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ありがた涙

 今、私の手元に紙のチケットがある。

タイトルは
「ミッシェル・ガン・エレファント゛THEE MOVIE゛ LAST HEAVEN 031011」

2003年10月11日に幕張メッセで解散ライブを行った「ミッシェルガンエレファント」というバンドの、そのライブ映像を映画館で見るイベントだ。
今年は解散ライブから20年という節目の年にあたる。


2023年にミッシェルの文字を見るありがたさよ

筆者はミッシェルガンエレファントには2種類のファンがいると考えております。それは「間に合った方のファン」と「間に合わなかった方のファン」。

「間に合った方のファン」とは、ミッシェルガンエレファント活動当時、発売されたCDやアナログをリアルタイムで購入したり、ライブへ足を運ぶことができたファン。
一方、産まれたタイミングや、目覚めた時期が遅く、解散後に夢中になってしまったのが「間に合わなかった方のファン」。

何度かnoteでも書いておりますが、筆者はミッシェルガンエレファントに「間に合わなかった方のファン」であります。
ミッシェルが活動当時「HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP」や「MUSIC STATION」(通称:Mステ)などの音楽番組に、ごくまれに出演する姿は見ておりましたが、全く熱狂できませんでした。

なんでかって?

だってあのお兄さん達、怖かったんだもん!

全員真っ黒いスーツ。時にはサングラスをかけ、寡黙で斜に構えた(ように見える)姿は話しかけにくい気配に満ちあふれ、パッと見は「ごろつき風」のお兄さん。
それが子供の頃の筆者にとってのミッシェルガンエレファントだ。

2000年前後、細身のスーツなど特に流行していなかった時代に、北野武の任侠映画にでも出演していそうな「キマった姿」で、月曜や金曜の夜8時にテレビ出演していた4人組。
しかも、その内1人はモヒカン。2人はスリムでやたらと背が高く、縦横比がやや狂った体型。あんな人達は子供の頃の私の周囲には存在しなかった。
そしてフロントマンに至っては、司会者に話しかけられても「今すぐ帰らせろ」と言い出しかねない雰囲気でトークにのぞむ有り様。放送中にとんでもない事を言い出しそうなあの独特な雰囲気は不穏の一言に尽きるものだったと思う。

生放送のMステでは、歌の前に設定されている司会のタモリさんとのトークで、ボーカルのチバさんは落ち着きなくソワソワ、モジモジ。
ギターのアベさんは男らしく大股開きで座り、ソワソワするチバさんをクールな顔で眺めていた記憶がある。

HEY!HEY!HEY!では、スーツのポケットに手を突っ込み、やる気がなさそうに見える姿で出演し、ダウンタウンの2人のどちらかに「これっ!ポケットに手ぇ突っ込んで!」なんて、軽く叱られていたはず。
他には、全員黒ずくめ、細身のモッズスーツ姿にチバさんのシューズだけが真っ白というスタイリングの時があり、その事について「カッコイイ」といじられ、少し照れていたような記憶もある。
そんな風に、トークではしどろもどろした姿なのに、歌収録になると、男くさくハードでカッコいい姿。立ち会う観覧のファンがアツすぎて、最前列のスタッフがそれを必死に抑えている様子に、筆者は子どもながらドン引きしました。

HEY!HEY!HEY!の歌収録で、当時あんなにアツいファンを持っていたのはミッシェルの他にはX JAPANくらいではなかっただろうか。

今、記憶が溢れるままに語ってしまったけれども、当時の番組を見ていたであろうミッシェルファンの残党である兄&姉の皆さま、私の記憶は合っていますか?

もし、当時テレビ収録に立ち会った方がいらっしゃれば、ぜひとも筆者にお話を聞かせていただきたいです。「あの頃の話」を聞くのが最近の新しい趣味になりつつあるので、ぜひご連絡をお待ちしております。


そんな風にミッシェルガンエレファントをテレビでは見ていたが、当時の熱狂には全く心が動かなかった反動からか、今はこの通り、熱烈にミッシェルが好きになってしまった。


筆者には、当時ファンだったという友人が何人かいるのだが、全員が2003年10月11日に幕張メッセで行われた最後のライブへ参加している。

先日、その友人達から当時の話を聞きたいと思い、食事会を開いたのだが、ミッシェルの話題だけで延々何時間も話が弾んでしまった。リアルタイムでファンだった人にしか語れないアツさで盛り上がる友人達の横で、初めて聞く私は「へぇ!」「はぁっ?」「ふ~ん」「ほぉぉぉぉ!」「ひぇぇぇ…」といった感嘆詞しか口から出てこない。
当時の衝撃的なエピソードの連続に、そこに間に合わなかった私は「ハ行の相槌」を打つばかり。

しかし、テレビや雑誌といった「教科書」に載っていない話って、本当に面白いものですね~。
友人たちの話があまりに面白いものだから、私も何かお返ししなければ!と思い、先述の「映画館イベントのチケット」を見せた瞬間、友人たちの目の色が変わった。

「取れたのぉーー?繋がった時には完売だったよ!」
「ちょっと!紙に『ミッシェルガンエレファント』って書いてある!」
「アレを映画館で見るの……。うわ!ちゃんと座席あるんだ!」

20年前、スタンディングのライブで揉まれまくり、鍛えられたファンの人達のリアルな感想がコチラになります。

しかし「座席がある」ってそんなに驚くこと……?
そっか。当時のミッシェルはスタンディングの会場がほとんどだから、入場番号はあっても、座席番号は無いライブが多かったんだろうな。

開演前は「人の上を人が飛ぶ」からはじまり、ライブ中はペットボトルが飛び、モッシュ・ダイブが起こる。そんなアツいライブが終わると、眼鏡・財布・靴・Tシャツ…… ありとあらゆる物がライブハウスの床に落ちていたというミッシェルのライブ。
ベースのウエノさんも、その辺は把握しているようで、今もライブのMCで昔話をしてくれる事がある。
「俺らそのぉ…あの…『素行の悪い』バンドやったからさぁ!はっはっ!」


そんな「素行の悪い」バンドが、爆発的な人気を得て、最後の解散ライブでは幕張メッセに37,000人も集めたという。幕張メッセで9~11ホールぶち抜きでワンマンってすごい。あそこはとてつもなく広い。そこに37,000人である。
集まったファンも、運営するスタッフも、さぞ大変だっただろう。その時代に間に合わなかった私は想像することしかできないが、解散ライブにかけるファンのアツさは相当なものだったはずだ。

時を経て2023年、私はそのライブを家で一人見ている。悲しくなるシーンがあるのも分かっているのに、どうしても見てしまう。
たぶんそれは、私がその空気を味わえなかったから。2003年のあの時、その場にいられなかった後追いの悲しみを、映像を見ることで少しでも埋められるような気がするのだ。
逆に、あの時、生でそのライブを見ていた私の友人たちは口をそろえて言う。
「幕張だけは見られない。見たら多分泣く」
なんなら、これからも見られる気がしないそうだ。

これが、リアルタイムで味わえた「間に合ったファン」と、「間に合わなかったファン」の違いらしい。

そこから20年、時代も場所も変わってしまったが、ついに私は志を同じくするTMGE「残党」の人達と共に最後のライブを見る機会を得た。これを経験することで、当時を経験したファンの人と語り合える話題が増えるだろうか。
私もライブを見て泣きたい。全米と一緒に、いや、全ファンと一緒に泣きたい。

できたら、悲しくて泣くのではなく、感謝と喜びの涙を流したい。
令和の今「ミッシェル」というコンテンツがまだ生きているという事実、20年遅れでも、そこに立ち会えたという事に感謝して泣けたら最高である。

そしてやはり、例えそこが映画館であったとしても、開演前の注意アナウンスは「ペットボトルを投げない」と「モッシュダイブ禁止」でお願いしたい。

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