見出し画像

「資本主義だけが残った」読書メモ

図書館で借りて読みました。

どんな本か、最後の方の解説では下記のように紹介しています。

高度にグローバル化した資本主義がモラルを欠いた強欲によって駆動され、際限なく格差を拡大させるメカニズムであることを正確に指摘し、そこからの軌道修正を迫る本。

納得する内容が多いですが、この本を読んで、じゃあ自分たちの生活はどうなるのか、どうするのが良いのか、身近なところまで改めて考えてみました。

平たくいうと、資本主義に変わるものは現時点では誰も提案できておらず、しばらく(おそらく数百年?)は資本主義をベースとした社会が続くが、少なくとも今のままの資本主義には限界が来ていて、さあ、どういう方向に転換していくのか?考えよう、というので最後に少し提案が書いています。

資本主義がグローバルに広がったことで、社会が豊かになったことは間違いない。その一方で、道徳やモラルなどは置き去りにされ、つながりなどもどんどん失われていく、不平等の拡大というのも資本主義ではデフォルトの設定である。さあどうしよう?

【解決策1】
この資本主義の世界で能力を磨き、スキルを身につけ、高付加価値の人間となり、生き残っていく。

これが一番多くの人が目指していることなんだと思います。
キャリアアップ、資格取得、出世、独立、起業、だいたいが、より価値のある人間となり、これを目指すのだと思います。

でもこれって、競争相手が世界の人たちになっていくので、生き残るのは本当に大変かつごく一部なのだと思います。いわゆるリベラル能力主義の社会です。

リベラル能力主義の特徴
・アメリカの資産所有者の上位10%が金融資産の90 %以上を保有
・支配層は高い教育を受けて、さらに労働もしている。高い労働所得と高い資本所得がある
・上位層は血筋や職業の基準によって決めず、富や教育に基づくものであることから「開かれた」上位層である。これは裕福で高い教育を享受できる最高の構成員を下位層から取り込む。

近代以前はお金持ちは能力がない人でも遺産相続や血縁だったので、貧乏人も「能力もないくせに金持ちが」というので溜飲を下げられましたが、このリベラル能力主義では、めっちゃ努力もしているし、資本家になってももっと働く、ということになり、「能力もあるし、カネもあるし、努力もしてるし」ということで、溜飲を下げるポイントがありません。

でも当たり前ですが、このレイヤーになれる人は本当にごく一部の人。
これは無理。頑張れない。

【解決策2】
この競争社会からフェードアウトしつつ、自分らしい暮らし・生き方を目指す。

これはなんかいいですね。それこそ地方で二拠点居住をしながら、ゆったりと仕事をしてぼちぼち稼いで、ぼちぼちの暮らしをする。

ただ、どうやらそうも言っていられなさそう。。。

完全にグローバル化し商業化された世界では、他の国や地域の所得と比べてイタリア人の所得が下がり続ければ、もはやイタリアの美はその本来の住民が楽しむものではなくなるだろう。しかもそうなってはならない理由がない。商業化した世界では何もかもに値段がつく。

日本の土地を海外資本が買う、食料の多くを輸入に頼っている日本にとっては、いずれマグロも高くなりすぎて日本人は食べられないかもしれない。美しい場所も買われてしまって見られなくなるかもしれない。最近ではガソリン代も高くなっているし、生活必需品も値上がりするかもしれない、そうなるとぼちぼちの暮らしすらできなくなってしまうかもしれません。

【解決策3】
100%の衣食住、エネルギーの自給自足生活。
これをやれるような人はどんな社会でも生き残れそうなので、あまり参考にならなそう。。。

じゃあどうすれば良いのか?
本書では最後にちょろっとだけ、こうなったらいいんじゃないのか?と提案があります。

まず、資本主義がいかに強力かをいろいろ説明しています、ネガティブポイントも。

グローバルな資本主義がしていることは、以前は家族や友人、地域社会から持ちつ持たれつで提供されてきたもろもろの活動を、消費者としての私たちがお金で買えるようにすることだ。
社会が豊かになればなるほど商品化の領域が拡大する。
商品化の拡大で暮らしは良いものになり、選択肢も増えるが、個人感のつながりを弱める。
経済的な成功はもっと良い暮らしを送り、もっと長生きできる一方で、それに比例して道徳のみならず幸福すらふえることがないといった矛盾をさらに深刻なものにした。
交流が切れると、親切で協力的な態度を取る空間が縮んでいく。行き着く先は富のユートピアと同時に対人関係のディストピア

物質的には豊かであるけど、心が死んだような社会になってしまうのでしょうか、、、新自由主義の行き着く先はこうなってしまいそうな気も。。。

じゃあ今の資本主義の暴走を止められるのか、いや、それも難しそう、、、と言っています。

不平等の拡大の理由は?
交渉力の強い労働組合、教育の大衆化、累進性の高い税負担、政府による大規模な所得移転。が機能しなくなってきたから。

教育も幼少期の頃からのエリート教育と受けられない教育(日本はまだ平気ですが、いずれそうなる可能性も)、労働者の団結が無理(そもそもAIなどで労働者自体がどんどん不要になっていく、、、)税負担を高くしようとすると、税金が安い国に企業が逃げてしまう、、、

結果、より格差は拡大し不平等も拡大する。。。と。

どうしようもない、、、という中で最後に本書では民衆資本主義という言葉で、こういった資本主義もありえるのでは?と提案しています。

民衆資本主義。
誰もが資本所得と労働所得をほぼ等しい割合で得ている。
無償の医療と教育。

まだ日本は医療や教育を受けられる水準が高いので、こういった方向性もありえる気がします。

なので、もろもろの折衷案がつまらないですが、一番現実的な解決策になるのかな、、と。

【解決策4】
・少ない金額でも投資家サイドになる(企業の株購入など含めた投資)
・ある程度働きながらお金に頼らずともいけるコミュニティを作ったり、少し自給自足をやる
・半農半投資家のうような暮らし。

今流行りのFIREムーブメントなんかもそれに近い気がしますね。
資本主義のパワーで投資なども少しずつしながら、資本主義に頼らなくても暮らしていけるように作物を作る、コミュニティを大事にする。

それぞれの強弱はありながらもその辺を目指していくのが、一番良いのではないかなあ、とそんな気がします。

ただ受け身で思考停止でいたらあっという間に飲み込まれてしまいそうなので、しっかり考えたり、ジャンルを問わず学んでいくということは非常に重要なものだとも改めて感じました。

図書館とか無料であらゆる本が借りられるとか、本当に良いサービスだと思うので、もっと活用すべきだとも思います。といいながら本をちゃんと読むようになったのは30歳ぐらいからなのですが、、、




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?