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ライブでのカメラ撮影を考える(レンズ編)

この記事はライブでの撮影(主に静止画)向きのカメラ一式を素人が考えてみようというものです。

前回の記事ではカメラの本体、いわゆるボディを考えてみました。

記事はこちら↓


ですので今回はレンズの方を考えていきたいと思います。





◆レンズ選び

前回の動画で「センサーサイズは大きめでレンズ交換式の一眼レフまたはミラーレス」が良いというのはなんとなく分かったが必ず交換式でなければだめなのか、という疑問を抱く方もいらっしゃると思います。

結論から言うともちろんだめではありません。


センサーサイズはAPS-Cサイズやフルサイズで、備え付けのレンズを持ったカメラも存在します。こちらはサイズも小さくパッと見た感じコンデジにも見えます。

例として挙げるとSONYさんのRX1やRICOHさんのGRシリーズなど。

SONY HPより引用
RICOH HPより引用




これなら持ち運びしやすいしレンズ買わなくていいしこっちの方が良いのでは、と思うかもしれません。


この二つのカメラの特徴として備え付けのレンズが単焦点レンズだということが挙げられます。
また、焦点距離が短めです。

そうするとどういった点で不利かというと、上手く綺麗に撮ることができる環境が限られてきてしまいます。

レンズ交換式のカメラはレンズを状況に最適な物へと交換することで色々な状況に対応できるというわけですね。


この辺りは後ほど詳しく説明しますが、全体の小型化と引き換えにレンズに制約があります。



①ズームレンズor単焦点

さて、世の中には色んなレンズがありますが、大きく分けてこの二つに分かれます。


分かりやすい表を作ってくださった方がいらっしゃるのでこちらに引用しておきます。


photohibi様より引用



上から順に補足をしておくと…

・画角
そのレンズで写せる範囲のことです。
広角レンズであれば近くの物から遠くの物まで幅広く写せます。その代わり遠くの物は小さく写ります。
望遠レンズは写せる範囲は限られますが、遠くの被写体を大きく写すことができます。
画角についてはこんな感じの分け方をされています。

(超広角↔︎)  広角 ↔︎ 標準 ↔︎ 望遠 (↔︎超望遠)

ズームレンズはズームすることで一定の範囲内で画角を任意に変えることができます。
逆に単焦点は写せる範囲が一箇所で固定されています。

・重量とサイズ
ズームレンズは多くのレンズの組み合わせで造られているため大きく重めの物が多いです。単焦点はその逆です。

・画質
ズームレンズのようにレンズが多いとどうしても光の取込みの際にロスが多く、画質に影響が出る場合があります。単焦点は安い物でも比較的綺麗に撮ることができます。

・価格
ズームレンズの方がよりコストがかかるため、高い傾向にあります。ただ、超望遠の単焦点レンズのように単焦点にも高いモデルもあります。

・利便性
ズームレンズは立っているその場所から画角を変えられます(ズーム↔︎引きが行えます)。
単焦点はズームできませんので、画角を変えたければ自分の足で前後に動くか、被写体に前後に動いてもらう必要があります。


…とこのようにどちらも一長一短で全てを兼ね備えているレンズは今のところ存在しません。
(誰か開発してください🥹)


なのでこのどちらを取るかはご自身の撮影スタイルと、レンズの画作りの好みによります。

ここは人によって結構好みが分かれるところで話を聞いていても面白いです。


どちらのタイプのレンズを選ぶかですが、参考までにライブでのお客さんの入り具合という観点で考えてみます。


ソールドアウトで満員のライブハウスに来て一番後ろでライブを観ることになったとします。当然お客さんでいっぱいなので自由に動けません。

ですが演者個人のアップだったりお客さんの盛り上がりを含めたライブ全体の雰囲気であったりと様々な構図の写真を撮りたい…そんな時はズームレンズが向いているのではないでしょうか。

広角〜標準あたりの単焦点で撮っておいて後で拡大トリミングしても色々な構図にはできますが、画素数が減るので極端に大きくカットして調整してしまうと写真の質は下がります。



逆に広々とした野外フェスなどで人もまばら、自由に動けるぞという時は単焦点で寄ったり引いたりして動き回って撮ればより多くの構図でクオリティの高い写真を撮れると思います。

また、混雑しているライブでも整理番号が良く狙った位置をキープできるのであれば高画質で撮れるという単焦点のメリットが勝るかもしれません。


このようにご自身が行くライブの状況から選ぶのも一つの手ですし、利便性は問わないので画質・描写優先!というタイプの方は単焦点がはまるかもしれません。


ちなみに私は単焦点派です。
綺麗に撮れるし何より安いので…😮‍💨😮‍💨😮‍💨

あと自分のスキルの場合、あたふたズームしてる間に良いシーンを逃すのが目に見えているからというのもあります。笑



②焦点距離

お次はこちらです。

各レンズには焦点距離というものがあります。
「〇〇mm」などという数値がレンズ本体やそのレンズの概要に書いてあると思いますが、そちらが焦点距離です。

この焦点距離というのはレンズからセンサーまでの距離のことを指します。


SONY HPより引用


mmの前の数字が大きくなればなるほど望遠レンズ(遠くのものを大きく写せるレンズ)になり、写せる範囲が狭くなります。


上記で例として挙げたSONYさんのRX1やRICOHさんのGRという機種は、ズームできない単焦点レンズで焦点距離があまり長くありません。
よってステージ近くならば問題ないかと思いますが、後ろの方だと小さくしか写せません。

焦点距離によってはそのような制約ができてしまいます。


また、焦点距離には我々初心者を混乱させるキーワードとして「35mm(フルサイズ)換算」というものがあります。


理論的なことを載せても???が頭に浮かぶかと思いますので簡単にまとめると、

センサーが

・フルサイズ
→焦点距離はそのまま
この焦点距離というのはフルサイズ機がベースとなっています。


・APS-C
→焦点距離に×1.5倍(Canon機は1.6倍)する
この数値がフルサイズと同等の焦点距離になります。
(例)焦点距離が50mmのレンズを付ける→フルサイズ機の75mmのレンズと同じ画角


・マイクロフォーサーズ(4/3)
→同様に焦点距離に×2倍する
(例)焦点距離が50mmのレンズを付ける→フルサイズ機の100mmのレンズと同じ画角


なんとなく把握できましたでしょうか。

APS-Cやマイクロフォーサーズ機であればレンズの焦点距離が短くても実際の焦点距離に対して掛け算されるので、焦点距離を稼ぐことができます(=望遠に有利)。

ただし、その代わりにセンサーサイズが小さくなるので暗い場所や画質等に不利となります。


ご自身がライブで立っているポジションを想像し、前の方なら焦点距離短め、後ろの方なら長めが撮りやすいと思います。
前の方で焦点距離が長めですと画角に収まりきらなかったり、その逆ですとメンバーが小さくしか写りません。

よってライブでは焦点距離選びも重要かと思います。
プロの方はすぐに対応できるようにそれぞれ違う焦点距離のレンズを付けたカメラを2台持ちされたりしていらっしゃるようです。



話は変わりますがレンズの特性として面白いなと思っている点があります。

下に例を二つほど載せておきますね。


OM SYSTEM HPより引用
( )はフルサイズ換算した焦点距離です。
Amazing Graph様より引用




このように違う焦点距離のレンズで被写体の大きさを揃えると、レンズの焦点距離によって被写体の印象や背景との距離感が変わってくることが分かる思います。


個人的な印象ですが、広角になればなるほど被写体や画面が球状に近くなり(実際に端の方が歪んだりします)、背景の情報量も増えています。

逆に望遠になればなるほど全体が面状になっていき、遠くの背景が近くにあるように感じられ、背景の写りはぼけていく印象を受けます。


全体を通して見てみると、私にはフルサイズでいうところの50〜80mm前後が背景のほどよいボケ具合も含め、一番自然でちょうど良く見えます。

実際にこれぐらいの焦点距離のレンズのことをポートレートレンズというようなので人物撮影には向いているかもしれません。

ただ、広角レンズや望遠レンズの癖を上手く使った表現などもあったりしますので、そういった所もまたカメラの奥深い所でもあると思います。



③F値

最後の注意点はこちらです。
エフち、と読みますが、こいつが結構な曲者です。

そもそもF値とは?分かりやすく言うとレンズの明るさを示す指標です。

明るさというのは通ってくる光の量とも言い換えることができます。



実際に図を見た方が分かりやすいかと思いますのでこちらをご覧ください。

カメラのヒント様より引用


F値が小さくなればなるほどレンズの内部にある羽根(絞り)が大きく開き、光をより多く取り込めます。代わりに被写体の前後でピントが合う範囲が狭くなります。

逆にF値が大きくなると羽根が絞りこまれるので通る光の量は減り、光はあまり入らなくなります。前後のピントが合う範囲は逆に広くなります。


NICO STOP様より引用



感覚的にはF値が大きくなれば絞りも大きく開いてきそうなものですが、これはもうこういうものだと思ってください。
また、数値の刻みも中途半端で覚えにくいですがこれもこういうものだと思ってください😂



ライブ会場はえてして暗いので光を少しでも多く取り込めるレンズが有利になります。


ではレンズのどこを見ればよいのか?という点ですが、レンズ本体に「1.8/50」「80-200mm 1:4.5-5.6」など数字が書いてあります。

この小数点がうってある小さい数字の方がF値を表しています。もう片方は焦点距離です。
(※F2やF4など小数点がうたれていない場合もあります)


このF値に関しては最小F値を示しているので、F1.8であればF1.8のところまで絞りを開くことができる、という意味です。
このような最小F値が低いレンズのことをいわゆる“明るいレンズ”と言ったりもします。


上記のレンズの例では、一つめは焦点距離が50mmと固定されているので単焦点レンズです。最小F値は1.8ということになります。

二つめは焦点距離が80-200mm、つまりズームレンズです。F値は4.5-5.6…つまり80mmの時はF値が最小で4.5ですが、ズームしていくにつれて最小のF値が5.6まで大きくなってしまうズームレンズだということです。



単焦点レンズはズームレンズに比べ、最小F値が小さい物があるというのも大きなメリットです。



さて、話がそれましたがライブ向きのF値はというと…



センサーサイズも関係してきたりしますが、私の体感だと屋内の小規模なライブハウスの場合はかなり暗いのでF2.8以下が良いかなと思います。

細かい理由はこのレンズ編では割愛しますが、一言でいうとシャッタースピードを稼げるためです。


最小F値が小さい物は絞ってF値を大きくもできますが、最小F値が大きいものはどう頑張っても絞りを開いて明るくすることはできません。



逆に晴れた屋外などではそこまで明るいレンズでなくても光が十分に降り注いでいますので、好みのシャッタースピードに合わせられればF値が多少大きなものでもさほど問題はないと思います。

大きめのホールなど、照明がしっかりしているところではその中間でF2.8〜4、いってもF5.6以下ぐらいでしょうか。


よし、じゃあ最小F値がとにかく小さいレンズをたくさん買おう!そうすればレンズは完璧だ…そう思ったあなた。私もそう思いました。


ではこちらをご覧ください。


Picky's様より引用



F1.4から急に高いっ……!安いとされている単焦点でさえこれっ……!
F1.2なんて庶民にはきつい値段っ……!

(c)福本伸行


このようにF値がかなり低い単焦点(特に焦点距離が長い物)や、F値が2.8と低めでなおかつズームしてもその値が変わらないレンズ(いわゆる大三元レンズ)はいいお値段がします。


なのでどうしても安くあげたいけどライブ向きで綺麗に写せるレンズが欲しい!という方はF1.8で焦点距離が35mmや50mmの物を選びましょう。

この辺りは撒き餌レンズといい、おそらく生産しやすいということに加え、自分の所に顧客を呼び込むために各メーカーが良心的な価格で販売しています。

安くて良い画が撮れるので実質無料です。


焦点距離が短い分は気合いで箱の前列を勝ち取ることで相殺できますからご安心ください👺



まとめると、ライブ向き(特に室内)なレンズは

・最小F値がなるべく小さい物
・単焦点かズームレンズかはお好みで
・焦点距離は自分の立ち位置と撮りたい写真の画角(アップが良いのか引きの全体図が良いのか等)から考える


となるかと思います。

レンズ沼という言葉もあるぐらいレンズ選びは長い旅です。

皆様も足元には十分ご注意ください…🧟




こちらでレンズ編は終わりです。

設定編も書けたら良いな〜と思っておりますのでよろしければぜひご覧ください。
それでは!

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