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ex落語家について②

 立川春吾の落語会をするのであれば、それ相応の名前をつけなくては。
そう思っていたわけではなかった。
人生踏み外したついでだからと、友人が実家の佐渡に水道管の水抜きをしに行くというのに付いていった先の、寿司屋のカウンターでうまい鮨を頬張りつつ、思いついたのが±3という名前だった。
座布団から浮いているような、沈んでいるようなイメージを記号に表したらこれしかなかった。
以後、±3事務局から±3落語会事務局、と少しわかりやすいワードも入れて現在は活動している。

立川春吾とは冬の新潟・長岡、秋の新潟・長岡・佐渡、と計5回の落語会を行った。タバコを吸いながら星野源を聞きつつ、信越線の電車を待っている時に思いついたのが「定点観測」という落語会の名前だった。
その中で彼は演目を一つもかぶらせなかった。
彼にとっての初めての地方公演。自分を全部を見せたかったんだろうなと思う。後々、その演目帳を見て彼の弟弟子が絶句した後、「あの人、やっぱり化物だわ」とつぶやいた。

 

 その名前の時の彼と最後に話した会話は「次回は二人会とか、どうですか」だった。
佐渡の単独以降、東京のとある会を除いて、彼のスケジュールが白紙なのは気づいていた。
一向に更新されないスケジュールをわかりつつ、暗澹たる思いでその言葉を口にした。
どうせ、この会は空想の産物になるだろう。でも言いたいことは言っておかないと後悔をする。

「次は二人会をしましょう。春吾さんと談吉さんの二人会を」
「談吉とだったら楽しい会になりますよ」

予感通り、次はなかった。

辞めるという報告を受けた時、うちの会も畳もうかと思ったが
相談の末、春吾の置き土産として会を継続することになった。
継続するならと一つだけ条件をつけさせてもらった。

「立川談吉さんを紹介して下さい。談吉さんの会でないとやる意味がないので。」

タバコを辞めた。
そして今につながっている。


立川談吉さん・立川志の太郎さんを新潟県下にお招きし、「定点観測」という落語会を開催しております。次回は2019年12月、談吉さん・志の太郎さんの二人会を新潟・長岡にて開催。ゲストはナツノカモさんです。