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【見開き1P】ナメクジ世界 is what it ought to be

※見開き1ページ相当の小説です

 白いナメクジが黒いナメクジと盤を挟んでいる。盤は切り株の断面にあり、八×八の方眼となっている。その中央の四マスには白と黒の小さなナメクジが二匹ずつじっとしていた。

「もう少しいいところに住みたいと思ってな、勝たせてもらうぜ?」と黒ナメクジ。
「ごめんけど、俺も負ける訳にはいかないんだ」

 ナメクジたちは牛のように大きく、そして白ナメクジのその巨体から親指ほどが分離した。それは小さなナメクジの姿を形成すると、動き出し、盤に乗って黒ナメクジを一匹挟むところで停止した。すると、黒ナメクジの色がみるみる変化して、すっかり白くなってしまった。

「さあ、次は君の番だよ」

 白ナメクジに促され、黒ナメクジもまた自身の巨体から小さなナメクジを切り離し、盤の上へ。白ナメクジを挟んで黒に変えてしまう。そうやって少しずつ盤が埋まっていき、やがて全てが埋まると、そこは白が優勢な形が出来上がっていた。

「「ありがとうございました」」

 白ナメクジは高らかに、黒ナメクジは悔しそうに言って、盤のナメクジたちがそれぞれの色のもとへ向かっていく。結果、白ナメクジは始まる前より少し大きくなっていた。

「後攻で負けるとはなぁ……。おまえ、強いな」
「ありがとう。でも俺はまだまだだよ。目指してるのはトップなんだ」
「となると山のようにデカくなるまで戦い続けるのか。じゃあいずれ《くろ猛者もさの森》に向かうんだな」

「ああ。その先にいる黒のトップを倒すんだ」

「へえ、野心家なんだな」
「野心じゃないって。なんて言うかな……勝ちたいじゃん」
「なんだ。ただの負けず嫌いか」黒ナメクジは呆れたように笑った。「ま、トップを倒したからって何かある訳じゃないもんな。そりゃいい生活は送れるけどさ」

「いい生活は興味ないんだよね。トップを倒したら、次は別のところのトップを倒したいと思ってる」

「そのまま白に征服されそうだな」
「でもどうせ黒に鞍替えするやつが出て来るよ」
「違いない」

 あはは、と笑い合ってから一息ついて、白ナメクジは動きだす。

「じゃあ俺は次の相手を探しに行くよ」
「ま、頑張れよ。遠くから応援してやるから」

 二人は触角を伸ばして、挨拶を交わす。 

「「平和平等の権力様が君臨なされてるこの世界で」」

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