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カレーとコーヒーと吉祥寺

僕はカレーを食べる時に一緒に飲むのはコーヒーで、それも食後のコーヒーではなくカレーを食べながら飲んでカレーの辛さをコーヒーのほろ苦さで調和させるのが大好きなのです。もちろんそれがないときもあるんだけどできるならそうしたい。

武蔵野文庫、ドアに映ってる僕

僕がカレーにはコーヒーってなったのは吉祥寺に住んでいることと関係があると先日気づいた。もちろんカレーにコーヒーは合うから吉祥寺に住んでなくてもそういう人が多いのは知っているけど僕の場合は吉祥寺と関係がある。
吉祥寺には「まめ蔵」、「くぐつ草」、そして「武蔵野文庫」という3つのカレーとコーヒーの名店が昔からあって、僕は長いことその3つのお店に通っていたのですっかりカレーにはコーヒーになった。
そのひとつ、武蔵野文庫のマスターが5/6で引退するというのはここでよく打ち合わせする横地さんから聞いていた。

武蔵野文庫の店内

もうお店に行きつづけて20年以上になるけど、マスターとよく話をするようになったのはここ数年のことだ。でもマスターは20代の頃から来てた僕を知っていて、あの時はこうだったよね、「絵描きと思えないくらい喋るよね」と東北訛りで話してくれる。ほかの店でもびっくりしたことがあるけど、喫茶店のマスターは会話に入ってこないけどちゃんと聞いてるし見ているよね。

武蔵野文庫のカレー。生卵トッピング。

僕は武蔵野文庫のカレーに影響を受けて、よくじゃがいもを切らないでそのまま煮込んだりした。たまに生卵をカレーにかけるようになったのもここの影響です。失礼ながらここのカレーが「絶品」かと聞かれるとわからないんだけど、しばらくすると食べたくなる。カレーってそういうものだと僕は思う。

井伏鱒二の直筆の詩「紙凧」

店には井伏鱒二の直筆の詩があり、なるほど「武蔵野文庫」だなって思わせる。武蔵野文庫は1985年に始まった。その前の年に閉店した早稲田の「早稲田文庫」という喫茶店があり、マスターはそこで学校もいかずにバイトをしていた早稲田の学生でした。井伏鱒二はそこのお客さんで、学生時代のマスターはたまに井伏先生の荻窪のお宅に届け物に行ったりしていたそうです。
そして早稲田文庫が閉店した翌年に、マスターそこを引き継ぐ形で吉祥寺に武蔵野文庫をはじめました。それから今年で39年、僕としては40年やって欲しかったけど、もう歳だからということで引退されるそうです。
最後の何回かはほかのお客様がいるのにもかかわらず隣に座っていろいろ話してくれて嬉しかったです。僕は先日の立川フロム中武の個展の時に使った缶バッチマシーンをそのままフロム中武の鈴木さんに借りているので、ご夫婦の似顔絵の缶バッチを作ってプレゼントしました。

いい笑顔! お疲れ様でした。

お店は名前と雰囲気を受け継いで別な方が続けるそうですが、これからも行くと思います。最後まで現場にいてくれたマスターに感謝です。ありがとうございました。ごちそうさまでした。僕の「カレーにはコーヒー」はずっと続くでしょう。

小石原焼のカップ。マスターの学生時代の友人が焼いている。

そうそう、僕は長いことずっとこのお店に通っていたけど、この写真を撮った4/18までマスターの名前を知らず、マスターとかおじさんって呼んでた。
それでこの日、会計をするときに、マスターが、「今日までずっと名乗らなかったけど、はじめまして」と笑って名刺をくれた。
「武蔵野文庫、日下茂」と書いてあった。
茂さん、お疲れ様。また会いましょう。

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