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ex落語家について①

私が彼を知ったのは彼が前座だったときのこと。
師匠の会の前座で落語を演じていた。
師匠が上手い人だから弟子が上手いのは当たり前か、という感想の他に、
「あの人、なんか座布団から浮いてない?」
「いやもうなんか佇まいが可怪しいし」
「顔はいいのに、なんか妙」
頭の中に落語に集中しようという気持ちとは別の部分が
どんどん気になり落ち着かない心持ちになってきた。
そうなるともう解決策は一つ、手帳に名前を書き、覚えておこうと念じるのみ。
書かれたその名は『春太』

それから数年後、心を病んだ私は2つ目にあがり名前の変わった彼の東京の独演会に行き、手紙を押し付けて帰郷した。
どうせ返事などあるわけがない、
こんな縁もゆかりもないへんてこな人間が
新潟というそこそこの田舎で「落語会をしたい」と書いたところで、応じる噺家などいないだろう、そう思っていた。
ところがあっさりと次の日、ツイッターのDMで快諾の返事が来た。
「いやいや、ご冗談でしょう(笑)」
とりあえず嘘だろうとBSで映画を観なから、3時間ぐらい放置した。
それくらい信じられなかった。他人も、世界も、自分も。
明日死のうと思っていたのに、なんで落語会をすることになるのだ!!
身勝手な話だと今は思う。


基本的に人付き合いが苦手で、友達と集えるのはフジロックを通じてぐらいのレベルの人間が、
彼の落語会を始めたのがきっかけで5年も落語会を続けている。
世の中、狂っている。

そして前座名「立川春太」だった「立川春吾」は2015年、落語界を退いた。
世の中、本当に本当に狂っている。




立川談吉さん・立川志の太郎さんを新潟県下にお招きし、「定点観測」という落語会を開催しております。次回は2019年12月、談吉さん・志の太郎さんの二人会を新潟・長岡にて開催。ゲストはナツノカモさんです。