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公衆衛生に投資する

新型コロナウイルスの影響は、「都市の公衆衛生」を改めて考えるきっかけになったと考えています。

公衆衛生改善をめざしてきた都市計画

都市計画も、悪臭や騒音、汚染など劣悪な都市環境の改善を目指すために、様々なツールを導入してきたわけです。日照・通風の確保のための形態規制、用途の分離・誘導などの集団規定、市街地環境を整えるためのインフラの整備など。実際にこれらの成果あって、快適なまちが出来上がりました。写真はその典型かもしれませんが、ブラウンフィールドから用途転換を果たし再生した公園です。まさに公衆衛生を目的に都市を改善してきた歴史があるわけです。

そこで、今回のコロナ・エフェクト。改めて、都市には公衆衛生が大切であり、清潔で安全で、そして快適な空間が重要であること、開放的なオープンスペースが価値を持つことを私自身は再認識させられました。コロナ前後でこのあたりの認識がどう変わっているのか(あるいはそれほど変わらないのか)は、機会を捉えて考えてみたいところです。

少し脇道にそれますが、人口減少・高齢化を背景に、拠点への都市機能の集積・高密化を推し進め、より効率よく都市を形成しようと進めてきたコンパクトシティの政策も、ややニュアンスが変わるのかも、と思っています。180度転換することはないと思いますが、単純に寄せて集めて高密化とはいかなくなる、よりきめ細やかなデザインが要求されるだろうな、と感じています。このあたりは識者の方も述べられているところです。

不況下のニューディール政策が投げかけるもの

新型コロナウイルスがもたらす経済的なインパクトは相当なもので、リーマンショックどころではないという話も聞こえてきます。私たちもニュースなどを通じて日々の政策決定を固唾を飲んで見守るようになりました。

私自身も何らか手がかりをつかもうと考える中、この本を読みました。

「経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策」

本の論評は別に譲りますが、世界大恐慌時のニューディール政策について評価がされており、不況時に公衆衛生対策に投資したことで、社会不安の改善などへと繋がったというものです。ルイジアナ州の「富の共有運動」(Share Our Wealth)、所得を再配分し医療や教育などに重点的に投資するもので、不況時であっても大きな成果を上げたことが紹介されています。

緊縮政策による負の影響を避けるために、新たなニューディール政策が必要であるという提案もなされています。「疾病予防対策は平時は国民から注目されないが、健康への投資こそ不況時において必要」と。不況時は政治論・経済論に主導されがちですが、人間の健康を維持することがいかに大切かということを説いています。

健康で安心な場所を創る

これからの政策においても、コロナ・エフェクトから立ち直るべく、様々な対策が投じられようとするでしょう。その時に、こうした「公衆衛生への投資」という視点も持って、政策を考えるべきだと思っています。ニューディール2.0的な政策パッケージが議論される方向に行くことを期待します。

そして、都市計画も、当初の重要な目的である「公衆衛生の改善」からより発展させて、「健康で安心して過ごせる場所を創る」ことが、今回のコロナ・エフェクトを通じてより強く認識させられたと思っています。そこに対する投資も、都市計画・都市デザインでも起こりうるのではないかと。今は、とりわけ密度論くらいしかフォーカスされていませんが、空間の質の議論が一層加速するであろうと思い、その具体の絵姿を考えていこうと思います。

今回はここらへんまで。

参考:地域のトライアルを情報発信

今は、緊急時なので、様々な救済策が地域でトライアルとして始まっています。応援のエールを込めつつ、情報発信していくサイトを立ち上げました。

メインストリート・ジャパン・プロジェクト コロナに負けるな!頑張ろう地域!!

まだまだ不完全ですが、今後、充実を図っていきますし、これらを俯瞰しながら、次のことを考えるきっかけになればと思っています。

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