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架空漫才、スクールカウンセラーの山田先生。

「はいどうも〜、架空漫才です〜。私の名前がカクウで、こっちが」
「相方のマンザイです〜。よろしくお願いします〜」
「いや〜今年もそろそろ終わるなぁって感じがして来ましたけどね。もうすぐクリスマスが来るし大晦日とお正月も来るし、学生さんたちはすでに冬休みでしょう? いいですよね〜」
「あ〜冬休みといえば、俺高校の頃不登校だった時期があったんだけど」
「えっ!? あ、そうなの……? ごめんすごいびっくりしちゃって」
「いやいいよ。「冬休みといえば」って変な切り出し方しちゃったなって俺も思ったし」
「客観性がある……! それでそれで?」
「いや、それでな、今パッと、高校時代に印象的だった先生のことを思い出したのよ。あの先生とお笑いの話をしたのも冬だったな〜って」
「先生とお笑いの話してたってなんかすごいな。へぇ〜、どんな先生だったの?」
「山田って名前の、スクールカウンセラーの先生でさ。クソイケメンだったのよ」
「クソイケメンのカウンセラー」
「この顔と喋ったら金取られるだろってレベルでイケメンだった」
「うん、取られてるんだけどね実質ね? カウンセリングだから」
「で、俺ある日言ったんだよ。俺も先生くらいイケメンになれたらなぁ、その顔分けてくんない?って。真顔で」
「真顔は怖いな」
「そしたらそこからアンパンマンの話になってさ。その日一時間アンパンマンの話してたんだよね」
「あ〜顔を分ける繋がりでね、なるほどね。…………いやなんの話!? お笑いの話は!?」
「いやお笑いの話は別の日だったんだけども。いろんな話したんだよその先生と」
「ほうほう。まぁアンパンマンの話に一時間も付き合える山田先生かなりすごいもんな。なんでも聞いてくれそう」
「そう、山田先生はすごかったんだよ。顔も良いし聞き上手だし、アンパンマンに異常に詳しいし」
「そろそろアンパンマンから離れよう……?」
「あ、そういえばアンパンマンで思い出したんだけど」
「まだアンパンマン言うてるよ。なに?」
「自分ん家のリビングで思いきりビーチボールを打ったことってない? 俺はあるんだけど」
「いやアンパンマンどこ行ったん? どのあたりからの「そういえば」なん? なんなら冬の話もどこいったん?」
「いや、昔ウチにあったビーチボールの見た目がアンパンマンの顔だったのよ」
「し、知らねぇ〜。でも話の繋がりは分かった」
「で、ガキだった頃の俺がリビングでそのビーチボールを思いっきり腕でバーン!ってしてさ、テーブルの上の皿がガシャーン!って割れたことがあって」
「最悪じゃん。怒られたでしょ」
「元気100分の1倍になるくらい怒られた」
「つまんなっ」
「でもさぁ、そういうアホなことした時って、本人もやった瞬間に後悔するものなのよ。ビーチボールをバーン!ってしたその瞬間にさ、世界がスローモーションになって、あっこれはやばいなって分かるわけ」
「なるほど?」
「で、その時の経験を踏まえて思うんだけど、「これはやばいんじゃないか?」って思う場面には2種類あるよね。たとえば俺が今ここで全裸になったらやばいなっていうのは、未然に想像することでしょ? これを「未然タイプ」と呼ぶとして」
「うん、なんでもいいけど絶対脱がないでね」
「で、もう1つは、さっきの皿割った話の時みたいな、もうすでに引き返せないことが確定してから被害が想像できちゃう「走馬灯タイプ」。この2種類があると思うのね」
「あ〜、なるほど。まぁ言ってることは分かる気がする」
「でしょ? ……それで俺はこう思ったわけよ」
「うん」
「俺の人生って、始まった瞬間から、リビングでバーンってされたビーチボールみたいな物なんじゃないかって……。失敗ばかりの人生なのに、何回失敗しても、あっやめておけばよかったって思うのが、いつも一瞬だけ遅くて……」
「山田先生ー!! 山田先生ちょっと来てー! たすけて!」
「まぁそんな感じの話を一時間くらいしてたのよ当時は」
「あ、当時? 今は立ち直ってる? よかったぁ。そのアンパンマンの話は山田先生にしか捌けないって。よかった当時は山田先生がいて」
「本当にな〜。でも今は今で、山田先生と同じくらいカウンセリングが上手い人に知り合えたから、俺その人のおかげで助かってるんだよね」
「あ、そうなの? よかったねそれなら。その人は名前なんていうの?」
「カクウって人なんだけど、皆さん見ての通りめっちゃ人の話聞くの上手いんですよね」
「いや漫才してるんだわ……! もうええわっ」

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