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となりの√
音楽家はぼくに語った
算数に小数が現れたときの驚きと不安を
1のすぐ前に見えた家にいるはずの気安いお隣さんに
逢うためにたどる道がみえなくなった
まわりに座っている友だちにはみえるのだ
1の隣にあるものが
それをみえないのは自分だけ
誰にもうちあけられない音楽家がその後とった行動は
ひたすら算数それから数学を勉強するというものだった
その後、高校の机の前にすわった音楽家は
恐れていた質問を数学の教師からきくことになる
「1の隣はなんですか」という問いに
答えられなかった音楽家は数学から遠くへむかった
森の木からころがってきた
ドングリのそばで目覚めたぼくの隣に
どこからか対の翼が降りてきて静かにとまる
棒切れのようなぼくを誰かが蹴って
水たまりの前で枝を擦りむいて泣いていると
隣にとまった対の翅が やがてどこかへきえてゆく
となりの√ √ √
いつからそこにいたの
となりの√ √ √
どこへあなたはゆくの
となりの√ √ √
あなたには隣がみえますか
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