然、勝てない。練度の高いSV、WSの平均出力は、ABの理論値を平気で上回ってくる。

3.1節
 対戦は、3フェーズの「駆け引き」から成る。
Phase1.
 「接敵を狙うかどうか」を判断する
Phase2.
 「接敵に向けての攻防」を制する
Phase3.
 「接敵後の攻防」を制する

3.2節
 カスタムロボV2の対戦構造の本質は「水平方向の間合い」である
4.1節(1)
 強いロボであるための条件は、「水平方向の速度」である
4.2節(1)
 ロボの理論値は、動きの最大値(特に水平方向)が大部分を占める

 今更だが、対戦の3フェーズの中で、最も重要なのはどれか?
 私は、Phase2. だと考えている。
 そもそも「接敵に向けての攻防」を制しないと、攻撃を当てるための「接敵後の攻防」に進めないのだ。フローチャートを思い浮かべてもらったら分かりやすいと思う。
 SVやWSのインチキな部分はここにある。2.4節でも述べたように、これらのロボは、Phase2. とPhase3. を同時に制することを平気でやってくる。
 ABを始めとして、水平速度の遅いロボは、そんなことはできない。Phase2. を制して、ようやく、Phase3. の攻防へ移行するというのに。

 ABは、そもそもPhase2. を制するために必要な水平速度を大きく欠いている。よって、相手がSVやWSといったロボの場合、ABが攻める場合にPhase3. に進めない。しかも、反対に相手が攻める場合はPhase2. とPhase3. を同時に制してくる。相手がSVやWSでなかったとしても、ほぼすべてのロボに水平速度で負けているから、Phase3. へ進むのに苦労する。
 強ロボと言われるSSハイは、相手を追ったり、逃げたりする点では、ABと同様に苦労することは多い。しかし、彼女は、Phase2. やPhase3. で「駆け引き」を有利に運ぶための、垂直方向への最大値を持っている。相手の「接敵」を容易に成立させないだけの、垂直方向への速度と高度を持っている。ABには、それ”すら”ない。

 これまでの私の議論から導く限りにおいて、ABの理論値は、残念ながら低いと言わざるを得ない。

 なお、ABと同様の欠点を抱えるロボに、地上型リトルがある。
 空中小回り型のAB、地上型のリトル。どちらも回避こそ得意だが、相手を追ったり逃げたりするのは苦手である。
 少し差異を見出せば、ABのほうが相手を追うのは得意であろう。高度を出して射線を通しながら追うことができる。地上型リトルは障害物に射線を阻まれ、追うためのルートも限られる。
 一方、逃げるのは地上型リトルのほうが得意であろう。体が小さく、障害物を利用しながらすばしっこく逃げ回ることができる。ABは基本移動がジャンプであるから、障害物から体を出しがちで、高度を出して逃げても、着地に接近と攻撃を合わせられてしまう。

(3)ABは、低い理論値の範囲内で、安定して高い出力を出せる

 (1)と(2)をまとめると、標記となる。
 操作がしやすい、立ち回りがしやすい、判断がすぐに画面へ反映される、と言っても、できることは少ない。
 あくまで、ABの出せる出力の限りで、自分のやりたい立ち回りや判断を精度よく実現できる、というだけだ。

(4)使い手がABに求めること

▼使い手は、練度ブーストを求めてABを採用する。
 初心者にとっては、「操作精度」の向上が、そのまま優位に働く。ゲームの操作そのものに慣れていないからだ。ABはSVのように使い手を振り回したりはしない。初心者どうしの対戦では、ロボを上手く操れた側が勝利する。
 初級者にとっては、操作しやすいことにより、使い手が操作以外の部分、「立ち回り」「判断」へ脳のリソースを割ける点で優位に働く。立ち回りを学び始めた初級者どうしの対戦では、相手より「立ち回り」の質で上回った側が勝利する。
 中級者にとっては、使い手の「立ち回り」「判断」がゲーム画面上へ精度良く反映される点で優位に働く。独自の「立ち回り」を確立している中級者どうしの対戦では、「立ち回り」「判断」を素早く、そして精度良く実行できた側が勝利する。
 上級者どうしの対戦では、お互いの練度も煮詰まってきて、いよいよ、理論値や相性の要素が強く出てくる。このレベルになるとABは辛い。ABは、理論値の低さを補うために「練度をブースト」している。練度が飽和してきたら、ABの練度ブーストは役目を終える。練度が飽和しておらずとも、相手の平均出力がABの理論値を上回ってきたら、ABに勝てる見込みは無い。

(5)ABが使い手に求めること

▼ABは、使い手に練度を求める
 ABが使い手に求めるのは、ABの強み(練度ブースト)を生かすこと、ABの弱み(低い理論値)をカバーすること、である。
 結局のところ、ABは使い手に練度を求めている。
 なぜ練度を求めるのか? 理論値が低いからだ。「練度ブースト」”込みで”、相手より一歩先を行かないと、弱みを補えない。
 私は《考察論》の中で、「相手から逃げ切れないから迎撃しよう」という、弱みを補うための立ち回りを示した。迎撃には「立ち回り」や「判断」で相手を上回る必要がある。これは練度だ。
 私は《考察論》の中で、「相手を攻め切れないから相手に攻めさせよう」という、弱みを補うための立ち回りを示した。攻める選択を相手に取らせる「立ち回り」をして、かつ、的確な「判断」で迎撃を成功させる。必要なのは練度だ。
 
 ちなみに、ロボが使い手に練度を求めるという話は、ABに限ったことではない。
 ずっと例に挙げているSVも、その理論値の高さを生かすためには練度が必要だ。
 ただ、ABとSVでは、練度を求める理由が違う。片や、理論値が低く理論値を目指さないと勝てないから練度が必要。片や、理論値の高さを生かすため、安定した出力を得るために練度が必要。
 練度はどのロボにも必要で、必要とする理由がロボによって異なる、ということであろう。

 以上4.4節が、私の考えるABの本質である。

4.5 他ロボの考察

 4.3節までの議論を、AB以外のロボに当てはめることで、カスタムロボV2におけるロボへの理解を深める。また、ABと比較することで、ABへの理解を深める。ABとの上位互換に思われるロボについては、それらとABを差別化するポイントも示す。
 私はAB以外のロボへの知見に乏しいので、それぞれのロボの専門家が私の考察を読んだ時、「それは違うんじゃないか」となるかもしれない。

(1)評価表

 私の考える各ロボの強さをまとめることにした。
 レッグは、環境でよく見るものについて考えた。
 S,A,B,C,Dの5段階にしよう。

 同一評価内では、左にあるほうが強い。
 合わせるパーツ次第で、強さと相性は変わりうる。評価Cのロボが評価Sのロボに勝つことも当然あるだろう。

S:環境レベル
 SVフェザー WSハイ
A:準環境レベル
 SSハイ MGグランダー FVハイ FO(フェザー、ワイド)


B:中堅上位
 LSワイド SSフェザー BBハイ MGハイ SVハイ TFロング
C:中堅下位
 ABハイ ABロング LSスタビ TFハイ TFワイド


D:競技シーンで、自分なら出さない
 LR SF

●解説
 SVフェザー、WSハイは水平に極めて速い。しかも、前者はステルス、後者は防御力と垂直方向への機動力(ジャンプ高さと高速降下)も備える。文句なしのS。
 SSハイ、MGグランダーはSと迷ったがA。SSハイはジャンプが極めて高く速い。水平機動力が低い点を厳しく見てAとしたが、垂直方向の機動力だけでSに迫る圧巻の性能。MGグランダーは高い水平機動力と防御・我慢値の両立を評価。ただし、Sのロボと比べて回避性能に限界があるため、Aとした。
 FVハイ、FOはどちらも滞空時間の長い高空系。ともにA。滞空時間が長いので立ち回りの面では強いものの、動きが緩慢なので瞬間の駆け引きでSのロボに劣ると思った。よってSSハイと比べても低い評価。
 Bは中堅上位。強い部分が目立つが、万能ではないという印象。LSワイドは地上空中両方で速いけどリトルだからすぐダウンする点が残念。SSフェザーは使っている人が少ないが滞空時間の長いジャンプ系ロボとしてFVハイに次いで強いと思う。BBハイはG,P型の撃ち上げでハメられると弱いのが気になる。MGハイはよく使っている人を見るが私の中で評価が高くない。MGに欲しいのは垂直方向の強化ではなく我慢値を生かした位置取りをサポートするための小回り強化とダッシュの取り回し強化だと思う。SVハイも似たような話で、垂直方向の強化も勿論良いのだが、それ以上にダッシュの取り回しを強化したほうが総合的にはいいと思う。TFロングはCと迷ったが理論値は高いと思ったのでB。
 Cは中堅下位。かなり場面を選ばないと出していけないロボ達。ABハイ、ABロングは水平に遅く、環境最上位のSVとWSに対して非常に厳しい相性。LSスタビも水平に遅く同様。TFハイ、TFワイドは高性能なのに体が大きいという足枷が重すぎる。無理レベルの相性のガンが多すぎる。
 Dは弱ロボ。私なら大会で出さない。LRはCと迷ったがD。LSスタビとの差は、本体ロボのアタック性能に尽きる。LSワイドやLSスタビが戦えるのは、高いアタック性能も結構な部分を占めている。LRのアタックも弱くないのだが、LSに劣る。SFは文句なしのD。全ロボで唯一長所(使い手が能動的に生かせる基本性能)が無い。好きだけどね、SF。

(2)SFの考察

 4.2節(2)で一通り書いたので、詳細は省略する。

▼SFの強みと弱み
 全ロボで唯一、長所(使い手が能動的に生かせる基本性能)が無い、筆者は考えている。
 空中ダッシュによる水平速度は悪くないものの、SFの理論値を出力するには、動作の前後隙が大きく空中性能が悪い。
 しかもカバーすべき短所が多すぎてレッグで補いきれない。
 ならばと、レッグで長所を作る方針にすると、短所が肥大する。
 あっちを立てればこっちが立たず、である。

▼ABハイとの違い
 ABには、空中加速という長所がきちんとある。
 SFは理論値を安定して出力できないのに対し、ABは安定して出力できる。ただし、理論値自体はSFのほうが高いだろう。

(3)WSハイ

 万能の鬼神。

 ここまで全編にわたって例として引き合いに出してきたので、詳細は省略する。

▼WSハイの強みと弱み
 対戦構造の本質「水平方向の間合い」に対して、速度で回答する。
 2回の高速降下ダッシュが特徴。速すぎて、「接敵すること」(=Phase2.)と「接敵した後に攻撃を当てること」(=Phase3.)を同時に行う。
 水平方向に速いことは勿論だが、垂直方向にも十分に動けて、立体的な機動力を持つ。垂直方向への上昇速度と高度はハイジャンプに、落下速度は降下ダッシュに由来する。
 おまけに防御力も高い。
 弱みは、操作が難しいことだろうか。私はあまりWSハイを扱ってこなかったから、それくらいしか思いつかない。
 ダッシュが速すぎる上に降下するので、慣れるまでは操作に苦労する。これは、練度が要求されるということ。つまり、プレイヤーの「判断」を画面上に反映するには高い「操作精度」を要求される、ということだ。
 ただし、この弱みはプレイヤーの練度が向上すると解消されていく。そうすると、欠点らしい欠点のない、超万能ロボに仕上がる。もちろん、個々の要素で見ればWSハイを上回るロボは存在するが、弱みらしい弱みが無くハイレベルに何でもこなせてしまう超万能ロボは、WSくらいではなかろうか。

▼ABハイとの違い
 水平速度と操作のしやすさが、そのまま違いだろう。
 その他、防御力も触れておきたい。WSの機動力は相手に「接敵」を許さないくせに、防御力まで高い。頑張って攻撃を当てても、リターンが小さいということだ。ABは相手に「接敵」を許しやすいくせに、防御力が低い。

(4)MGグランダー

MGグランダーの強み
 高い防御力と我慢値が特徴のロボ。使い手は、この防御力と我慢値を生かした「立ち回り」が求められる。
 防御力・我慢値が高いので行動のリスクが小さい一方、攻撃力が高いので行動を通せた時に大きなリターンを得られる。反対に、相手の行動のリスクを増やし、相手の行動のリターンを減らす。このロボは、2.1節で触れたリスクリターンが非常に良い。MGの本質は何かと問われたら、自分はリスクリターンだと答える。
 鈍重さに反して機敏に動ける。地上移動は加速が高く、静止状態からでも素早く動ける。空中性能は悪いが、ジャンプ上昇速度、落下速度は速い。垂直方向に機敏である。空中ダッシュは1回しかないが、長い距離を速く移動できる。地上移動、垂直速さ、空中ダッシュを使いこなすことで、意外と高い機動力を得られる。
 グランダーを履かせると、ジャンプの高度や速度が低下して垂直方向への回避は不得意となってしまうものの、得られる恩恵は大きい。空中加速が上がって、ジャンプを使って水平方向への回避や細かい位置調整が可能になる。着地隙が大幅に減るので、空中ダッシュを積極的に使っていけるようになる。結果として、対戦において重要な水平方向の機動力が上がる。ジャンプ高度の低下は気になるが、一般的な高さの壁に乗る上で不都合はない。余談だが、MGはグランダーの空中加速補正が他ロボより高いようだ。
 ここまでの強みをまとめる。
 防御力と我慢値の高さは、リスクリターンの面で有利に働く。
 機動力は意外とある。特にグランダーを履くと水平方向に強くなる。
 我慢値を生かして、他のロボにはできない位置取りが可能である。グランダーで得た小回りは、その位置取りをサポートする。

▼MGグランダーの弱み
 グランダーを履いてしまうと、垂直方向に弱くなる。場面場面の「駆け引き」において、多くの相手から一方的に頭上を取られてしまう。我慢値という「駆け引き」の材料は持っているし、防御力という「駆け引き」のリスクを減らすものも持ってはいるが、頭上から一方的に攻撃を浴びせられるのは厳しいものがある。
 また、頭上からの攻撃を筆頭に、攻撃を回避することが得意ではない。体が大きいためだ。SVも垂直方向に弱いのだが、SVは頭上からの攻撃を回避しながら退避するだけの回避力がある。MGは体が大きくSVほど回避できない。

▼ABハイとの違い
 ABは相手の攻撃を回避することが前提で立ち回る。対してMGは、攻撃を受けることを前提に立ち回ることができる。もちろん、MGも回避を志すのだが。
 双方とも小回りが利く。さすがにABのほうが上だが、MGグランダーも十分な小回りを持つ。
 ABは垂直方向に動けるが、MGグランダーは動けない。「接敵後の攻防」(=Phase3.)において利いてくる。とはいえ、その前段階、「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)を制する性能は、水平に速いMGグランダーのほうが高い。

(5)TF

 4.2節(2)で一通り書いたので、詳細は省略する。

▼TFの強みと弱み
 3回の短い高速ダッシュが特徴。
 空中加速の高さも相まって、機動力が高性能。
 しかし、体の大きさと被弾硬直という2要素が致命的な足枷になっている。しかも、その足枷はレッグで補正できない。
 機動力と防御力以外にも重要な要素があると教えてくれるロボ。

▼ABハイとの共通点
 空中加速が高く、水平方向への細かい間合い調整が得意である。

▼ABハイとの違い
 最大の違いは、体の大きさではないだろうか。TFはABと異なり空中加速を生かした回避ができない。
 多段ジャンプか空中ダッシュか、という点も重要である。ABは垂直方向に、TFは水平方向に動きの最大値が高い。復習として書くと、垂直方向は「駆け引き」を有利にする要素、水平方向は対戦構造の本質(「駆け引き」そのもの)である。

▼ABハイをTFと差別化して運用する
 いくらABと挙動が似ていると言っても、わざわざ差別化を考える必要はない。TFにとって、体の大きさ、被弾硬直の長さが致命的すぎるからである。

(6)SSハイ

 垂直跳びの女王。

▼SSハイの強み
 垂直に高く速いジャンプが特徴で、強さはここに集約される。あまりにも速いので、間合いにもよるがフレイム程度なら余裕で振り切ることができる。しかも、最大高度が非常に高い。
 特に、短い時間でたくさんの「判断」が必要となる「接敵後の攻防」(=Phase3.)において強い。相手が先に出した行動に対して、後出しが間に合って、しかも一方的な有利を取れてしまう。
 まず、攻める側になった時を考える。「接敵」に成功した時、瞬間的に頭上を取ってSSハイ側が一方的に射線を通して有利な展開に持ち込める。ただし、空中ダッシュを使って「接敵」するのはオススメしない。降下ダッシュであるから「接敵」した時点で高度が下がってしまっているし、着地隙が大きくなるため「接敵」に成功した後再度跳び上がるまでに長い時間が生まれる。着地隙を晒している間に、相手に退避されてしまう。
 次に守る側だ。相手に「接敵」を許しても、上述の通り、相手の攻撃を振り切って高空へ逃げることができる。相手のガン後隙に、高空からカウンターをお見舞いしよう。ただし、高空へ逃げた後、相手の「接敵」行動にリスクを付けられなかった場合、今度は着地際でSSハイ側に不利な読み合いが発生する。

▼SSハイの弱みと間合いに対する深考
 弱みは水平速度が遅いことであろう。相手を追うのも、相手を振り切るのも苦手だ。私の持論をベースにすれば、理論値が高くない、ということだ。
 ところで、私は、FVハイやLSワイドと比べて水平に遅い印象を持っていたのだが、実は、それらと比べて空中水平速度が特別劣っているわけでもない。むしろ、空中ダッシュがある分だけ速いはずだ。
 なぜ、私がこんな印象を持ったのか? 2つ、心当たりがある。
 1つは、SSハイの垂直機動力が高すぎて、相対的に水平速度が遅いと感じているのではないか。
 もう1つは、相手との3次元的な間合いが”遠い”ため、間合いを詰める速度が遅い、と感じているのではないか。高度が出るSSハイのほうが、垂直水平2つの平方で表される間合いは”相手から遠い”のだ。FVハイやLSワイドは、より低い高度であるから、その分だけ”相手に近い”。同じ水平座標からジャンプして地上にいる相手へ接近した時、水平座標の推移は同じでも、相手との間合いの推移はSSハイのほうが大きい。

▼ABハイとの共通点
 攻める時に、高度を出すこと。
 回避・カウンターが得意であること。

▼ABハイとの違い
 ABハイがSSハイに勝っているのは、空中加速と垂直方向への自由度
、着地隙である。肝心の速度は、水平にも垂直にも負けている。
 SSハイのほうが空中水平速度が高く、しかも空中ダッシュも持つ。垂直についても、非常に高い高度へ即座に到達できる。ABはジャンプ上昇速度こそ速いものの、SSハイと同様の高度へ到達するためには多段ジャンプを必要とする。その分だけ時間がかかり遅い。

▼ABハイをSSハイと差別化して運用する
 多段ジャンプ、着地隙の小ささ、地上最高速度を生かしたい。
 まず、多段ジャンプのおかげで、高度や滞空時間に幅を持たせることができる。落下し始めても再度上昇することができる、というのは、多段ジャンプロボ(+上昇ダッシュロボ)の特権である。SSハイにはできない動きだ。多段ジャンプを使えば、SSハイより長く滞空することができる。
 着地隙が小さいことも、できれば能動的に生かしたい。4.3節で書いたように、着地後、プレイヤーの「判断」が即座に反映される、ということだ。
 地上最高速度が速いことも生かしたい。ABのほうが姿勢が低いことも相まって、対空パーツへの耐性がある。ただし、地上加速はABのほうが低いことに注意。
 なお、空中加速はあまり差別化点にならないと思っている。SSハイも高めの空中加速を有する。実戦の回避はこの程度の空中加速で十分可能であることも多い。しかも、空中加速が高いということは即座に移動方向を変えられるということであるが、SSハイには、まさにそういう使い方に向く4回の空中ダッシュがある。ABとSSの空中加速は、実は数値以上に差が無い。
 一応、空中加速や着地隙の小ささは、ジャンプ移動の小回りに効いてくる。例えば、箱に乗る動作はABハイのほうがスムーズに行える。空中加速の差異は、その方向で生かそう。
 以上、ABハイをSSハイと差別化して運用することを検討してきた。見ればわかるように、速度というダイナミックな部分で差を付けられている割に、差別化は細かい部分でしかできない。厳しいな、という感想である。

(7)地上型リトル

 地上主体リトルのうち、特にスタビライザーを履いている場合について書く。実際には、例えばLSワイドでも地上主体で立ち回ることもある。

▼地上型リトルの強みと弱み
 地上速度が全ロボの中で最も速い。小回りと体の小ささも生かしながら、障害物も利用して相手を翻弄することができる。回避型のロボだ。
 弱みは多い。
 攻撃一発でダウンする。ダウンは、間合い管理を含む試合のあらゆる主導権を相手に渡してしまうことを意味する。
 防御力が低い。単発高火力ガンは天敵。連射するガンには一応強い。
 地上しか移動できない。障害物や地形、爆風の影響を、直に受けてしまう。
 垂直方向に動けない。「駆け引き」を一時的に有利にするために必要な高度が出ないし、回避もできない。
 地上速度が実は速くない。全ロボ中、最も地上速度が速いというだけであって、全体で見たらABの空中速度以下の遅さである。

▼ABハイとの違い
 4.4節(2)で一通り書いたので、詳細は省略する。
 相手を追うのはABハイ、相手から逃げるのはリトルのほうが得意、という印象だ。

(8)空中型リトル(LSワイド)

 空中主体のリトルのうち、LSワイドについて書く。
 実際には、ルークフェザーやLRワイド、LSハイ、LSロング等もいる。

▼LSワイドの強みと弱み
 ミニマムなSSワイドと言われることがある。
 複数ある空中主体ロボの中で、このロボ独自の強みは2つあると考えている。
 まず、使いやすい多段ジャンプを3回も持つこと。この多段ジャンプは前隙が小さく高度もそれなりに出る。最大高度や滞空時間を稼ぎ、しかも調整が非常にしやすい。垂直方向への自由度が高い、と言える。
 次に、地上移動が速いこと。サブの移動手段としては破格の性能であろう。加速も最高速度も速いから、位置取りの調整や対空パーツを凌ぐのに優秀である。
 弱みは、
 まず、ジャンプ高度が低いこと。水平速度を高くするためにワイドジャンプを履いており、ハイジャンプではないから高度が出ない。せっかく3回もある多段ジャンプは、その多くで高度のためだけに利用されるだろう。
 次に、防御力と我慢値が低いこと。防御力の低さは、単発高火力ガンから受ける被害が大きい他、事故で爆風に被弾したときにも強く効いてくる。我慢値が低くすぐダウンしてしまうため、相手に試合の主導権を握らせやすい。

▼ABハイとの共通点
 ジャンプ、多段ジャンプを基本移動とする点。

▼ABハイとの違い
 空中加速はABハイのほうが高い。
 着地隙はABハイのほうが小さい。
 地上移動はLSワイドのほうが強い。
 水平速度はLSワイドのほうが速い。
 ジャンプ高度はABハイのほうが高い。ただし、多段ジャンプ込みの最大到達高度は、ABハイもLSワイドも同等である。
 LSワイドは、どんな攻撃でも一発でダウンする。ABも標準ロボより我慢値は低いものの、ある程度耐えることができる。

▼ABハイをLSワイドと差別化して運用する
 我慢値の差が大きすぎるから、特に差別化を意識する必要はないと考えている。
 LSワイドは、一回の事故被弾で失うものが多すぎる。単に受けるダメージが大きいというだけではない。ダウンすることで相手に主導権を握られ、残り試合時間が減っていく。

(9)FO(フェザー、ワイド)

FOの強みと弱み
 圧倒的な滞空時間によって、長時間にわたって「駆け引き」の一方的な有利を取れることが強み。あまりに時間が長いので、「駆け引き」から一時的に離脱する、とさえ捉えることができる。
 素のジャンプ高度が高く、さらにゆっくり上昇するダッシュを6回もすることができ、最大高度が出る。落下速度が遅いので、滞空時間が長い。よって、「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)において、相手に「接敵」を中々許さない。
 水平加速もABほどではないが十分にあり、高い空中性能を発揮する。
 弱みは、動きが緩慢で、万一、着地際などを狙われて相手に「接敵」を許してしまった時、「接敵後の攻防」(=Phase3.)において、速度で振り切って退避できないことだ。しかも、AB同様に防御力や我慢値と言った保険を持たない。例えばWSマグナムと「接敵」した時、SSハイなら垂直方向に振り切れるが、FOは難しい。同様の弱みを抱えるロボにFVがいるが、あちらは防御力という保険を持っている分、被害が小さい。
 空中ダッシュの速度が遅く時間が長いため、、スナイパーやVレーザーの回避に不都合が生じる。ダッシュ中は移動方向を変えることができない。ここに軸を合わせてスナイパーを撃たれると回避できない。地上撃ちVレーザーも、咄嗟に移動方向を変えることができないため回避できない。どちらもメジャーなガンなだけに、FO使いは対策を求められる。
 地上移動が非常に弱い、というかほとんど動けない点も弱みであろう。ただし、低空ダッシュでカバーできる。ジャンプの上昇が遅いから、人力で実現しやすい。
 以上、FOの弱みは、動きが緩慢であるため、短い時間に発生する「駆け引き」が苦手である、と言えそうだ。
 レッグは、フェザーとワイドジャンプをよく見かける。フェザーは強みを伸ばす。滞空時間が延びるから、「駆け引き」において有利な時間が増える。ワイドジャンプは弱みをカバーする。空中水平速度を増加させて、相手を振り切って退避したり、スナイパー等の攻撃を回避しやすくする。

▼ABハイとの共通点
 空中において、水平・垂直方向への自由度が高いこと。
 「接敵後の攻防」(=Phase3.)で、相手から退避するために必要な速度が無いこと。
 相手に「接敵」を許した時の保険、すなわち防御力や我慢値が低いこと。

▼ABハイとの違い
 ジャンプ上昇速度、落下速度はABハイのほうが速い。垂直方向へ回避するのはABハイのほうが得意である。
 水平方向は、空中ダッシュの分だけFOのほうが速い。
 滞空時間はFOのほうが長い。「駆け引き」で長い時間有利を取れる。
 地上移動は圧倒的な差異。

▼ABハイをFOと差別化して運用する
 ロボの挙動が大きく違うから、事前と差別化して運用しているだろう。
 垂直方向の速度、地上移動が速いことを生かそう。

(10)FVハイ

▼FVハイの強みと弱み
 全ロボ中第一位の防御力と、標準ロボより高い我慢値を持つ。(4)MGの項目で述べたように、高い防御力と我慢値は、自分の行動のリスクを減らし、相手の行動のリターンを減らす。リスクリターンの面で優位に立つことができる。
 空中性能も悪くない。水平方向の速度は、LSワイドなどと同じくらい速い。垂直方向には、多段ジャンプを使えば高度を出せる。滞空時間も短くない。
 弱みは、とにかく動きが緩慢であること。
 水平方向には、速度こそ出るものの、空中主体ロボとしては空中加速が低い。移動方向を俊敏に変えることができないのだ。しかもFVは多段ロボである。多段ジャンプをすると水平速度が0になる。空中加速が低いから、元の速度に戻るまでに時間がかかる。これは、ガンやボムを発射した際にも同じである。
 垂直方向には、そもそも速度が遅い。ジャンプ上昇速度はハイジャンプのおかげでカバーできているが、多段ジャンプの高度が低く遅い印象を受ける。落下速度もFOに次いで遅い。垂直方向の回避は、可能であるが得意ではない、という印象。
 緩慢であるせいで、FO同様、「接敵後の攻防」(=Phase3.)において、速度で振り切って相手から退避できない。FVが起き攻めに弱いと言われる所以である。
 弱みはFOに同様と言えそうだ。防御力という保険がある分だけマシではある。

▼ABハイとの共通点
 2回の多段ジャンプを持つこと。
 ……それだけのようだ。考えてみたが、他に思い浮かばない。

▼ABハイとの違い
 空中性能のあらゆるところが違う。
 空中加速、最大高度、垂直速度は、ABハイのほうが高い。
 水平速度、滞空時間は、FVハイのほうが高い。

▼ABハイをFVハイと差別化して運用する
 挙動自体は似ているので、性能や性質の違いによく注意して運用したい。何も考えずに動かしていると、防御力の低いFVみたいな運用になってしまう。
 空中加速、垂直方向の速度、着地隙の小ささを生かして、回避重視で機敏に動こう。それだけで、FVとの差別化になる。

(11)SVフェザー

 水平方向の化け物。

 WSハイと同様に、全編にわたって例として引き合いに出してきたので、詳細は省略する。

▼SVフェザーの強みと弱み
 発生の早いステルスダッシュを3回も持つ。水平移動距離が非常に長く、速度もWSに次ぐ。
 速すぎて、「接敵すること」(=Phase2.)と「接敵した後に攻撃を当てること」(=Phase3.)を同時に行う。
 ひとたびダッシュ入力してしまえば、たったの2Fでステルスが発生し、相手のガンを一方的に無視できる。相手の行動に対して、後出しで回避も退避も間に合ってしまう。
 SVフェザーの水平機動力は、単に総移動距離が長いとか速度が速いというだけではない。それだけならWSにも同じことが言える。SVフェザーの水平機動力の真骨頂は、最大値と自由度を両立した点にある。SVフェザーは滞空時間が長くダッシュが降下しない。よって、速度と距離とステルスを兼ね備えた3回ものダッシュを、自在なタイミングで繰り出すことができる。3回最速で入力しても良いし、タイミングをずらしてフェイントしても良い。それぞれのダッシュに複数の意味を持たせても、独立した意味を持たせても良い。例えば、1回目で接近して揺さぶりをかけ、2回目で相手の迎撃ガンを回避し、3回目で再接近して後隙を狩る。おそらくTFがやりたかったことを、このロボは高いレベルで実現してしまった。
 弱みを2つ挙げる。
 1つは、WSハイ同様に操作が難しいこと。ただしこれは、プレイヤーの練度が上がると解決されていく。
 もう1つは、「駆け引き」で有利を取るための高度が出ないこと。SVが持つ大きな弱みであろう。Phase2. とPhase3. を同時に制するインチキロボであると書いたが、実際には、Phase3. で相手に垂直方向へ簡単に逃げられてしまうから、Phase2. の時点でPhase3. まで同時に制さないといけない、というのが正しいだろうか。
 逆に言えば、WSと違って垂直方向に動けないロボであるにも関わらず環境ロボになってしまうくらい、SVの水平機動力が尋常ならざるものである、ということか。
 なお、着地キャンセルというテクニックを使うことで、水平機動力を底上げしつつ高度もカバーできてしまうことを、ここに特筆する。まさに化け物。

▼ABハイとの違い
 水平方向と垂直方向のどちらが得意か。
 操作のしやすさ。
 スペック差がありすぎて、わざわざ挙げるまでもないと思ってしまう。

(12)BBハイ

▼BBハイの強みと弱み
 高く速い垂直ジャンプと、長い距離を降下移動するステルスダッシュを1回持つことが特徴。着地隙も全ロボ中で最も小さく、強力なジャンプを継ぎ目なく行うことが可能だ。
 強みは、「接敵後の攻防」(=Phase3.)における守りの駆け引きが強いことだろう。相手の攻撃行動に対して、後出しでも回避が間に合いやすい。
 垂直ジャンプは相手の攻撃を回避することに向く。(6)SSハイの項目で述べたように、相手の行動に対して後出しが間に合う。ただし、SSハイや多段ロボほど高度は出ないから、相手を振り切ることはできない。空中加速が低いため立体的に動きにくく、高空から相手を追って一方的に攻撃するのも難しい。あくまで、垂直方向への回避性能が高い、と捉えたい。
 ダッシュはステルスの発生は早いので、相手のガン発射行動に対して後出しで回避が間に合う。
 弱みは、「接敵後の攻防」(=Phase3.)における攻めの駆け引きが苦手なことだろう。相手の回避行動に対して、後出しで行動を間に合わせることが難しい。
 空中加速が低いから、相手の回避動作に対して自分の移動を合わせることができない。ステルスダッシュの移動発生前隙は驚異の15F。相手の移動を見てからダッシュを入力しても、中々追いつけない。
 後出しで間に合わないならばと、ダッシュを先出しすると、今度は15Fの前隙を見た相手は、「あ、そっちに移動するなら逆方向に行くね」と後出し行動が間に合ってしまう。
 また、空中加速の低さ、および一回限りかつ移動発生の遅いダッシュは、G,P型爆風に非常に弱い。撃ち上げられてお手玉されてしまうと、抜け出せない。

▼ABハイとの違い
 色々な部分が違うが、最大の差異は空中加速ではなかろうか。ABの移動は小回りが利くが、BBの移動は直線的で小回りが利かない。
 とはいえ、ABのほうが回避性能が高いのかと言えば、そうでもない。ABは小回りで回避するのに対し、BBはジャンプ速度とステルスで回避する。

5. 各パーツの再考

 4章では、ロボについて思慮を巡らせた。
 5章では、ロボ以外のパーツを扱う。

 まず、各パーツとはどのようものであるかを考察する。カスタムロボV2のゲーム性や「駆け引き」に及ぼす影響、その中で演じる役割について述べる。
 次に、ABが各パーツに求めること、反対に各パーツがABに求めることを考察する。

5.1 レッグの再考

(1)レッグとは何か

▼素朴な理解
 ロボの機動力を補正するパーツである。
 言い換えれば、ロボの操作性を変えるパーツである。

▼本記事に基づく解釈
(a)ゲーム性を変える(2.1節(1))
 操作性とは、ゲーム性に影響を及ぼすのであった。「機敏に回避するゲーム」になるのか「慣性で先読みが必要なゲーム」になるのか。
 同じロボであったとしても、レッグを変えることで異なる操作性(≒ゲーム性)を得る。自分と相手の操作性を理解することは、これから臨む1試合120秒がどのようなゲーム性の下に繰り広げられるかを理解することに等しい。そして、プレイヤーの「立ち回り」「判断」の応酬は、その理解の基に行われる。
(b)ロボの操作しやすさを変える(4.3節、4.2節)
 ダッシュ前隙が減ったり着地隙が小さくなったり、空中加速が上がったりして、操作しやすくなる。逆に、操作しにくくなることもある。
 操作しやすいと、出力は理論値に近づき安定度も上がる。練度の3要素「操作精度」「立ち回り」「判断」がブーストされるためである。プレイヤーの「立ち回り」「判断」が、ゲーム画面上で精度良く反映されるためである。
(c)ロボの理論値を変える(4.2節)
 速度が上がったり距離が伸びたりする。これらは、出力の理論値に影響を及ぼす。
 出力の意味は、局所的な「駆け引き」において出力が上回った側が勝ち、1試合を通して出力の積分値が上回った側が勝つ、ということであった。理論値が高くなれば、それだけ相手を上回ることが可能となる。
 しかし、現実に理論値を出力できるわけではない。理論値を上げるレッグは操作性が悪くなることが多く、理論値出力の邪魔をする可能性すらある。レッグ選択は、操作性と理論値のバランスが重要であると言えよう。

▼各レッグ考察

  • ハイジャンプレッグ
     ジャンプ上昇速度の上昇は操作性と理論値の向上を、高度は理論値の向上を意味する。理論値を上げるレッグの割に、多くのロボにとって操作性を悪くしない。だから強い。

  • グランダー
     ジャンプ高度と速度の低下は操作性と理論値の低下を、空中加速の上昇は操作性の向上を意味する。ジャンプが弱くなるのが致命的で、上手く扱えるロボは限られている。

  • スタビライザー
     地上加速と地上旋回性能の向上は操作性の向上を意味する。空中が重要な意味を持つゲームなのに、空中に関与するパラメータに何も補正が入らない点は弱い。

  • ショートバーニア
     理論値を低下させて操作性を向上させるレッグ。冗談抜きに、理論値が半分になる。SVでさえ、このレッグを履いてしまうと出力が足りなくなる。

  • ロングバーニア
     空中ダッシュの距離と多段ジャンプの高度が上がり、理論値が向上する。空中ダッシュを持つロボのうち、元々ダッシュ距離が長いロボは任意の水平座標へ移動しにくくなる意味で操作性が悪くなる。多段ジャンプを持つロボは操作性に影響はない。
     操作性と理論値の関係を強く意識させられるレッグ。

  • フェザー
     落下速度の低下、滞空時間の減少は、操作性・理論値に影響を与えるが、ロボによって影響度合いは異なる。考え方の難しいレッグ。
     SVはフェザーと非常に相性が良い。理由は4.5節(11)に書いた。

  • ワイドジャンプレッグ
     空中水平速度が上昇して理論値が向上する。空中加速の低いロボに履かせると操作性に悪い影響を及ぼす。

(2)ABがレッグに求めること

▼空中主体なら、理論値を向上させること
 空中での操作性は十分であり、理論値に近い出力を安定して出すことができる。
 問題は、その理論値が低いことである。
 よって、レッグの選択は、理論値を向上させることを第一に考える。
 ハイジャンプ、ロングバーニア、フェザー、ワイドジャンプが良いだろう。

▼地上主体なら、操作性を向上させること
 地上主体で動く場合、地上加速が低く操作性が足りない。地上加速に補正をかける必要がある。
 スタビライザー、ショートバーニア、フェザーが良いだろう。

5.2 ガンの再考

(1)ガンとは何か

▼素朴な理解
 攻撃手段の一つ。
 ゲーム内での基本的な使い方に則れば、相手へのトドメ手段である、

▼本記事に基づく解釈
(a)カスタムが得意とする間合いを決める(=3.3節(2))
 ガンには有効射程が存在する。近距離ガンは接近しないと当たらないし、遠距離ガンは距離を離さないと当たらない。
(b)「立ち回り」を決める
 自分のカスタムが得意な間合いで戦う。これは「立ち回り」である。
 別の視点で考えてみる。例えば、決め撃ちタイプのガンを持っていれば、ボムポッドで相手の移動を制限してからガンを当てよう、という方針が立つ。相手をスタンさせるタイプのガンを持っていれば、ガンで相手を捕まえてからボムポッドを当てよう、という方針が立つ。これも「立ち回り」だ。
(c)「接敵するかどうかの判断」(=Phase1.)における判断材料である(3.3節)
 (a)、(b)より導かれる。「駆け引き」の原初たるPhase1. を制するために必要な判断材料である。
(d)操作性を変える(=4.3節(3))
 ガンには前隙、後隙が存在する。これは、操作性に影響を及ぼす。その影響は、5.1節(1)(b)で既に記述した。
(e)「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)における判断材料である(3.3節)
 ガンの射線がどのように通っているかに依って、取るべき接近ルートが変わってくる。
(f)「接敵後の攻防」(=Phase3.)における重要な要素である(3.3節)
 そのガンはどういう当たり方をするのかが大事である。ホーネットなら相手の横移動に対して当たりやすい。バーティカルなら縦移動に、スナイパーなら前後移動に対して当たりやすい。回避(退避)ルートと当たり方が噛み合った時にヒットする。
 この他、ガン発生の前隙や後隙の要素も絡んでくる。Phase3.は、短時間で行われる「駆け引き」であるからだ。

▼各ガン考察

  • マグナム

  • グライダー
     これらは有効射程が明確である。

  • スナイパー
     全射程で機能する万能なガン。ゆえに、このガンを持ったプレイヤーにとって、「接敵」を狙うか狙わないかは、ガンの射程以外の要素の割合が大きくなる。
     また、迎撃で振った時に相手の前後移動によく刺さる。これは、相手の「接敵」ルートを大きく制限することを意味する。

  • スプラッシュ
     このガンは、極めて対近性能が高い。相手の機動力次第では、相手の接近を完全にシャットアウトできる。これは、「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)で「接敵」を狙う相手を完封することに他ならない。
     また、発射前後隙の短さは操作性に良い影響を与える。短い時間の中で「判断」が必要な「接敵後の攻防」(=Phase3.)で強い。

  • Vレーザー、アーク
     地上撃ちと空中撃ちで軌道が異なる。相手の「接敵」ルートに択を押し付けることができる

  • グラビティ
     こちらは、「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)において強力なガンである。相手の垂直方向への移動を強烈に抑制する。

(2)ABがガンに求めること

▼相手の「接敵」を拒否する性能
 ABは水平速度が特に遅いロボで、相手に「接敵」を許しやすい。
 よって、それをシャットアウトできるガンが候補になる。
 考え方は2つ。相手の「接敵」ルートを強く制限するガンか、相手に「接敵」された後に強いガンを選ぶ。
 前者はスナイパー、Vレーザー、グラビティ。後者はスプラッシュ、フレイムであろうか。

▼自分から「接敵」しなくて良い性能
 要は、無限射程のガンということ。
 相手に「接敵」を許しやすい一方、自分から「接敵」を成功させることも難しい。
 であるなら、「接敵」状況でなくても機能するガンを選びたい。そして、それは無限射程ガンである。
 スナイパー、Vレーザー、各遠距離ガンを筆頭に、色々ある。

(3)ガンがABに求めること

▼後隙の小ささを生かすための空中加速
 例えばグラビティ。空中撃ちで設置した後、ロボの水平速度は0になる。この状態から加速してすぐに退避したい。
 逆にスプラッシュは、相手に当ててスタンした後、ロボの水平速度は0になる。この状態から加速してすぐに追撃しに行きたい。
 ABはこういうガンの使い方が可能である。

▼有効射程を維持するための小回り(間合い調整
 グラビティが顕著だ。空中撃ちグラビティは、自機から一定距離の”地点”に設置する。近すぎても遠すぎても当たらない。細かい間合い調整が必要であって、ABはそれが得意だ。

▼射線を通すための高度
 標記の通り。

5.3 ボムの再考

(1)ボムとは何か

▼素朴な理解
 攻撃手段の一つ。
 ゲーム内での基本的な使い方に則れば、逃げ道を塞がれた相手への追い打ち手段、あぶり出し手段である。

▼本記事に基づく解釈
(a)全間合いで機能する唯一の攻撃手段である(スマッシュを除く)(3.2節)
 ボムの軌道と障害物の位置関係にも依るが、スマッシュを除くボムは、すべての攻撃手段の中で唯一、至近から最遠まで攻撃することができる。
 無限射程のガンに対しても同様のことは言える。ただ、ガンは有限射程のものも多い。ボムは、スマッシュ以外全部、この性質を持っている。
 私は3.2節で、対戦構造の本質は「水平方向の間合い」であると書いた。この意味で、全間合いで機能するボムが如何に重要な攻撃手段であるか、見て取れよう。
(b)ステージ上の任意の水平座標へ攻撃できる唯一の攻撃手段である(3.2節)
 (a)に近いことを述べる。このゲームは、ガン、アタックはオートエイムであり、ポッドは使い手から自律して動く。ボムだけが、確実に、ステージ上の任意の水平座標へ攻撃できる。
(c)「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)を制するための重要な要素である(3.3節)
 (a)、(b)より、ボムはPhase2. において極めて重要な意味を持つ。Phase2. は、どのタイミングで、どのような「接敵」ルートで相手に接近するか、という攻防である。機を作りつつ確実に「接敵」するためには、相手の移動を強制、抑制、妨害、誘導しなければならない。これらを使い手の意志で最も確実に実現できるのが、(a)、(b)の性質を持つボムなのだ。
(e)「接敵後の攻防」(=Phase3.)における判断材料である(3.3節)
 壁を挟んで「接敵」した時に重要となる。基本の使い方通り、相手をあぶり出すように使う。
 逆に「接敵」された時には、迎撃手段の一つとなる。スタンダードFが採用されることが多い。

(2)ABがボムに求めること

▼全間合いで機能する攻撃手段としての性能
 水平方向へ間合いを詰めることが苦手であるから、最遠でも機能するボムが欲しい。山なり軌道のボムが良いだろう。
 また、相手に「接敵」を許してしまった時に、至近でも迎撃として機能するボムが欲しい。相手に直接当たるボムが良いだろう。
 両方満たすのは、クレセントP、トマホークB&G、スタンダード無印&F、アイドリングD&P、ウェーブなど。

▼相手の「接敵」を拒否する性能
 5.2節(2)で、ガンについて書いたことと同じである。詳細は省略する。
 重要な要素は、ボムの軌道、爆風の大きさ、爆風の吹っ飛ばし方向、爆風の持続時間であろうか。
 クレセントP(正面からの接近)、トマホークB&G(中空程度からの接近)、スタンダードF(爆風が当たると距離を取る方向へ吹っ飛ばす)など。

▼空中で撃って強い性能
 ABは空中主体のロボであるため。
 クレセントP、トマホークB&G。

▼機体制御に適する性能
 ABはボムポッドを使って機体制御を行う。
 そのために、リロードが早い必要がある。致命的にリロードが遅いのはジャイアントくらいだが。

(3)ボムがABに求めること

▼後隙の小ささを生かすための空中加速
 5.2節(3)で、ガンについて書いたことと同じである。詳細は省略する。

▼相手の移動を制限したところを刺すための空中小回り
 移動を制限できても、その状況を利用して攻撃を当てに行く「判断」をしなければ意味がない。
 プレイヤーがボムが有効に機能した瞬間を見逃さずに操作量を加えた時に、その「判断」を即座に反映するための性能、空中加速を求める。

5.4 ポッドの再考

(1)ポッドとは何か

▼素朴な理解
 攻撃手段の一つ。
 ゲーム内での基本的な使い方に則れば、相手を挟み込むように撃って逃げ道を塞ぐ手段である。

▼本記事に基づく解釈
(a)前後隙の無い唯一の攻撃手段である(3.2節、4.3節)
 ロボの動きを止めることなく撃てて、しかも発射の前後隙が無い。ポッドが持つ重要な性質である。
(b)「接敵に向けての攻防」(=Phase2.)を制するための重要な要素である(3.3節)
 5.4節(1)でも述べたように、Phase2. は、相手の移動を強制、抑制、妨害、誘導する攻防である。移動に関する攻防を繰り広げる中で、ポッドは、自分のロボの移動を止めることなく撃てる攻撃手段である。この意味で、ポッドは重要である。
(c)「接敵後の攻防」(=Phase3.)における重要な要素である(3.3節)
 短い時間の中で、移動を含めた攻防が行われる。この間合いで移動を止めてしまうと、相手からの攻撃が高確率で確定する。自分の移動を止めない攻撃手段であるポッドは、非常に重要であると言えそうだ。

(2)ABがポッドに求めること

▼相手の「接敵」を拒否するための性能
 5.2節(2)でガンについて、5.3節(3)でボムについて述べたことと同様であるから省略する。
 ウェーブ、コックローチG&H、ドルフィンG、シーカーF、サテライトHなど。サテライトHは、相手の接近ルートを長い時間にわたって制限する。

▼空中で撃って強い性能
 ABは空中主体ロボのため。
 ウェーブ、コックローチ、ドルフィンG。

▼機体制御に適する性能
 ABはボムポッドを使って機体制御を行う。
 そのために、リロードが早い必要がある。
 ウェーブ(爆発までの時間が安定していて、リロード管理しやすい)、コクローチG&H、ドルフィンG。

(3)ポッドがABに求めること

▼爆撃するための高度
 ウェーブ、コックローチG&H、ドルフィンGなどは、相手の頭上から爆撃することができる。

▼相手の移動を制限したところを刺すための空中小回り
 5.3節(3)で書いたことと同様であるから、ここでは省略する。

5.5 機体を構成する6要素

 ものすごく今更だが、機体を構成する要素はいくつあるだろうか。
 私は、6個だと考える。
  1.ロボ、
  2.ガン、
  3.ボム、
  4.ポッド、
  5.レッグ、
 そして、
  6.プレイヤーである。

 これらは相互に影響し合っている。
 しかし、今回のメインはABというロボであったから、「ABと使い手(4.4節(4),(5))」「ABとレッグ(5.1節)」「ABとガン(5.2節)」「ABとボム(5.3節)」「ABとポッド(5.4節)」という軸を据えた。そして、それぞれが相互に求めるものとは何か、という視点で書いてみた。

6. 実戦におけるABの役割と限界

 例えば大会において、ABを出しうるか、と言う話。
 これまでの議論の再掲である。

6.1 実戦でABを出せる状況

▼「相手の平均出力」<「ABの平均出力」 となる場合
 ABの出力は非常に安定しており、理論値に近い出力を出し続けることができる。
 よって、例え、「相手の理論値」>「ABの理論値」であったとしても、出力安定度が低い等の理由で相手の現実の平均出力が低ければ、現実の出力でABが上回って勝利することができる。

6.2 実戦でABを出せない状況

▼「相手の平均出力」>「ABの理論値」となる場合
 残念ながら、ABの理論値は低い。相手の平均出力がABの理論値を上回ってくる場合、ABに勝機は無い。
 そしてこれは、最上位帯ではない、中級者帯においても起こり得るというのが、私の直感だ。

6.3 本記事を基に、ABが遂行しうる役割

 大会を想定して、ABの役割を考えてみる。
 私がABを使い続けてきた感触として、大会上位で遂行できる役割は、おそらくほとんどない。勝てる相手(ロボ、カスタム)はきちんと存在するのだが、上位常連のSVやWSに対してあまりも弱い。
 その点さえ解消できれば、もっと出していけるのだが。私の開拓では解消できなかった

(1)【仮想敵:初級者】

 発展途上で出力が安定していない初級者に対して、出力の安定するABをぶつける。

(2)【仮想敵:グライダー】

 ABの多段ジャンプは全ロボで最もグライダーを回避しやすい。回避しつつ、相手を追いまわすことが可能である。ただし捕まえられるとは言っていない。
 相手の迎撃まで含めて確実に回避する必要がある。

(3)ABスプラッシュ VS 近距離カスタム

 SVショット、WSマグナム以外の近距離ガン相手には、スプラッシュの対近によって役割遂行が可能ではないかと考える。

(4)ABグラビティ VS 高空系、BBハイ

 高空系がスナイパーを持っていると怪しいが、基本的にはABグラビティで討ちやすい相手である。

8. あとがき

8.1 内容のまとめ

 0章 要旨(Abstract)を参照。

8.2 《研究論》の目指したところ

 最後までご覧いただきありがとうございました。

 私が《研究論》で目指したのは、ABというロボの本質的な強さ・弱さを捉えることでした。そして、そのために、カスタムロボV2というゲームについて考えるための理論を構築することでした。
 ABについての理解を深めるために、他のロボにも理論に当てはめて考えてみました。

 ABはなぜ弱いのか? というのが、《研究論》の発端です。これに理由を与える理論が欲しかったのです。
 《研究》のうち、「ものごとの理を明らかにする研究」のことを、「理論研究」と呼ぶそうです。今回初めて知りました。
 自分がやりたかったのは、まさに理論研究でありましょう。

 私にとって初めての試みでしたから、理論研究と呼べないほど拙い内容になってしまったかな、と思います。でも、構いません。この理論は私だけのものです。普遍的に妥当なものであることを最初から目指さなかった。理論構築とたいそうに表現しましたが、やっていることは、「ABは弱い」という結論ありきの議論です。そこに普遍的な妥当性があるとは、自分でも思えない。
 ……と、妥当性は求めないと言いつつも、自分の中で納得する完成度にはしたいところ。だから、α版と付しました。

 この理論は私だけのもの、というのは、なにも、自分で作った理論を独占したいという話ではなく、みなさんにはみなさんの理論があるでしょう、という話です。
 その理論を公開してほしい、ということもありません。ただ、みなさん独自の理論を大切にして、考察して、それを対戦の中で反映させてください。それが、みなさんの「個性」となって、対戦を、大会を、界隈を盛り上げるはずです。
 私の理論が普遍的で妥当なものであるなら、それは嬉しい反面、残念なことでもあります。だって、みなさんも私と全く同じようにカスタムロボV2を捉えていることになります。没個性化の始まりとなってしまうでしょうから。

 以上で、《基礎論》、《実践論》、《研究論》と書き上げてきたAB考察を終わります。
 みんなもABで遊ぼうね!

X. 本《研究論》の穴

 自分が思いつく限りの穴を徒然とメモしておく。逆に言えば、これらは自分が盛り込みたいと考えている要素である。
 将来、これらの穴を埋め、α版ではない、完成版の《研究論》を書くためだ。
 今時点で既に気づいている穴であるから、今補正しても良いのだが、書くのに疲れた。しばらく時間を置くことにしたい。

▼理論値という概念がPhase2.に寄りすぎている
駆け引きの3フェーズそれぞれに対して理論値があるはず、という話をしたい。
現状の理論値の解釈は、Phase2.に寄りすぎている。SV、次点でWSが最強であるという持論に引っ張られた結果、SVとWSが得意とするPhase2.に寄りすぎた。
例えばPhase3.は、垂直機動力のほうが理論値への影響は大きいはずだ。だって、「既に水平方向への間合いが詰まっている」状況だから。

▼垂直方向の持つ意味(SSハイの理論値)が検討不足
3.4節で個別に考察したが、まだ不足していると思う。
私の考えでは、水平機動力の高いロボこそ強いということだが、現実にはSSハイも環境ロボに名を連ねている。そのことに対する理由付けが、本記事には不足している。おそらく、前記▼理論値で述べたように、Phase3.の理論値が関係している。
また、滞空時間や高度に関する掘り下げが十分にできていない。

▼空中移動と空中ダッシュの差異を検討していない
ABハイが水平に遅いとは言っても、ジャンプを繰り返し、かつ多段ジャンプをしない限り、空中ダッシュを持つロボと遜色無い水平速度を持つのではないか、という仮説。
空中移動とは、ダッシュを使わないで、空中加速と空中水平速度に依る水平方向への移動のことである。
本論のメインであるABを筆頭に、FVハイ、LSワイドという多段型ロボのほか、SSハイも、ダッシュをメインとしないで移動する。
これらのロボは他のロボと比較して空中加速が高く、地上静止状態からジャンプしてもすぐに空中水平最高速に達する。近似的に初速が速いと言えて、前隙が生まれにくい。一方、空中ダッシュは前隙が生まれる。
なお、ダッシュするロボもダッシュしないロボも、着地すれば水平速度は0になる。⇒▼着地の意味

▼機動力を議論する上で「速い」「遅い」という意味が何においてなのか不明瞭
言い回しの話。
最高速度、加速、初速。
例えば、単に「ABの水平速度」と言った時、どれを表すの?と言う話。本記事では意識して区別しておらず、文脈から判断するしかない記述になってしまっている箇所があろう。
なお、加速は厳密には速度ではない。

▼機動力という言葉が定義されていない
機動力という言葉が、単に速度のみを示すのか、加速値に代表される自由度も含めるのかが明らかになっていない。
ABは水平速度に遅いから水平機動力が低いとも言えるし、空中水平加速が高いから水平機動力が高いとも言えてしまう。結局、機動力ってどっちの意味なの? というのが明確でないまま考察が進んでいる。
執筆者の頭の中で勝手に解釈されている要素を、総じて機動力と呼んでしまっている。これでは、読んでくれた人には伝わらない。

▼着地が持つ意味(滞空時間が持つ意味)
着地すると水平速度は0になる。さらに、ロボはプレイヤーの入力を受け付けなくなる。
着地回数の多いロボと少ないロボ、果たしてどっちのほうが強いのであろうか? と言う話。
仮説は、何度も着地したほうが強いロボとは、着地隙の少ないロボ、空中性能の低いロボ(地上主体ロボ、BBハイ、MGハイ……)、垂直に速いロボ(ジャンプが速いロボ)、地上で強いロボ(アタック性能が高いとか、地上撃ちのガンボムが強いカスタムとか)。逆に着地回数の少ないほうが強いロボとは、空中性能の高いロボ、着地隙の大きいロボ、垂直に遅いロボ、地上で弱いロボ。
なお、ここで着地回数が多い少ないとは、着地→ジャンプ→着地→ジャンプ……を繰り返した時の、滞空時間の差異による結果を指す。地上移動の割合に起因する結果は含めない。

▼行動の前後隙が持つ意味が検討不足である
上手く整理できていないかな、という感想。
相手との間合いが至近(=Phase3.)であるほど重要である。逆に、間合いが最遠(=Phase1.)であるほど重要ではない。前者は短時間の駆け引きであり、後者は長時間の駆け引きであるから、隙という時間が及ぼす影響度合いが相対的に変わってくるのであろう。

▼相性の議論が存在しない
「理論値」に拘り過ぎて、相性関係の影響を考慮できていない。
例え理論値で相手に負けていても、相性が勝利の決め手となることは十分に考えられる。
理論値という言葉に相性も含めるのか、それとも理論値と相性を厳密に区別するのか。単に相性の概念を導入するだけではなく、理論値(より原始的には出力)に含有するかどうかまで考える必要がある。

▼耐久性能に関する議論が不足している
防御力、我慢値、体の大きさ、被弾硬直。ステルスや回避性能、アニーアタックに代表される1F無敵アタックなども、実質的には耐久性能を表す。
MG、FV(、WS)の強さの理由であり、ABが弱い理由である。
しかし、本《研究論》は「水平方向の機動力」に拘り過ぎており、長所や保険足り得る耐久性能についての議論が不十分。

▼練度より理論値が重要ではないか、という仮説。また、その理由の仮説
使い込んだ弱いカスタムより、慣れてなくとも強いカスタムを使ったほうが勝率が出ることが多い、という話。どんなにSFヒヨコを使い込んでも、SVフレイムには中々勝てないのではないか。
そして、その理由は、練度と出力が比例関係ではないことにあるのではないか、低い練度でも高い理論値があれば出力の初期値は高く、高い練度でも低い理論値であれば収束出力は低い。という仮説。

▼カスタムの出力最大値、出力の初期値
あとがきで突然、出力の初期値などという概念を持ち出した。
出力の初期値とは、練度が0の状態で得られる出力のことを言う。
出力の初期値が低ければ、練習しないと強くなれないし、逆に高ければ、練習せずとも勝ててしまう。

▼出力に関わる要素はどれだけあるのか。そして、それらの重みとは。
カスタムの出力は多変数関数である、ということ。
A、B、C……を変数、出力に対する変数の重みをα、β、γ……として、
(カスタムの出力)=αA+βB+γC+…… と表せると仮定する。
この時、出力の初期値とは、各変数が0(あるいは最小値)に収束した時の極限値であるし、出力の理論値とは、各変数が∞(あるいは最大値)となった時の極限値である。
本記事では、水平機動力という変数は重みが大きいこと、および練度が∞となった時に理論値へ近づくことについては述べたが、それ以外の要素については議論できていない。
なお、練度は全変数にかかる係数である、という体感がある。それを仮定すると出力も∞となって、各要素の重みはどこかへ行ってしまう。それを解消するには、出力の発散速度を導入すればいい。その速度は、やっぱり各変数と重みに依る。イメージを書いてみる。TASの動きはどんなカスタムを使っていても異次元(=出力が∞)であるが、TASどうしの対戦では、異次元度合いの高い側(=出力の発散速度が高い側)が勝つ。
まぁ、変数がどれだけあるのか、それらの重みはどうなっているのかというのは、定量化できない難しい話である。ゲームをどのように解釈するかに依って、如何様にも変わってくるのだろう。

▼動きの自由度の話
AB(というかロボ)について話すからには、自由度という概念は入れたかった。気づいたら入れ忘れたまま議論を進めてしまった。
そもそもどういう定義になるのか。
イメージとしては、任意の座標へ移動できるとか、一定範囲で細かく座標を取ることができるとか、取り得る軌跡の数が多いとか、そういうものだ。
MGのダッシュは1回だから自由度が低い。SVは3回だから自由度が高い。ここに、滞空時間に起因するダッシュタイミングのパターンまで含めたりする。
垂直方向の自由度は、任意の高度へ微調整しつつ到達できるかどうかであろう。ABはこれが得意だ。
以上、どんなものが自由度となるのか考えてみたが、私のイメージする自由度が高いロボとは、操作しやすいことが多い。操作性の話は導入しているから、自由度の話はそれで代用できないこともないか。


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