ミッド・サマーの小ネタの話

前回のミッド・サマーの感想に入れると文がとっ散らかりそうなので書かなかった小ネタとかについて思ったこと。
作中の映画オマージュとか、ヴァイキングの文化とか、名前と聖書の関連とか。※ネタバレです

〜観ながら思い出した映画の話〜

ミッド・サマーを観ながら、閉鎖的な異文化を題材にした映画のオマージュが結構あるなと思った。
アッテストゥパンで72歳を超えた老人が村民に背負われて運ばれていくところは、日本の姥捨山伝説を扱った楢山節考のようだったし、歴代のクイーンの写真が貼られた壁や明るく朗らかに見えるのに明らかに異端な文化を見せつけてくるホルガは、カルト宗教の島に訪れたキリスト教徒の受難を描くウィッカーマンでも観た特徴だ。

ホラー映画といえば暗闇だけれど、ミッドサマーは夏の真昼が舞台。明るい陽射しに照らされて、料理番組の食材のように堂々と映し出されるゴア描写は、2000人の狂人を思い出した。あの映画の亡霊たちのように、全て現実には存在しない薬物がダニーに見せた幻覚であるという解釈にも少し頷ける。

〜ヴァイキング文化の話〜

随所に登場するのが、ホルガのモデルになった土地のヴァイキング文化だ。
自分はルーン文字は読めないので、気づけたマークの皮を被った村民と鶏舎でのサイモン(カップルの男の方)の殺され方というか死体の話だけ。

まず聖典を隠し撮りしようとしたジョシュを殺した村民(監督のインタビュー読んだら最後に生贄に志願したウルフらしいですね)がマークの皮をマスク代わりに被っていた。よく見ると下半身が裸のようでダブついているので人皮でできたズボンを履いている。

ヴァイキングの文化には殺した敵の脚の皮で作るズボンがある。 要はネクロパンツ。
単なる生贄としてマークやジョシュを殺したわけじゃなく、聖樹を汚したり聖典を盗んだり、自分たちの文化にそぐわないものを敵と見なして害しているように見えた。

そして、鶏舎での殺されたサイモンの晒し方。

状態としては背中から切り込みを入れて、素手で肋骨を抉り出し、その上に肺を開いて乗せているんだけど、あれは血のワシという実際にあった処刑方法だ。

それに縁深い人物としては、骨無しのイーヴァルというヴァイキングがいる。彼は父ラグナルを処刑された報復に、処刑を命じたエッラ王をこの方法で殺した。
父なる神を大声で侮辱したサイモンを、ヴァイキングが父の復讐として採った方法で殺してることになる。

〜クリスチャン、マーク、ジョシュの名前の話〜

ミッドサマーの男性陣の名前のクリスチャン、マーク、ジョシュは、それぞれ聖書のキリスト、マルコ、ジョシュからだと思う。

それぞれの殺され方も、特徴的だ。

まず、熊に仮託した最も悪しき感情を雪ぐという名目で生贄にされたクリスチャンと、人類の罪を背負って磔刑になったキリスト。

次に一行から離れたところで殺され皮を剥がれたマークと、聖パウロと別れた後縄で括られ市中を引き回されて殉教したマルコ。

そして、知識欲が仇になって同輩を出し抜こうとしたのが死を招いたジョシュと精霊から預言を受けた仲間を妬んでモーセにたしなめられたヨシュア。

名前に関連する聖人とどことなく重なる状況で、彼らは生贄にされている。

当てつけがましいこのやり方は、自分たちの文化で、キリスト教という大きな信仰を蹂躙するのを楽しんでるようで、やはりホルガは純粋に文化を尊重する歴史的な集団というより、染まった人間は取り込み、そうでないものは悪意でもって排除するカルトの色を強く感じた。


どうでもいいけれど、冒頭のシーンでダニーの実家にあった花冠を被ったダニーがあって、ヘレディタリー/継承で事故の前のシーンに既に電柱に描かれていた悪魔信仰のマークを思い出した。
どこからどこまで仕組まれていたんだろう。
ダニーの妹の情緒不安定とその悲劇も、薬物を自由に扱えるホルガ出身のペレが関わっているというのは考えすぎなんだろうけれど。


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