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【見開き1P】目の違和感

※見開き1ページ相当の小説です

 眼球がグラグラする。綺麗にくぼみに収まっていない感じだ。

 今さっき寝返りを打ったところで、目が揺れて目が覚めた。嫌な目覚めだ。それにしてもしかし、寝てしまった理由が不明だ。ここはショッピングモールのコーヒーショップの床の上であり、流石にこんなところで寝落ちするほど疲れていなかったはずだ。

寝返りを打つまで顔が向いていたところにはガラス越しに斜陽が落ちており、目元の辺りが太陽を浴びていたと分かる。外はすっかり茜色だ。

 それにしても、どうして目がグラグラするんだ。

 夜行性な私だから久々に日光を過剰摂取し過ぎた結果錯覚を起こしている――なんてことはないはずだ。確かに今日は少し頑張って昼間から出かけた訳だが、とはいえ外出時には曇っていたし、日傘はちゃんと差していた。ここは屋内だし、許容範囲は超えてないはず。

 それにしても、床で寝てる客が放置されてる状況ってどういう事態だ? ていうかさっきから静か過ぎやしないか? もっと賑わっていたはずなのだけど人が全くいない。

 思えば一緒に来た友達はどこに行ったんだろう。まさか私を置いて帰ったってことはあるまい。どこで何をしてるんだ。別行動するなんて話はしていなかったはず……。

 ちょっと待てよ。記憶が少し飛んでいるな。

 私たちがこの店に入ったときにはすでに夕方に片足を突っ込んでいて、太陽は避けたかったから空席の中でも日光にギリギリ当たらないところを選んで、少し談笑していて……気づいたらこれだ。間がすっぽり抜けている。

 そして目がグラグラしていることで目が覚めた。

「……あ」

 急に目の収まりが良くなった。確かなフィット感。何度かまばたきしてみたがやはり大丈夫。

 これはつまり、眼球がくぼみに適したサイズに修復されたということか。なるほど、それはつまり目が破壊されたいたことを指す訳だが、目を潰されでもしたか?

 いや、記憶が飛んでいることを考えると頭ごと破壊されたんだろう。眼球だけ修復に時間が掛かったと考える方が納得できる。

 私は立ち上がり、ショップの入口(ショッピングモールの方)に歩いていく。正面のショップにはショーケースが立っているが、そこのガラスに私の姿は映らない。

「あー、やっぱり戦っているな」

 遠くから戦闘の音。友達がいない理由に納得した。

「ん」

 十字架を手にした男が私の前までやって来た。

「まだ生きてやがったか吸血鬼め‼」

最後まで読んでいただきありがとうございます