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「力を抜く」ための神経基盤と臨床への応用方法(仮説)

皆さん、こんにちは。理学療法士のきんたろーです。

本日も、臨床に活きる神経系の知見をシェアしていきたいと思います。

本題に入る前にお知らせです。

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僕は現在、自費リハビリ施設の経営とリハビリテーション養成校の非常勤講師をしており、近年は主にInstagramとブログを中心にリハビリテーションに役立つ知識(痛み系・神経系・思考系)の発信を行っております。

明日の臨床に役立つ知見をゆるっとお伝えしておりますので、良ければフォローをお願いします(^^)

また、昨年よりパラごり君が運営している神経系に特化したオンラインサロン『はじまりのまち』にも参画させていただき、脳卒中をはじめとする神経疾患に対するリハビリテーションの最新知見をシェアしています。

お知らせは以上です。

ご興味ある方はぜひ覗いてみてください(^^)

それでは、今日の本題に入ります。

「力を抜く」ための神経基盤と臨床への応用方法(仮説)

さて、いきなりですが質問です。

(特に脳卒中の)リハビリテーションを進めていく中で、筋肉を収縮させる(運動を行う)ための訓練や神経科学的な理論を学ぶことって結構ありますが、一方で『筋肉を緩める(力を抜く)』ために必要な理論的背景ってご存知でしょうか?

ここって案外ブラックボックスだと言いますか…

『動くようになる』ということには、リハビリテーションをデザインしていく上で比較的考えやすいんですが『力を抜く練習』ってあんまりやられていないような、そんな感覚を僕は持っています。

そこで本記事では…

・筋肉を緩める(力を抜く)時に働く脳内神経活動を理解する
・力を抜くためにできる方法論(仮説)を理解する

この二つの論点に関して科学的根拠を用いながら解説していこうと思います。

力が抜けない患者さん

繰り返しですが、今回のテーマはずばり…

「力を抜いている時の脳の働き」です!

なぜ、今回このテーマをチョイスしたかというと・・・

僕自身が、臨床の中で”力を抜いているつもりなのに全然力を抜けていない患者さん”に非常に多く遭遇するからです。

僕「◯◯さーん、足の力抜きましょうー……だめだ、抜けてない…」

皆さんも、一度はこのような経験をしたことがないでしょうか?

「これがなぜ起こるのか?」

「そもそも力を抜くって何がどうなってるのか?」

この辺りをクリアにしたいと思い、論文を読み漁ったところ一つその解となるような知見がありましたので、皆さんとシェアしたいと思います。

もし同じような疑問を持たれている方がいましたら、今日はその解明にわずかにでもご参考になれば幸いです。

『力を抜く』時の神経基盤

今回解説するにあたって参考にさせて頂いた論文はこちらです。

この論文の概要をざっと説明すると…

「随意的に筋肉を緩めている時にどこの脳が活動しているのか?」というのを健常者を対象に磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いて観察しました。

研究方法はこんな感じ

対象者は健常成人8名で、対象部位と課題は『右前腕筋群の収縮と弛緩を60秒間繰り返す』というものでした。

なお、この収縮・弛緩の運動のタイミングは被験者の好きなタイミングで行いました。そして、この運動中にfMRIで脳活動を記録することで、収縮時と弛緩時の脳領域を確かめていきました。

早速だけどもう結論言っちゃう

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Activities of the Primary and Supplementary Motor Areas Increase in Preparations and Execution of Voluntary Muscle Relaxation:An Event-Related fMRI Study.toma,1999より引用

上図は、今回の運動課題を実行している時の脳活動を表したものになります。

この脳活動を見ると、発火している領域は・・・

『一次運動野』『補足運動野』です。

随意的な筋弛緩時に働いていた脳領域は、対側(左)のM1と両側のSMAであり、これらの信号は筋収縮が終える時間に連動するように一過性に増加した.toma,1999

※M1:「Primary motor cortex:一次運動野」の略称
※SMA:「supplementary motor area:補足運動野」の略称

要は、力を抜いている時は主に『左の一次運動野』と『両側の補足運動野』が活動するということです。

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