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読書感想文

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記事一覧

藤本タツキ『さよなら絵梨』を読んだ。〜切り取った綺麗な物語を観たいのが人間だから…

短編のページ数が明らかに短編のそれではない藤本タツキ先生の最新作だ。 主人公は難病に侵さ…

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高丘哲次『約束の果て: 黒と紫の国』〜取り零された者たちの偽史を巡る中華ファンタジ…

小説という言葉は“稗史小説”から来ているそうだ。 元は中国で、国が正式に編纂した歴史書の…

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ぐだぐだ邪馬台国が好きなマスターに木下昌輝の『人魚ノ肉』を読んでほしい

ノブブブブ……。 昨年ハロウィンにFate/Grand Orderで配信された、織田信長型の巨大埴輪が襲…

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岸本佐知子編『楽しい夜』を読んだ

最近読んだ『楽しい夜』っていう短編集が良かったので備忘録。 群像に掲載された主にアメリカ…

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サマンタ・シュウェブリン『七つのからっぽな家』を読んだ

作家・円城塔が紹介していたので気になっていた南米の作家の短編集。 確かにラテン・アメリカ…

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藤本タツキ『ルックバック』を読んだ〜フィクションの無力と力の話〜

ファイアパンチ、チェンソーマンで有名な藤本タツキ先生が、ほぼ単行本一冊級のページ数で出…

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呉明益『歩道橋の魔術師』を読んだ〜戻らない悔恨と郷愁の話〜

最近、昭和レトロが流行っている。 今の三十代以降の人間なら昭和を経験していないはずなのに、レモンの柄の砂糖入れや真鍮の魔法瓶や古風な扇風機を見ると懐かしさを感じるのはなぜだろう。 国や時代が違っても何となく郷愁を感じるものというのはあるのかもしれない。 呉明益の歩道橋の魔術師はまさに体感したことのないはずのかつての台湾のノスタルジーを感じる小説だ。 舞台は台北で60〜70年代に栄え、92年に解体された大規模な商店街、中華商場。 この中華商場は商店と住民の居住区が混在する大