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【成年後見制度】本人情報シートの活用状況と現場での課題-権利擁護と意思決定支援の観点から-を読んで

実践 成年後見 111号が届き、やっと読了。

さて今回は、大阪公立大学の鵜浦直子氏が書かれた
本人情報シートの活用状況と現場での課題-権利擁護と意思決定支援の観点から-について印象に残ったこと、感じたことを記録しておきたい。


1.はじめに

・後見、保佐類型で申し立てを行う際、原則は鑑定が必要とされているが、診断書など医師の判断があり、明らかにその必要がないと認めるときは、この限りではない。実際、R5年に鑑定にかかったのは全体の4.5%。
・本人情報シートが審判において重要であり、医師の診断補助・後見人等選定、本人の意思決定支援に影響を与えるものとなっている。

→鑑定にかかっている事案に私自身は出会ったことがなく、診断書の情報から類型の決定に繋がっていることが多いと感じている。
それだけ重要な役割を占めている診断書作成。
また、その診断書作成の補助的役割を担う本人情報シートの役割もまた重要と考える。

2.権利擁護と意思決定支援

権利擁護とは、生命や財産を守り、権利が侵害された状態から救うというだけでなく、本人の生き方を尊重し、本人が自分の人生を歩めるようにするという本人の自己実現に向けた取り組みを保障するもの。

岩間伸之=井上計雄=梶田美穂=田村満子
「市民後見人の理念と実際-市民と専門職と行政のコラボレーション」
7~8頁(中央法規出版、2012年)

3.権利擁護と意思決定支援から本人情報シートをとらえる

・本人の保護の部分と本人の自己決定や主体性の部分のバランスをどのように本人情報シートの中で図ることができるのかが課題。
・できるできないの評価に加えて、本人の意思伝達のありのままの情報(どのような方法でコミュニケーションを取っているか。)を記載する項目があると、意思決定支援と本人情報シートを結びつけやすくなるといえる。

→成年後見制度の利用=制度の使い方によっては、本人を擁護することもあれば、本人の権利を奪ってしまうこともある制度である。との理解は必要。その認識の上で、「本人の保護を図る部分」「本人の自己決定や主体性を尊重する部分」のバランスを考えることが本当に大切であるとともにその線引きはとても難しい。

4.本人情報シートの今後の課題

・本人情報シートの導入は、成年後見制度における本人の判断能力の状態を、医学モデルの評価とともに社会モデルの考え方に基づいて評価することも求めている。
医学モデルは、問題の原因を個人に求め、専門職による個別的な治療という形で支援を行う考え方。
社会モデルは、問題は社会によってつくられたものとみなし、問題の要因は個人に帰属するものではなく、社会構造の中で生み出されたものとみる。そして、問題の解決にあたっては、社会に変化を求めていくものとなる。
・本人情報シートからみえる本人は、「いろんなことができずに困った人」なってしまう。
作成者によっては、本人のできないことや問題点ばかりが指摘されてしまうシートになっていること、本人側の課題ではなく、支援側の都合による課題が提起されているような状況も見受けられる。

→”社会モデルの考え方に基づいて評価する”については、ソーシャルワーカーとして力を発揮しなければならない部分であると強く感じた。
そのためにも、記載内容が「いろんなことができずに困った人」「支援側の都合による課題が提起されている状況」を列挙するようなものであってはならないと感じ、私自身も反省する点があった。

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