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【第7話】兄ちゃんとの電話

4月末日。なかなかエンジンかからず、FP3級の勉強はやったりやらなかったりである。でも今日はタックスプランニングの学習。

ついこの間、社会人になって初の給料をいただいた。自由に使えるおこづかいは多くない。改めて給与明細を見る。給与受取口座は言うまでもなく、はなたば信用金庫たんぽぽ支店の普通預金。通帳に「給料 ハナタバシンキン」と印字されていた。引かれてる所得税はやはり目をひく。

テキストを読み進める。ひとくちに所得といっても十種類あるのね。利子、配当、不動産、事業、給与。退職、一時、山林、譲渡、雑。

さまざまな所得が上記のどれなのか、判断できるように覚える。さらに所得に対しての、所得税の計算方法などを学んでいく。理解するには、一連の流れをイメージするのが良さそう。所得の発生〜所得税の申告〜納税、という手順。その関連で損益通算、所得控除、税額控除までチェックする必要がありそうね。

ピコン!LINEの通知音。表示は「みのる兄」実からだ。さくらはスマホを手にした。婚約者・桃ちゃんの体調良くなったかな。そうだ、ちょうどいい!タックス聞いたろ。兄は仕事柄、税金の知識には明るい。
実からの「おう!今度の休み、実家どうする?」に「今、ちょっと電話できる?」で返す。数秒で(OKスタンプ)が来た。いえい!

「桃ちゃん、つわりどう?」
「ひと頃より落ち着いたよ。波があるけどね。心配サンキュー。ゴールデンウィーク、母ちゃんのとこ何日に行く?」
「三日かな。かすみ姉も来れそうだよ」
「おっけ。店閉める時間でいっか。」

兄妹の一同集合は五月三日の夜。日取りがまとまったところで、税金の話へ進む。

「今、FP 3級のタックスプランニングやってんの。」
「ああ。入社そうそう試験続きっていうもんな、金融機関は。」
「うん。所得税の種類多すぎー。それに、分類が覚えきれないの。国税、地方税とか。さらに地方税は道府県税・市町村税に分けられるでしょ。あと、直接税と間接税も何だか混ざっちゃうし。」
「そもそも、丸暗記は頭入んないだろ。その時覚えたつもりでも、理論づけないとすぐ抜ける。」

確かに。意味を考えず、ただ記憶しようとするからいけないのか。思い当たる節がありすぎる。成り立ちや背景などを理解すること。遠回りのようで近道なのだと教わった。さくらは、小刻みに頷きながら聞く。

気がつけば30分以上経過していた。電話は予想以上の盛り上がり。こんなにじっくり話したの、何年ぶりだろう。

実とさくらは8歳離れている。異性だし、幼少時ケンカにすらならなかった。小学校に入学した時点で、もうすでに実は高校受験に向け塾通いで多忙。仲が悪いわけではないが、4コ上、姉のかすみほどの接点がなかった。

大人になってから、それぞれの立場で会話ができるのは悪くない。むしろ、良い。これから、桃子というお義姉さんが家族に。そして今年中には、二人の間に新たな生命が誕生する。男の子が女の子かまだ分からないけど、さくらは赤ちゃんの「叔母さん」だ。木野家がいっそう賑やかになる!想像するだけで表情がニヤつくね。

(4/30さくらの日記)
【もしかして初かも。兄ちゃんとの長電話、いえい!学生の頃はあんまり意識しなかったけど、社会人の先輩はスゴイわ。働きながらの勉強法、響いた!理解が重要ね。飛び石出勤で生活リズム狂いがち。健康が一番。疲れをためないようにしよっと。三日の夜は何作ろう。かすみ姉に相談だ♪】

税金。負担が重いと、それだけ可処分所得が減る。気持ちとしては単純に「できることなら多く払いたくない」というのが心情かもしれない。

だけど、よく考えて。日々、生きていくのに必ず要るもの。例えば、道路が整備されずに信号がなかったら?事件→警察、火事→消防に駆けつけてもらえなかったら?ゾッとするよね。平和に暮らしていくために必須であること。そこに税は使われている。ただ、高くて嫌だわ〜じゃなくてどう使われているか。確認してからの思料が大事。

ビジネス専門学校で学んだ憲法がさくらの頭に浮かんだ。国民の三大義務。「教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」が規定されている。

(憲法30条)国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

国を維持するためにも、発展させていくためにも、税金は欠かせない。さくらはFPのタックス勉強から、当時の授業を思い起こしていた。
(次回に続く)2/18公開予定

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