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自作すごろく、追加ステージの紹介

↓前回の記事↓


 前回、ブラッドボーンを題材にしたすごろくを作ることで非常に満足した筆者ですが、せっかくなら原作に登場する他のステージもすごろくにしてみたい! ということで、追加で6つのステージを作ってみました。
 ……が、しかし、正規ルートの方の制作で才能を使い果たしたのか、今回紹介するそれらには何かと難点や課題が残っていがちです。それを踏まえてご覧ください。
(※今回も新ステージに移るたびにストーリー紹介が入ります)
(※今回も全ての画像の保存をおすすめします)

・旧市街

追加ステージその1 旧市街
旧市街、イベント一覧

 聖堂街でエミーリアを撃破したあなたは、ビルゲンワースの話を耳にしたついでに、このヤーナム市にかつて存在していた街のことを聞きました。いわくその街には手のつけられないほど多くの獣が蔓延り、困り果てた市民たちは捨て身の覚悟で火を放って、街ごとすべての獣を焼き払ったというのです。そしてその後移り住んだ場所が、現在のヤーナム市街になっているのだとか。
 しかしそんな旧市街には、どうもまだ獣の生き残りがいる様子。いつまた街に降りて来るとも知れないその残党たちを、すっかり獣狩りが板についてきたあなたは討伐しに行くことにします。……それを良く思わない者がいることに気づかないまま、あなたは旧市街に足を踏み入れました。

 ……というのが旧市街のストーリー。追加ステージは全てこのように、すごろくの世界的にはifストーリーになります。
 正規ルートで大体の仕様に慣れた人からしても目につく要素として、このステージには「松明があるなら無視」と「狙撃ゾーン」があります。前者の説明は簡単で、要するにそれは「松明を要求するが、松明の回数は消費しないイベント」です。一度焼き払われた街に巣食う獣たちは火を恐れているので、チラつかせるだけで十分ということですね。
 一方、狙撃ゾーンはこのゲームで初めての「歩みだし」を参照するイベントです。「該当エリアで1を出した場合」なので、狙撃ゾーンの最終地点で1を出した場合は、その次の通常マスがその瞬間だけ「一回休み」に変わります。逆に、1を出して狙撃ゾーンの最初のマスに侵入しても何も起こりません。「「ゾーンの中」で1を「出す」こと」がイベントの発生条件になっています。ややこしいですね。このややこしさがさっそくの課題点です。というかべつに、1マス目侵入時に一回休みにしてもらってもゲームバランス的には何ら問題ありません。出ていく時の休みをなくしてしまうと味気ないですが。
 ちなみにストーリーの話に戻りますが、力強くも野蛮で粗暴な獣に、狙撃なんて繊細な芸当はできません。この狙撃ゾーンであなたを狙ってくるのは、平時は人間として社会に紛れて暮らしていた獣たちが焼き払われていく様を見て心が壊れた元狩人……つまり人間です。初っ端から話が重いですね。
 さぁそんな旧市街の中に、一つ聞き慣れない武器が落ちています。「銃槍」と呼ばれるそれは、槍に銃器の機能がドッキングしたお待ちかねの新兵器です。スクショの都合上多少この先のネタバレにもなりますが、ここはパッとその武器効果を見てしまいましょう。

銃槍を探せ!

 はい、というわけでさらなる新要素、「出目その物として扱う」の登場です。
 ロマに始まり再誕者でも採用されていた「出目」の概念。それは武器による補正とは切り離されたサイコロの表示その物を指す言葉でしたが、ついにその「出目」その物に干渉する武器が現れました。
 銃槍の効果は1を6に変えること。つまりこれを使えば再誕者戦では1/3の確率で他プレイヤーを-3できるということです。またそうでなくても、ダイス勝負において「少なくとも勝ちではない出目」を「少なくとも負けではない出目」に変えられるわけですから、強力な武器だと言えるでしょう。
 そしてそんな武器を運良く拾ったり拾わなかったりして挑む旧市街のボス戦「血に渇いた獣」は、ルールブックで匂わせられていたこのゲーム初の「一度に二つのサイコロを振る」という処理の絡む存在です。
 前回の記事で裁定の更新は書かないと言いましたが、思ったより更新が多かったので、旧市街のボス戦の解説ついでにそれらをここに公開しておこうと思います。

 ひとまず血に渇いた獣戦の話だけをすると、まぁ書いてある通りなのですが、「教会の石槌(奇数+2偶数-1)のメリット効果とデメリット効果がどちらも該当した場合はどうなるの?」という点についてだけ話しておきましょう。結論、「その裁定の内容によって血に渇いた獣を撃破できるかどうかが変わる出目の組み合わせは存在しない」です。
 石槌の件の争点は+1になるか+2になるかで、要するにボスの要求値8に対して出目の合計が6になる時が問題となるわけですが、和で偶数を形成する数字の組み合わせが奇数+偶数になることはそもそもあり得ないので無問題なのです。数字って不思議ですね。……テストプレイ前はこのボス戦の要求値を7にしていたのは内緒です。
 さて、ところで冒頭で言ったように、追加ステージのほとんどには何らかの難点があります。旧市街の難点とは何でしょう? ……それは「書いてあるイベントの大半が発動しないこと」です。
 松明系のイベントについてですが、「松明があれば」というテキストは、当然といえば当然ながら、そもそも一人も松明を持っていないという状況になればインクの染みに等しくなってしまうテキストです。なのに松明の入手確率は「武器入手→1/6」であり、ストーリーに忠実に旧市街へ来た場合、その獲得チャンスは各人多くて2回(しかも1位は除外される)なので、かなり渋い確率です。しかも松明は元々マス効果を一度無効にできる効果を持っているので、インクの染みがきちんと機能するのは「松明を持った人がいて、なおかつその人が二回以上バッドイベントに止まった時」だけです。ストーリー的なフレーバーとゲーム性がマッチしない良い例ですね……。
 しかもその上、狙撃ゾーンの発動率も1/6で同じく渋い。これはテストプレイ中に1/3にまで引き上げようかと思ったのですが、その場合、他のイベントマスに「一時的にそこを一回休みマスにする」という効果がめり込むことになり、裁定リストがまた一行増えてしまいます。では効果を「次のターンを一回休みにする」に書き換えれば……とも思ったのですが……。
 ……狙撃を「背後からの奇襲」で回避する光景、見たくないですか? ちょっとそのロマンを捨てる気になれませんでした。だってそもそもがせいぜいただの一回休みですよ。ロマンに勝る物とは思えない。
 しかしまぁまとめてみればそんな感じで、このステージは銃槍とボスを除いてなんだかしょっぱい作りになってしまいました。聖堂街の「教会の使い」もそこそこしょっぱいイベントでしたけど、あのステージは人攫いと力場が相当いい味付けになっていたんだなぁ……と改めて実感させられます。
 ちなみにですが、松明はあらゆるマス効果を1ステージに1度だけ無効化できるので、狙撃を回避することもできます。絵面を想像するとちょっと謎ですが、獣狩りの斧がエミーリアに効かない問題と同じような物だと思ってください。
 なおわざわざ裁定には書いていませんが、松明はアメンレーザーなども回避します。炎の中に未来でも見えているのかもしれません。

・ヘムウィックの墓地街

追加ステージその2 ヘムウィックの墓地街
ヘムウィックの墓地街、イベント一覧

 旧市街の獣を掃討し終えたあなたに、耳寄りな情報が入りました。聖堂街の隣にはヘムウィックと呼ばれる街があり、そこは死者の弔いを生業とする者が多く暮らす地域らしいのですが、最近は「魔女」と呼ばれる老婆とその使いたちがそこを根城にしているらしいのです。そしてその魔女は、今後の獣狩りに役立つアイテムの作り方を知っているのだとか……。
 さぁ、墓を掘り返しては得体の知れない実験ばかり繰り返している危険な魔女をしばいて、ついでにそのアイテムとやらをいただきに行きましょう。
 ……というのが、ヘムウィックの墓地街のストーリー。言うのが遅れましたが、このすごろくのストーリーは原作とは多少雰囲気が異なります。些細なことですが。
 さて、ヘムウィックの墓地街で現れる新要素はほとんど一つだけです。それは「骨髄の灰」。これは消耗品のアイテムであり、水銀弾のマスに止まった際に使用することで、その効果を倍にします。
 ボス「ヘムウィックの魔女」は出目を予想して当てる初めてのタイプのボスですが、ここで参照するのも「出目」なので、銃槍を除いて武器で干渉することはできません。ほぼ純粋な1/2ギャンブル×2だと言えるでしょう。
 ボス戦自体に特別なことはありませんが、最も早くクリアした人が特典を得るという、初めての1位優遇措置がここには採用されています。正規ルートでは影の薄かったカレル文字も、これで少しは目立つようになるでしょうか。
 ……と、マス数も短く箸休め的な印象のある本ステージですが、やはりというべきか難点・課題を抱えています。それは何かというと……虚無が生まれがちだという点です。
 魔女の使いは教会の使いの下位互換、解体人は市街地下ルートの巨大豚と同じ、ボス戦の特典は1位以降は失われる……と来ると、2位以下に残されたこのステージ特有のお楽しみ要素は骨髄の灰くらいの物になりますが、これも二つ落ちているだけです。
 また、ボス戦で銃槍以外の武器が機能しないことも味気ないと言えるでしょう。ゲームをつまらなくしている要素はほとんどないけれど、面白くしている要素も多いとはいえない。そんな微妙な仕上がりになってしまいました。
 これらの問題の原因は単純にぼくのアイデア不足にあります。骨髄の灰だけは完全にナイスアイデアなので、その原産地であるヘムウィックの墓地街はなんとかして採用したかったのですが、原作の「途中から二人に分身して逃げ回る」というボス戦をすごろく上で再現することや、次から次へと襲い来る魔女の使い……という名のババア軍団の雰囲気を再現することが、あまり出来ていないように思います。そして他の味付けも確保することはできなかった。
 原作におけるヘムウィックの墓地街は(すごろくにおいて非常に反映しづらい要素である)美術的な特徴が強いステージで、すごろく上に書いたことを除けば、あとはババア軍団の配置の妙と要所要所の落下死の恐怖くらいしか印象に残る物がありません。しかし落下死とは要するに、すごろくにおいては「一回休み」や「特定の地点に戻る」でしょう。どちらも狙撃や力場といった直近のステージで採用済み(あるいは、重要アイテムの取得率を上げるという点では、禁域の森の迷子にも類似する)のイベントであることを思うと、今さらウケるとは考えづらいです。むしろテストプレイをしていて、ここに落とし穴があったらダルいな……と思うことの方が多いくらいでした。
 なのでこのステージに関しては、むしろこっちがどうすればいいのかを聞きたいくらいです。誰かたすけて! 骨髄の灰を活かしつつ、どうすれば面白くできるの……? 教えて……!
 ……返事がない、ただの一人ぼっちのようだ。

・聖堂街上層

追加ステージその3 聖堂街上層


聖堂街上層、隠しボス
聖堂街上層、イベント一覧
聖堂街上層、隠しボスについて

 医療教会が完全にやばい組織だと知ったあなたは、その流れで「聖堂街には一部の内通者だけが立ち入ることのできる「上層」がある」という情報を得ます。教区長の肩書きを持つエミーリアすら上層に立ち入ることはできなかったようなので、どうやらよほどのトップシークレットらしいです。
 ビルゲンワースに向かうのも良いですが、その上層とやらも気になるところですよね。シークレットな場所とはいえ、元々向かおうとしていた森にも「禁域」と書いてあったくらいですし、場所さえ知ってしまえばこちらのものです。聖職者がことごとく獣であったことが判明して世間がざわついているうちに、どさくさに紛れて上層に潜り込んじゃいましょう。
 ……というのが聖堂街上層のストーリー。原作では隠し街ヤハグルで鍵を拾ったあと改めて聖堂街に戻ってくる必要があるのですが、すごろくでそんなわずらわしいことをしている暇はありません。
 上層の特徴的なイベントは、前方3マスを変化させるシャンデリア落下でしょう。あとは脳喰らいの群れが目立ちますね。
 このステージでは血に渇いた獣と同じ形式のボスをオーバーキルすることで、隠しボスであるエーブリエタースに挑むことができます。……要するにそれは、足止めの期間が伸びる可能性と引き換えに、破格の武器を手に入れられる機会を得られるということです。
 彼方への呼びかけについてはすでに紹介済みですが、エーブリエタースの先触れのついでに画像で紹介しておきましょう。

エーブリエタースの先触れを探せ!

 エーブリエタースの先触れとは要するに、移動時には使えなくなったかわりに1位でも使える上、他の武器と同時に使用できる「獣の爪」です。「今後あなたの行う戦闘全てに無条件で+1する」と読み替えてもらっても構いません。ぶっ壊れアイテムですね。しかもそこに彼方への呼びかけが二つも付いてきます。これなら相当な確率でミコラーシュをしばけますよ。
 と、個性には事欠かないことがこのステージのいいところなのですが、それでもやはり課題は残っています。……それは「水銀弾がないこと」と「別れ道が完全に明暗分かれてしまっていること」です。
 前者は当然、骨髄の灰に関連した話になります。せっかく骨髄の灰を得ても、得たステージとその次のステージでは使う機会がない……というのは明確な欠陥であるように思いますが、見ての通り上層や墓地街には、もう水銀弾などという「向こう3マスの内容を消し飛ばすイベント」を入れるような隙間はありません。他のイベントでギチギチです。
 かといって、水銀弾のためにマス数を増やすというのも考えものです。特に上層は紙を2枚使って縦に長くすれば水銀弾を入れる隙間くらいは確保できるでしょうけど、それが面白くなるのは、骨髄の灰を持っている人がいればの話です。正規ルートのように空いたマスに水銀弾を入れるのと、水銀弾のために空きマスを用意するのとでは、意味合いも出来映えも違ってくるでしょう。
 一番いいのは、シャンデリアから落ちてくる物を輸血液ではなく水銀弾にすることなのかもしれません。そもそもなぜここが輸血液なのかというと、原作ではシャンデリアにぶら下がっていた3匹の獣(倒すと輸血液を落とす)が襲来するからなのですが……。つまりはこれまた「原作要素とゲーム性が噛み合わない案件」になってしまっているということです。追加ステージに来てからというもの、なぜかこういうことばかり起きてますね……。どうしても気になるようなら、お好みでシャンデリアから水銀弾を落として遊んでください。
 また後者の「別れ道の明暗」ですが、実は正規ルートでの別れ道には全て「どちらのルートにも利点があった」のです。禁域の森の「三本目のへその緒とカレル文字」の2択、「シンプルな近道とワンチャン隠し通路」の2択、ヤーナム市街だって地上の方が近道ですが2を出してしまうとループする犬が2匹もいますし、なんなら大橋で全てリセットされる可能性もありました。しかし上層の別れ道は、そういったワンチャンスの救いさえ残されていない仕様になっています。シンプル遠回りと脳喰らいですからね。武器を得られる一回休み程度のデメリットでは釣り合わない。
 別れ道がこうなってしまった理由についても、また原作再現が関係しています。ここで再現した物は、「上層には脳喰らいが大量にいること」「宇宙人の再来」「「交信」のインパクト」の3点です。脳喰らいを大量に配置する都合上、少なくともBルートに多くのマス目が必要になることは制作以前から確定していました。
 それに合わせてAルートも長くすることを考えましたが、空いたマスに入れるイベントが水銀弾くらいしかありませんし、水銀弾というメリット効果を入れると結局は話が振り出しに戻ります。それに、「ボス戦までワープ」を超えて使う骨髄の灰という物は、あまり気持ちよくない物です。
 ……あ、いや、もしかして、Bルートのどこかに宇宙人を置いて、Aルートに水銀弾を置くべきだったんでしょうか? あっそうかも、それで全部解決じゃない? やったー! 思考を文章に起こしてみることの大切さを知りました!

改修後の、聖堂街上層

 いや〜、突然の改修でしたね。でもこれでどちらのルートにも希望ができてよかったです。シャンデリアから何を落とすかは相変わらずお好みでどうぞ。
 あ、ちなみに、このステージにはまだもう一つ問題点があります。それはエーブリエタースに関する内容が上層の裏面に書かれていることです。紙に完全にスペースがなくなったので、「ゲーム中に割れる窓なんてそれまで一度も出てこなかったのに、星界からの使者撃破後に近くのデカい窓を攻撃するとそこが割れて隠し通路が出てくる」という原作の再現として、分かるわけないだろ!と言いたくなるような場所にノリで書き込んだのですが、書き込んでから思い出しました、これってすごろくなんですよね。
 このステージが、一人だけ挑める(つまり早い者勝ちである)隠しボス戦の方に裏返されることはほとんどありません。誰かが隠しボスにたどり着いても、表面ではまだ皆すごろくをしているからです。

・廃城カインハースト

追加ステージその3 廃城カインハースト
廃城カインハースト、イベント一覧
カインハースト、ボス戦について

 禁域の森で苦戦していたあなたは、そういえばこんな話を聞いたことがある……と、唐突に昔話を思い出します。
 その昔、ある雪の降りしきる寒冷地には、食人文化を伝統とする恐ろしい貴族たちが住む城があった。カインハーストと呼ばれるその城に住む貴族たちは特に人の血を嗜むことを好み、定期的に人を攫ってきてはその生き血を抜いていたのだという。
 しかしある時、その貴族たちは一夜にして滅ぼされた。彼らの攫ってきた者の一人が、人の姿に化けた獣だったのである。貴族たちはあっという間に獣に食い尽くされ、巨大な城は廃墟となった。……それ以降、そこへ訪れた者は吹雪の中で、誰もいないはずの廃城から女のすすり泣く声を聞くのだという……。
 ……なんて言い伝えがあるけれど、そのカインハースト城がどこに建っているのか、肝心なところは誰も知らないのである。おとぎ話の類であろうと、あなたもそれを一蹴していたのだけれど……。
 迷い果てた森の中で、ふと気がついた時には、あなたの行く先に馬車が止まっていた。……その馬の毛には、白い雪の粉が寒々しく凍りついている。
 ……というのが、廃城カインハーストのストーリー。ちなみに原作では城への招待状を得たあとでヘムウィックの墓地街から馬車に乗ります。全然違うじゃねぇか。
 すごろくにおけるカインハーストの特徴はまず「教会武器」の概念です。狩人の使う武器はそれぞれ製造されている場所が違ったりするのですが、その中でも教会製の物を持っているとここでは役に立ちます。
 前回記事に載せた武器一覧にも書いてあったとは思いますが、改めて教会武器の一覧を挙げると、
・仕込み杖
・教会の石槌
・ルドウイークの聖剣
 の計3種になります。これらのうちのいずれか一つでも所持していれば、血舐めや幽霊や悪霊の効果がマシになるわけです。旧市街における松明と似たイベントだと言えますね。
 そして、ここで朗報です。この廃城カインハーストは、追加ステージの中で最も出来の良い最高傑作になっています。正確にはステージが良いのではなく、ここで得られる武器が良いのですが、別段悪いところのないステージに最高の武器が付いてくるのですから、問題児だらけの追加ステージの中では最高傑作と呼んで支障ないでしょう。
 そんなカインハースト製の武器の一覧がこちらです。ちょっと見切れてますけど問題はないはずです。

カインハースト製、武器一覧

 一つ一つ解説して行きましょう。
 レイテルパラッシュは、要するに銃槍の亜種です。槍ではなくレイピアに銃の機能が付いているオシャレ武器ですが、銃槍が1→6だったことに対してこちらは1→2~7になるので、平均的な性能では劣っていると言えます。
 しかしレイテルパラッシュには、銃槍にはないロマンがあります。それは1を出し続ける限り無限にダイスロールを繰り返せることです。この武器の出目は理論上はインフィニティなのです。……まぁ無限は冗談にしても、勝利点を参照されるミコラーシュ戦などではこの1点差が重要になったりするかもしれません。
 次に紹介するのが千景(ちかげ)。このゲームで一二を争うおもしろ武器です。刀なのですが、血を嗜む貴族の城に落ちていただけあって、使い手の血を糧に威力を増す妖刀になっています。そしてその「自傷」をすごろくで再現したのが、他プレイヤーへの援助というわけです。
 千景を振った際の威力は圧巻! あいこでも振り続ける前提で言えば、なんとイーブンなダイス勝負での勝率は8割超えを誇ります。+2もすることで勝利点の期待値も申し分ないでしょうし、まさに最終兵器です。
 しかもさらに良いことに、誰かが千景を振るうと他プレイヤーも嬉しい! 他人のターンに先へ進めるという他では得られないハッピーさを得られたり、自分まで千景と同じ力を得られたりします。千景が機動すると間違いなくその場の皆が笑顔になりますよ。筆者も一人ですがにこにこしながらテストプレイをしました。また、ミコラーシュ戦でビリ争いになった時はデメリットが怖くて使用を躊躇いたくなるところも、ワンパターンを避けるという点で優秀です。
 次に紹介するのは処刑人の手袋。怨念のこもった呪いのアイテムです。その怨念は、あなたの順位が悪いほど力を貸してくれます。これは完全に弱者救済の武器で、ビリが使った際の威力は百発百中の大砲級、イーブンのダイス勝負で使い続けた際の勝率は脅威の9割超えです。存分に怨念を解放しましょう。
 そして最後に紹介するのがローゲリウスの車輪。これはボスを最初に撃破した人が得られる武器ですか、性能はわりとおもしろ寄りです。
 移動、戦闘はもちろん、イベント効果にまで振り直しを適用できる魔法の車輪は、しかし回すたびにプチ千景のような恩恵を他人にばらまいて行きます。ということはこれも千景と同じく、使われると全員が笑顔になれる素敵武器です。千景と違ってこれは100%誰かしらは手に入れる物なので、その点も素晴らしいですね。
 筆者はこのカインハースト製の武器をテストプレイしていて思いました。もしまた別のすごろくを作ることがあれば、その時も「全員が笑顔になれる要素」を一つは入れようと。ここで手に入る武器はそのレベルで楽しいです。レイテルパラッシュの一喜一憂や、圧倒的威力を見せつけたりそれが衰えていったりする処刑人の手袋も、見ていてだいぶ楽しいですからね。(上位勢が手袋を手にした時だけは萎えますが、その後その人の順位が落ちると途端に盛り上がります)
 さて、そんなご機嫌なステージのボスを務める殉教者ローゲリウスですが、これには初めての試みとして「第二形態」の概念が採用されています。
(追記……あとで考えたんだけど、カインハーストのボスはやっぱり「合計15要求、出目1~2無効、出目3~6追加ダイスロール」の方が面白いかも。形態性いらないかも)
 要するに基本的に1/2の確率でしか攻撃が通らず、通ったとしても一撃で倒せるかどうかは分からないボスというわけで、遊んでみた感じ特別つまらなくも面白くもない無難なボスでした。
 ロマと再誕者の時もそうでしたが、ボスは前のめりな方が楽しくなるのかもしれません。そういった重ね重ねの学習を経て、次のステージの紹介へ続きます。

・悪夢の辺境

追加ステージその5 悪夢の辺境
悪夢の辺境、イベント一覧


 メンシスの悪夢へ向かったはずのあなたは、どこか別の夢の世界へ迷い込んでしまったようです。脱出を試みますが、行く手には見慣れない獣に毒沼地帯やほおずき、そして見覚えのある脅威が立ちはだかっています……。
 ……というのが、悪夢の辺境のストーリー。原作では禁域の森から特殊な方法で向かう場所なのですが、そんな物をすごろくで描写してはいられません。200マス近く遊ぶ気があるというなら別かもしれませんが……。
 悪夢の辺境は、「悪夢」です。カレル文字の対象です。メンシスの悪夢だけではカレル文字がもったいないということでこのステージを作りました。そしてボスには原作同様の「え、お前と戦うの?」感があるレーザー光線発射宇宙人「アメンドーズ」が隠し街ヤハグルからはるばる参戦しています。
 ゲームとして特徴的なのは毒沼地帯くらいでしょうか。銀獣も変則的なX戻るを持っていますが、テストプレイした感じほぼ1戻ると同じでした。かといって範囲を広げたらひどいループが起こりそうですし、バランス調整って難しいです。
 さて毒沼地帯に話を戻すと、これは「侵入」と「歩みだし」の両方を参照するイベントです。入るにしても出るにしても滞在するにしてもとにかく足の速さが-1されます。ぬかるんで動きづらいイメージですね。そして毒なので3ターン滞在すると症状として一回休みが出ます。なんか真ん中におじゃまキャラまでいます。
 ちなみにですが、侵入する際にも-1される影響で、毒沼地帯の1マス目で足を止めるプレイヤーは存在しません。そこで止まる出目は0になるからですね。なおその際は足元に落ちているカレル文字を拾えるので次からは1を出しても大丈夫という親切仕様です。
 それからほおずきに関してですが、「同名の範囲内に二回止まるたびに一回休み」という性質を持つそれのカウントをメンシスの悪夢まで持ち越すかどうかは遊ぶ人に任せます。筆者はメモが面倒なのでステージごとにリセットするルールを採用して遊んでいます。4人分の操作とメモだけですでに精一杯ですからね、マジで。
 ボスのアメンドーズはローゲリウスと同じく第二形態性ですが、こちらは出目を無効化する効果は持っておらず、それどころか「出目」を参照しない形でのボーナス要素を持っています。ぜひ持てる限りの力で6以上を出して、原作中でも有数の明確な弱点部位が存在するボスであるアメンドーズを思い切りしばき倒しましょう。
 ちなみに形態の処理ですが、筆者としては、
・6以上を出して第一形態を撃破した場合→追加ダイスロールを第二形態にくらわせる。
・第一形態に7以上の累計をくらわせた場合、超過分は消滅する。
 というルールを採用しています。後者に関してはローゲリウスについても同様ですが、しかしぶっちゃけこのあたりは自由でいいと思います。誤差の範囲です。
 また、当初はアメンドーズにもヘムウィックの魔女と同様に1位に向けてカレル文字を特典にすることを考えていたのですが、毒沼の前に一つ落ちていることと、ヘムウィックの魔女がいまいち盛り上がらないこと、悪夢の最後に悪夢で使えるアイテムを得ることの微妙な感じを鑑みて、今回は特典なしという調整にしました。しかしここに三本目のへその緒以外の何かしらの特典を付けてみても面白いかもしれません。いろいろ付けてみて、あなたもデバッガーになってください。

・狩人の夢

追加ステージその6 狩人の夢
最初の狩人ゲールマンについて
月の魔物について

 メンシスの悪夢でミコラーシュを撃破したあなたは、悪夢から目覚めて平和を取り戻したヤーナムの街に凱旋する…………はずだった。
 しかし、目を覚ましたあなたが実際に見たものは、再びの夢の世界。眼前に伸びる一本道を行き、満月の夜空の下、大樹のもとに咲き誇った一面の白い花畑にて、あなたを待ち受けていたのは……。
 ……というのが、狩人の夢のストーリー。原作では拠点とラストダンジョンを兼ねているこの場所を、すごろくでは「裏ボスステージ」として採用してみました。どんな追加ステージを通っても最後が必ずメンシスの悪夢になるのでは飽きてしまうかと思って。
 狩人の夢の遊び方としては、ストーリーとは矛盾するようですが、メンシスの悪夢と入れ替えて遊ぶことを想定しています。……が、このステージは追加された物の中でもぶっちぎりの問題児で、正直なところ完成度としてはメンシスの悪夢に一回り以上劣っているように思えてしまいます。新しいことをしようという意欲だけはあるんですけどね……。
 先にこのステージの問題点に触れておこうと思います。それはずばり、分岐の先に別々のボスがいて、各々がいずれかとしか戦わないこと。これに尽きます。
 全員が同じボスに挑むなら、それがゲームとして仮に破綻していた物でも、全員で破綻するのだから相対的な問題だけは発生しないはずです。しかしこのようにボスが分岐すると相対的な視点が生まれてしまう。……つまり、「分岐した時点で結果が見えては面白くないから、ボスの強さは同じくらいにしよう」と「分岐する意味がなくなっては面白くないから、ボスの性質はできるだけ異なる物にしよう」が同時に発生してしまうのです。そしてこれらの条件を満たすのは至難の技だと、筆者はこの狩人の夢で学びました。
 まずAルートのボス、最初の狩人ゲールマン。彼は元ビルゲンワース所属の最強の狩人で、夢の世界の番人的な存在です。すごろくのボスとしての性質はミコラーシュに似ていますが、勝利点ではなく勝利数を参照する点と、こちらの「敗北点」を参照してくる点で差別化されています。
 一方でBルートのボス、月の魔物は、夢の世界にすら干渉してくる超常的存在です。すごろくのボスとしての性質は他と一線を画しており、なんと特殊ルールのもとですごろくを文字通り最初からやり直させます。ちなみに説明文中にある「アデーラの血」とは、月の魔物戦では通常3つ振るところのサイコロを4つにする消耗品のアイテムです。 
 運が良ければ3ターンで突破できるが詰まる時はとことん詰まるゲールマンと、3ターンでの突破はまず無理だけど詰まることはほとんどない月の魔物という二つのボス戦は、はたしてバランスが取れているのかどうか……。テストプレイは一応しましたが、正直よく分かりません。ボスに挑み始めるタイミングもバラバラ、持ち物もバラバラ……という状態が自然なので、シチュエーションは毎度変化して、正直手に負えないのです。アデーラの血の概念がいらない可能性があったりなかったり、それ以前の問題のような気がしたりしなかったり……。そんな感じです。
 ゲームとしての面白さを求めるならメンシスの悪夢で遊ぶことをおすすめします。しかし、ある意味聖域であった「あいこ」にまでデメリットを付与されて敗北点を参照するダイス勝負や、説明が「あなたは夢を見る」から始まる前代未聞のイベント戦に触れてみたいという人は、一度こちらの裏ボスで遊んでみてもいいのかもしれません。そして出来ることならより良いゲームバランスを探し求め、それを見つけだしてください。
 ちなみに、ややこしすぎるので、このステージでの三本目のへその緒は使用禁止にすることをおすすめします。

・遊び方について
 さて、ここまでステージの解説をして来ましたが、まだ一つ根本的な疑問が残っていますよね。「追加ステージってどういう風に遊んだらいいの?」という点についてです。
 この疑問に対する答えは、ぶっちゃけ「ご自由に」です。正規ルートを基礎に、好きな物を好きな順番とタイミングで組み込んだり、または取り除いたりして遊んでいいと思います。
 しかしそうは言っても、何事も基準がなければ困る物ですから、ここではあくまでも一例として、筆者がテストプレイに用いた遊び方を載せておこうと思います。 

「例その1……ヤーナム市街→聖堂街→旧市街→ヘムウィックの墓地街→聖堂街上層→隠し街ヤハグル→メンシスの悪夢」

「例その2→ヤーナム市街→聖堂街→禁域の森→廃城カインハースト→悪夢の辺境→狩人の夢」

 と、この2種類でテストプレイは行われました。全部盛りはまだ筆者も試したことがありません。さすがに日が暮れそうなので。
 というわけで、以上で追加ステージの紹介を終わります。見るからに才能も使い果たして来ていますし、筆者は実は原作DLC未プレイなこともあり、これ以上ブラッドボーンという題材ですごろくを作ることは無いでしょう。他の題材でまた別なすごろくを作ってみたいところですが……。それもなかなか難しそうですね。
 そんな力を出し尽くしてしまった筆者から、最後に「イーブンな(つまりヤーナムの影との)ダイス勝負の勝率一覧」を公開することで、本記事の締めにしたいと思います。ここに書かれている確率は全て、あいこの後も同じ武器を使い続けることを想定した物です。
(あいこ後に続けて使用できない(またはその可能性が高い)武器については、x/36で計算してます)

ダイス勝負勝率一覧その1
ダイス勝負勝率一覧その2

 はい、実はデメリットのない武器の中で最強なのはぶっちぎりで「銃槍」なんです。効果を読んだ時、銃槍がダイス勝負で一番強いと直感的に分かりましたか……? 筆者は分かりませんでした。
 また、数字を予想する要素のある「仕込み杖」と「ルドウイークの聖剣」では、実は予想する数字によって勝率が変動することがあります。何を予想するとなぜ変動するのか、ぜひ考えてみてください。確率の不思議を垣間見ますよ。




 

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