Dig Ki/oon -Travel-(Selector : KANA-BOON)

(インタビュー・テキスト 齊藤綾乃)


来年2022年4月にレーベル創立30周年を迎えるKi/oon Music(キューンミュージック)。今年の4月より、設けたテーマに沿ったプレイリストを1年間に渡り編成していきます。
12月のテーマは、Travel。旅や旅行にはいろいろな目的がありますよね。友達とワイワイ楽しむ旅や、ひとりで知らない街を歩いてドキドキ・ワクワクする旅。また傷ついた心を癒すための旅もありますよね。そんな旅のお供にぴったりなプレイリストをレーベル所属アーティストとともに選曲。

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Dig Ki/oon -Travel-
Pick Upアーティスト:KANA-BOON(谷口鮪、古賀隼斗、小泉貴裕)
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今回は、2013年にキューンミュージックよりメジャーデビューし、先日ニューシングル「Re:Pray」をリリースしたばかりのロックバンド・KANA-BOONから、谷口鮪(Vo, Gt)、古賀隼斗(Gt.)、小泉貴裕(Dr.)のメンバー全員が選曲会に参加。旅に合う楽曲セレクトの他にも、現在全国ツアー中の彼らの”トラベル”エピソードとともにお届けします。

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ーー旅をする時に聴きたいKANA-BOONの楽曲を教えてください。

小泉:最新シングル「Re:Pray」に入っている「LIFE」です。色々あってもなんでも楽しもう!って曲だから、旅をしながら聴けたらいいなって。というのも、僕が旅に行きたくなるのは悩んでいたり元気を出したいタイミングで、一度気分をリセットしたいとき。だからこの曲を聴いて旅をしたら、元気になって帰ってこれるかなって。

古賀:旅先で聴くとしたら「ランアンドラン」ですね。
旅がどういう目的かにもよるけど、たとえば一歩踏み出すような旅にぴったりの曲です。曲中に「また会おう」って言葉があるだけでも、旅自体に目的や意味が生まれてくるのかなと思います。

谷口:僕は4thアルバム「NAMiDA」に入ってる「バイバイハロー」です。
旅には別れがつきものだけど、同じ数だけ出会いがありますよね。そんな旅をイメージして作曲しました。曲調も遅すぎず速すぎず、トラベルに向いている。

あとは「ネリネ」ですね。「旅はまだまだこれから」って歌詞があるけど、ここでいう旅とは、自分たちの人生をたとえていて。だから少し迷ったときとかに、前向きな気持ちになれる曲です。

ーー新曲「Re:Pray」のMVには旅人がでてきますが、この楽曲のテーマは”旅”ですか?

谷口 : 実は旅をテーマに作った楽曲ではなかったんです。もともとは色々なものや場所がすぐに消えてしまうこの世界で、僕たちが音楽を作ることができる意味ってなんだろう?って思って作曲した。でもミュージックビデオを旅っぽい雰囲気にしてもらってから「Re:Pray」への視点が変わって、曲の可能性が広がりました。僕たちは地球が始まってからの長い時間の一部分を旅し、人生の終着点までたどり着いて、また誰かにバトンを渡すっていうサイクルの中にいるんだなって改めて気がつきましたね。

ーー記憶に残っている旅のエピソードはありますか?

小泉:自然のある場所に行きたいなって瞬間がたまにあるじゃないですか。僕はあまり旅行するタイプじゃないんですけど、そういうときはフラッと箱根へ行って、川のせせらぎを聴いて温泉に入ります。少し静かな場所のほうが、癒されるんですよね。

谷口:僕は初めての海外旅行が印象に残ってます。ニューヨークでミュージカルを観に行こうって、開演数分前に急遽チケットを購入して、劇場まで走ってたんですよ。そんな僕らを見た警備員さんやチケットもぎりの係の人が「カモン!カモン!!もう始まるぞ!」って応援してくれたんです。そんな風にコミュニケーションが取れる環境が楽しくて。みんなのびのびして自由で、人と接していて心地がよかった。

あと路上や地下鉄でギターを弾いたりドラムを叩いている人も見かけたんですけど、みんなすごく上手いのにプロじゃないんだ!って驚きました。やっぱり日常的に音楽がそばにあるんでしょうね。ニューヨークは街と音楽が結びついている感じがして、ミュージシャンとしてすごく居心地がよかったです。

古賀:僕はツアーの移動も旅だと思っているので、47都道府県ツアーはとくに記憶に残ってます。ひとりでご当地グルメを食べに行ってたので、ひとり旅をしている感覚でしたね。正直僕はメンバーと一緒に行きたかったんですけど、なぜかみんな勝手にどこかに出かけちゃうから、僕も仕方なく。なんでみんなで一緒に行かんのやろ?って思ってましたけど(笑)

ーーたしかにツアーも旅ですよね。現在全国ツアー中ですが、印象的な思い出はありますか?

谷口:仙台のライブハウスはすごかった!楽屋裏に映画が観られる環境とか、駄菓子屋さんやカフェバーにジムまであるんですよ。しかもそれが全てスタッフみなさんの手作り!おもてなしに感動しました。おかげでライブが始まる前や終わった後も楽しかったです。あとは久しぶりにツアーをして感じるのが、各地に足を運べるのは幸せなことだなって。バンドやっててよかったっていつも思います。

古賀:僕たちを待ってくれてる人たちが、各地にいることがとにかく嬉しいです。僕らが地方でライブをして、そこに来てくれるファンの方がいることがめちゃくちゃ幸せですよね。

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ーーでは選曲にうつりますが、Ki/oon Musicに所属するアーティストで、旅するときに聴きたい楽曲を教えてください。

小泉:ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「今を生きて」ですね。この曲を聴きながら、誰もいない朝方の商店街をゆっくり歩くのがいいんですよ。ビート感も良くて元気にもなるし、1日のスタートにもぴったり。実際ツアーのときに聴きながら朝ひとりで歩いてたんですけど、落ち着きましたね。

谷口:ASIAN KUNG-FU GENERATIONといえばアルバム「サーフ ブンガク カマクラ」は旅にぴったりだと思う。とはいえ僕は出不精なので、まだこのアルバムを聴きながら江ノ電に乗る夢は果たせていないんですけど(笑)なかでも「藤沢ルーザー」はアップテンポな感じとかいいですよね。あとは「旅立つ君へ」も好きです。「何が待ち 誰と出会うだろう」っていう歌詞は、グッと来ます。

古賀:同じアジカンだと「Easter」とかもいいですよね。ひとりで旅をしながら歩いているときに聴けば、自分の気持ちを鼓舞してくれそうというか、自分だけの楽しみ方を見つけられそう。もし僕が旅に行くのなら自分だけの世界に浸りたいから、人目を気にせずに自由に心を解放したい。だから没入感のある曲が旅にあうと思います。シナリオアートの「ホワイトレインコートマン」とかは、歌詞も曲も物語的なので自分も物語に入った気分になれそう。

あとは、PELICAN FANCLUBの「三原色」も旅の道中で聴きたいですね。旅先に到着してからとか帰り道ではなく、旅に向かう途中。サビの開放感とかの雰囲気がいいんですよね。

谷口:PELICAN FANCLUBでいえば「Telepath Telepath」は、異国情緒が漂ってるし旅向けの楽曲ですよね。ヨーロッパのようなメジャーな旅行先ではなくて、不思議な雰囲気の国で聴きたい。自分の想像がつかないような街並みを歩きながらとか。チャットモンチーの「バスロマンス」も小さなスーツケースを持って、ふらりと街中を歩きたくなる曲ですよね。

あとリーガルリリーの「東京」は東京の風景を見事に切り取っている。とてつもない速さで生まれ変わっていく街を、すごく丁寧に面白く表現しているなって。僕らは東京で暮らしているけど、地方在住の人が東京へ旅行に来たときに感じる気持ちなんじゃないかな。

ーー他のアーティストの楽曲はどうですか?

小泉:NICO Touches the Wallsの「Passenger」が好き。迷った旅のときに聴いたら、背中を押してもらえそう。曲調もよくて、サビが力強くなるところが気持ちがいい。あとは「バイシクル」からも力をもらえますね。人生をペダルにたとえている曲で「ペダルを漕いでいるうちは 倒れず前へ進むでしょう」って歌詞には、グッときます。ひとりで旅をしながらというよりは、悩んでいる友達と一緒に旅をしながら聴いてお互いを励まし合うみたいな場面があう曲かも。

谷口:NICO Touches the Wallsの「ホログラム」もトラベルっぽい!パッと景色が広がる感じとか。もう解散してしまったけどLILI LIMITの「Festa」も景色が想像できるような楽曲なので旅にあいますよね。太鼓の音が印象的で、旅が楽しくなる感じですよね。太鼓やコンガなどの打楽器って、住んでる国や人種など関係なしに楽しくなれる楽器や音だと思います。

あと旅といえばドライブは外せないですよね。ドライブにあう曲といえば、the chef cooks meの「環状線は僕らをのせて」や、ユニコーンの「WAO!」とか。電気グルーヴの「FLASHBACK DISCO」もアクセルを踏み込みたくなる曲ですし。挙げはじめたらキリがないですよね(笑)

古賀:旅とは少し違うかもしれませんが、旅先で思い入れのある曲を聴いて思い出に浸るのも素敵だなって思う。それでいうとFLOWの「DAYS」は、旅中に聴きたいです。高校の時に先輩が演奏していて、僕も憧れてコピーした思い出の曲なので。

谷口:思い出を遡るような記憶の旅ができるのも音楽だからこそですよね。
僕の思い出深い曲は、ねごとの「カロン」です。コンビニでアルバイトしてた18歳くらいのときによく耳にして、自分と同じ歳なのに悔しい!って思った記憶があります。でも「いま 涙の国を超えて」って歌詞とか、メロディーがすごくいい曲なんですよ。音楽を通して、あの頃感じた悔しさや恋なんかを思い出したりできる。だから音楽は素晴らしいな。


ーーKANA-BOONの楽曲は前向きな気分にさせてくれるものがたくさんありますが、そういう曲を作るときにルーツになっているようなアーティストはいますか?

谷口:実は参考にしてるアーティストはいなくて、自分の発想のまま曲作りをしています。メロディーを先に考えて、この曲はどんな言葉を求めているんだろうと問い続けます。サウンドを作る時点で、前向きな曲になるかどうか決めている感じ。

ちょっと落ち込んでたり悩んでるときにこそ、前向きな曲が生まれるんですよね。元気でハッピーなときに、人の心に刺さる曲とかはできない気がする。明るいときに「もっと明るくなりたい!」って思わないはずなんです。この状況から抜け出したいとか、暗さの中に光がほしいみたいなときに聴きたい曲の方が、前向きな曲だと思う。

古賀:タイアップのときは、曲の方向性が決まったうえで曲作るの?

谷口:そうだね!たとえばアニメのオープニングソングの作曲とかは、原作を読んで作り込むね。自分たちが少年時代にアニメのオープニング映像をみて感じたワクワク感とか、ちゃんと表現したいし。

古賀:楽曲がアニメ作品の表情を作る役割をしているもんね。


ーーレコーディング時、トーンの明るい曲・暗い曲などで演奏を分けていたりしますか?

古賀:歌詞に対して、自分がこう思うっていうのをギターで伝えるように弾いてますね。感情って楽しいとか悲しいとかシンプルな気持ちだけではなく、楽しさのなかにもセンチメンタルな部分があったり、前向きな中でも少し後ろめたさがあったり複雑ですよね。複雑な感情も音で表現して、思いを込めて届けたい。憑依している感覚に近いかもしれないですね。

小泉:ドラムのリズムも歌詞によって変えます。ドラムで引っ張っていくのか、それとも歌詞を押し出すように前にだすのかによって、全然違います。
なので曲のイメージは大切にしつつ、風景とかが想像できるように演奏していることが多いですね。

谷口:どんな曲なのかがわかりやすいのは、意外とドラムだよね。

古賀:こいちゃんが楽しそうにドラムを叩いているときって、音もすごく楽しいんだよね。

小泉:お客さんがどうノッていくのかって、ドラムのリズムで決まるんですよね。だからお客さんにどう聴かせたいのかを、きちんと意識して音を届けています。

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Ki/oon Musicでは毎月月末にプレイリスト”Dig Ki/oon”を公開していきます。

Dig Ki/oon -Travel-
Pick Upアーティスト:KANA-BOON(谷口鮪、古賀隼斗、小泉貴裕)

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