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編集後記『内科当直 意識障害診療指南』

医学領域専門書出版社の金芳堂です。

このマガジンでは、新刊・好評書を中心に、弊社編集担当が本の概要と見どころ、裏話をご紹介し、その本のサンプルとして立ち読みいただけるようにアップしていきたいと考えております。

どの本も、著者と編集担当がタッグを組んで作り上げた、渾身の一冊です。この「編集後記」を読んで、少しでも身近に感じていただき、末永くご愛用いただければ嬉しいです。

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■書誌情報

『内科当直 意識障害診療指南』
著:駒ヶ嶺朋子(獨協医科大学内科学(神経))
A5判・192頁 | 定価:3,190円(本体2,900円+税)
ISBN:978-4-7653-1926-3
取次店搬入日:2022年12月16日(金)

パフォーマンスを上げて患者に最良の医療を還元すべく始まる全科当直・内科当直! 専門医以外でも意識障害を診られるよう備えておきたいポイント!

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■編集後記

(こんかいは逆噴射文体でお送りします)

よくきたな。金芳堂のAだ。毎日病院には、急性アルコール中毒、突然の失神、発熱、めまい・ふらつき、頭痛、呼吸困難、しびれを訴えるすごい量の患者が押し寄せていると思うが、おまえの代わりに当直に入るつもりはない。

しかし今回は、当直にはつきものの意識障害を診療するための最高のテキストを発売することになり、いても立ってもいられなくなったので紹介することにした。

デキレジと呼ばれているおまえはすでに、『トラブルシューティング』だったり脳卒中診療の定番書籍を購入して読み進め、当然アイウエオTIPSを丸暗記していることだろう。それは決して間違いではないが、意識障害を立体的に理解し、迅速に行動できるようになるには力不足だ。

アイウエオTIPSは念仏のように唱えていれば、意識障害疑いの患者がやってきたとき、システム1が問題をなんなく片付けてくれるというのは幻想だ。なぜならアイウエオTIPSというものは指差し確認を何度もして身につけるものだ。スマッホに駒ヶ嶺先生が編纂したアイウエオTIPSの表を表示し、さっき診断した患者に対して網羅的にデキたのかどうか、ひとつずつ確認だ。

アイウエオTIPS(『内科当直 意識障害診療指南』9頁より)

だが毎度順番通りに網羅的に検索する必要はない。頻度と緊急性に応じて、チェックの順番は変えていい。

真の医師バンデラスは、レジデントでなくても、つまりは専門が消化器のベテランであっても当直メキシコに赴く。そして意識障害に向き合う。昔は精神科に紹介すれば済んでいた、MRIに異常像はなく、標準的な検査値的におかしなところはない、自己免疫性脳炎にだって出会う。

真の医師バンデラスが生きる世界、当直メキシコでは、夜食用のドリトスが無限にあふれ、お湯を入れられたばかりのカップヌードルは急な呼び出しで放置される。

ひっきりなしに運び込まれる意識障害患者に対応する夜の狭間、この本を開けば有益な情報をえられるだろう。

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■序文

長時間労働が美徳とされるこの国にも、働き方改革の波が訪れた。医師に関しては導入が先延ばしにされたことで、医師の労働問題の複雑さが逆に際立ってしまった。1週間のうちのどこかで療養型病院など寝当直の日を設けて睡眠不足を補う、それ以外は多忙な当直に明け暮れる、という医局員の派遣プランは、別に声高に語るまでもないごく普通の勤務体制であった。表向きの当直日数が週1回程度と少ない病院では、「担当医制度」が取られ、当直医ではなく担当医が24時間365日呼び出しに応じる生活があった。もちろんこうした呼び出しは任意であり、時間外手当はない。

もっと古い話だと、かつて総合病院の隣には雀荘やバーがあり、医師たちは当直以外の夜間・休日でも任意で集まり、ついでに病院内の回診をしたり呼び出しに応じていた。もちろんただ集まって遊んでいるだけであり給料は出ない。大先輩方から逸話として聴取した。滅私奉公の美しさの片鱗がないとは言えないこのような逸話も、やがて失われていくだろう。これらを過去の話として語る一方で、執筆現在においても、たった数年前には希望にあふれていた者が、燃え尽き症候群によって最前線を辞退していく現状がある。

世間への医療情報の提供は、とかく病院受診を促す方向で行われてきた。結果、国民医療費は44兆円、経済活動としての医療は右肩上がりの成長を続けている。経済的に著しい成長分野でありながら、末端の担い手・医師は相応の増員をしておらず、対価としての給与が年々上がっている事実もない。

働き方改革によって何か変わるのか。労働基準法の8時間に限定してしまうと多くの病院で医師の数は充分ではない。一人一人が膨大な数の患者さんを交代で担当し、雀荘やバーでのようなつながりもないならば症例のちょっとした相談をすることもできない。逆に医師を適正な数に増やせたとして、経営者は対価を払えない。この国の病院の数と医師の数のバランスは、総合病院や大学病院での無償の奉仕を前提として成り立ってきた。

医療はこれまで、専門性を高めることで進歩し、科の垣根は高く積み上がるばかりであった。今後、医師の育成段階から、科や地域の分配を行う、専門に偏らず幅広い知識を持つ総合内科の医師を増やす、など改革が行われていく。この先はきっと今より明るい。ただ、それらの抜本的な対策が奏効するのはまだ先のことだ。救援人員が現場に届けられないまま、いきなり始まる働き方改革に伴い、医師一人あたりの当直回数を減らす方法が模索されている。なんとか工夫を凝らした方法のうちの一つとして、全科当直や内科合同当直が挙げられる。

慢性的な医師不足にある総合病院で行われてきたこれらの当直体制が、専門分化した病院でも行われる。全科当直は小児科、外科、産婦人科、内科、精神科、いずれの科の医師でも、病院の標榜科すべての夜間・休日診療を病棟・外来で行う体制のことである。内科合同当直とは血液内科、脳神経内科、内分泌科などの各内科系の専門科の垣根を超えて夜間・休日診療を病棟・外来で行う体制のことである。全科や内科合同の組み合わせはそれぞれの病院で異なるが、これまで以上に、医師一人一人に総合内科的な知識と、各々の科のコモンディジーズに関する知識のアップデートが求められている。

いまこそ、それぞれの科が、夜間当直で出合う頻度の高い疾患や、緊急性が高くその場で処置や検査を進めていくべき疾患の知識を出し合う時である。リウマチ科からの生物学的製剤の注意点解説や、血液・腫瘍内科からの抗癌剤TIPSなど、全科当直にあたって知りたいものだ。さしあたって神経内科専門医の私からは「意識障害診療のまとめ」を提出する。夜間・休日の意識障害診療で、脳神経内科医以外の医師も時間外診療で慌てず落ち着いて全力を発揮できるよう、意識障害におけるコモンを要約した。

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■目次

PART 1 概論

第1章 全身疾患と意識障害
意識障害のグラデーション
意識障害の原因を把握するためのルーチン
トリアージとの関連

第2章 発症経過
病歴聴取
経過だけで診断できる場合がある
時系列変化でしかわからないこと

第3章 意識障害の分類
意識とは何か
意識障害の分類
遷延性意識障害について
「脳死」について
全身状態の回復の見込みがない中の意思決定

第4章 意識障害診療での診察法:ルーチンの神経診察
視診・聴診・そのほか
眼球運動の診察
姿勢や麻痺の診察
そのほか徴候の評価
スコアを用いた意識障害での運動・反射の評価
遷延性意識障害の評価

PART 2 各論

第5章 代謝性意識障害
代謝と意識障害
血糖・電解質異常による脳症
そのほかの代謝性脳症

第6章 薬剤性意識障害
乱用薬物・過量服薬・誤飲による急性薬物中毒
アルコール関連意識障害
市販薬
常用量の処方薬による意識障害

第7章 てんかん
てんかん
けいれん重積

第8章 頭蓋内病変
脳血管疾患
頭部外傷

第9章 髄膜炎・感染性脳炎
髄膜炎について
単純ヘルペスおよび帯状疱疹ウイルス中枢神経感染症

第10章 自己免疫性脳炎
急性脳炎と自己免疫性脳炎
自己免疫性精神病
そのほかの急性脳炎

第11章 機能性神経障害
生物学的現象としての解離
救急外来を撹乱させる機能性神経障害
機能性神経障害の診断
鑑別疾患
治療と予防

第12章 認知症と意識障害
認知症の評価と理解
認知症類似疾患の鑑別と検査
アルツハイマー病・血管性認知症とせん妄
意識障害
パーキンソン病
レビー小体型認知症とせん妄
意識障害
意識障害とデフォルトモードネットワーク(DMN)

2択で迫るケースコラム

緊張病性昏迷 vs 蘇生後脳症による最小意識状態
アルコール離脱症候群 vs ウェルニッケ脳症
むずむず脚症候群 vs 薬剤性アカシジア
失神 vs てんかん
せん妄 vs レビー小体型認知症

コラム

意識障害と道路交通法
機能性神経障害に対峙した時の不安

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■サンプルページ

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■終わりに

今回の「編集後記」、いかがでしたでしょうか。このマガジンでは、金芳堂から発売されている新刊・好評書を中心に、弊社編集担当が本の概要と見どころ、裏話をご紹介していきます。

是非ともマガジンをフォローいただき、少しでも医学書を身近に感じていただければ嬉しいです。

それでは、次回の更新をお楽しみに!

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